第10話 ネスカ その2
久しぶりに短期間での投稿になります。
台風で予定が無くなったため早く投稿できました、果たして良いのか悪いのか(苦笑)
私はあれから、恩を返すためにガナリアについたら全力で料理を作ってやるとレイと約束していた。
ラモンとの戦いで私はレイの力に頼りっぱなしだった。
レイの魔法がなかったら、リスに食い殺されていたことだろう。
「わかった。じゃあ、食材を集めに行くか」
私は調理場を借りる承諾を得ると荷物を宿の女将に預け市場へと向かった。
女将は恰幅のいい体格をしていて、無愛想な対応をするが話の分かる人だった。
レイについても、調理場にしても金さえ払えば自由にしていいと言われた。
それに決して新しくはない宿なのに、部屋の隅々まで手が行き届いていて私は女将に好感を持った。
調理場は宿では食事を出していないはずなのに、ちょっとした酒場となんら変わらない設備が整っていたため私は嬉しくなり、すっかり怒りが体から飛んでいったのだった。
私とレイはスリや押し売りを交わしながら、目当ての食材を探しに行って、市場から戻ってくる頃には、すっかり日が暮れていた。
「アル、色々買っていたが今日はどんなものを作ってくれるんだ?」
「それを言ったらつまらないだろ」
ちなみに、私がレイに作ってやろうとしている料理は“ネスカ”という。
ネスカは私の得意料理の1つで、このガナリアはネスカに欠かせない食材が手に入るからだ。
ネスカを教えてくれたのは王都で暮らしていた時にいつも料理を作ってくれたお抱え料理人のダウトだった。
私の料理の師匠である。
ダウトは古典的な料理はもちろん、見た事も聞いた事も無い斬新な創作料理を数多く作り出す天才だった。
彼の作る料理は味はもちろん、こちらの体調や趣味嗜好を考えて作る一級品で、我家の晩餐に呼ばれた貴族はその類希な才能に“食の魔法使い”と呼ぶほどであった。
私は彼の作るどの料理も愛おしかったのだが、その中で一際好きだった料理がネスカだった。
決して高価な食材を使っているわけでもないのに、その味は他の料理に劣るどころか“また食べたい!”と、こちらに思わせる魔力があった。
調理を始めて1時間、料理が完成した。
食べる場所は私たちが泊まる2階の相部屋ではなく、1階の女将とその家族が暮らす部屋で取る事になった。
もともと、相部屋には他の泊まり客も来るためレイが他と変わったゴーレムだとばれないために女将に人のいないところは無いかと尋ねて、この部屋を案内されたのだった。
最初は女将はその時間、掃除や受付など宿の仕事をしなければいけないため部屋に戻ってこないということだったのだが、私が料理をしている間に調理場付近をレイがうろちょろしていると、女将の子ども達がやってきてすっかり打ち解けてしまったようだった。
最初のうちは、見た事も無い銀色のゴーレムが宿にいるのを見て怖がっていたそうなのだが、私とレイの会話を聞いて興味がでてきたのか話しかけてきたのだという。
そうこうしているうちに、レイが一緒にご飯を食べようと言ったため女将の家族と一緒に夕飯をとる事になったのだ。
まあ、女将には他言無用と言ってあるし無愛想で口が堅そうなので問題はなさそうである。子ども達も女将が見ていれば人に話す事は無いだろう。
「すっごい良い匂いがする!私も同じ物が食べたい!」
「オレもオレもぉ〜」
少女は10歳ぐらい、男の子はそれよりも小さい。
2人ともレイと向かい合ってテーブルに座っている。
女将には姉と弟の2人の幼い子どもがいた。
夫は数年前に病気で亡くなったため、1人で宿を切り盛りしているのだという。
「こら、お客さんから物を貰おうとするんじゃないよ!」
女将は口調こそ厳しいがそこには彼女なりの優しさが見え隠れしているように思える。
「別にいいんじゃないかなぁ。アル、みんなで同じ物食べようよ」
「おっ、ちょうどかなり多めに作ったから大丈夫だ」
私はレイに数日間同じ物を作ってくれとせがまれるのが目に見えていたため、10人は食べれる量のネスカを作っていた。
市場に行く前に調理場に大鍋があることを確認していて本当に良かった。
私が姉弟と一緒にご飯を食べると言うと、女将は首をなかなか縦に降らなかったが、そこにレイと姉弟達も割って入ってきたため、ついに女将は根負けして許しを出した。
「す、すみません」
「良いんですよ、みんなで食べた方が美味しいにきまってます」
女将が私に頭を下げると、姉弟に“行儀よくするんだよ”と言い残し受付仕事へ戻っていった。
「さあ、召し上がれ!」
私はテーブルの上にネスカと、付け合わせにルスッガの胸肉で作ったハムと、ナットの実と青菜のサラダをそれぞれ大皿にわけて出すと人数分の小皿にパンを切り分け席に着いた。
レイと姉弟達が“いただきまーす!”と、声を合わせて次々に大皿から料理を小皿へ取り始めた。
「うまぁぁぁあ!!!」
料理をほおばりながらレイが声を上げた。




