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落ちこぼれ騎士と銀のゴーレム  作者: ベンソン
第2章 災いの始まり
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第6話 スカーレット その6

スカーレット編が終わります。


今回はすこし長めに書きました。


見づらかったらすみません。

 同盟を組むという事は人間も妖魔も戦争で犠牲を払えなくなってきたのだろう、そのため戦争の火種になる密猟を辞めさせるのが今回の同盟を組む共通の目的なのだろう。


「と、ところで、さっきのリスを倒した力は何なんだ?」


 私はこのままこの話題を続けるとさらに知ってはいけない事を知る事になると思い、話題をそらした。


 私はあくまでもいち旅人であって、国家間の問題をどうにかできる立場ではない。


 それにレイだけでも大変なのに、これ以上問題を増やしたくなかった。


 「あれは私の一族、ランプリング家だけが使える生命力を吸い取る術だ。先程のように妖魔の姿にならなければ使う事ができない」


 妖魔は自分の力を引き出すために特別な過程がいるとスカーレットは打ち明けた。


 妖魔は、人間と違い魔法を使う過程が異なる。


 体内魔力であるオドを消費する事で体外魔力であるマナを使う人間の魔法に対して、妖魔はオドが少量しか存在しないためマナを取り込んでからでないと本来の力が発揮できない。


 そして一般の妖魔と違い、大貴族の1人であるスカーレットはマナを取り込む訓練をしていないため力を発揮するまで時間がかかってしまったのだ。


 私は話を聞いている間、終始冷や汗をかいていた。


 …これ、得体の知れない怪物と言われてる妖魔の弱点や能力じゃないか?


 スカーレットは意外におしゃべりなのかもしれない。


 石の話といい妖魔の上位である大貴族が秘密にしていたはずの魔法や弱点を教えているも同然である。


 「…そんなことをべらべら話して大丈夫なのか?」


 「ああ、あまり話しては欲しくないがお前には借りが出来たからな」


  これは信頼されたと言う事なのだろうか、レイといいどうも私は人外に懐かれる気があるらしい。


「そういえば不思議な事だがお前の作った昼食を食べてから力が湧いてきたような気がする。こんなに早く力を発揮できるとは思わなかったぞ」


 スカーレットは無邪気な笑顔でこちらに話しかけてくる。


 レイならまだしも妖魔がただの料理で魔力を補給できるわけがない、そう考えつつ、きっと彼女なりの私への礼なのだろうと思った。


 「それは光栄だな」


 私がそう答えると後ろで横にしていたレイがもぞもぞと動き出した。


 「ああ、あの焼き魚は美味かったなぁ、柔らかい肉と、皮の下に隠れた魚の旨味がつまった油が、噛み締める度に口に広がって旨かったぞ。細かくした乾燥した香草や岩塩も魚の味を引き立ててくれて素晴らしかった…」


 「レイ、起きたのか?」


「ああ、腹が減って寝ていられない。またあれが食べたい、それとスープもだ。私だけ食べれないなど不公平だ!」


 飯の話が聞こえたからか、レイは急に元気に話し始めた。

 

 こいつには今回かなり助けてもらった。


 レイにこんなに魔法を使ってもらった事は無かった、しかも1度はリスから逃れるため森に一人おいてきたのだ。


 今回ばかりはこいつの願いを聞いてやりたいのだが、生憎今ここで満足に料理は作れない。


 「すまないがもう少し待ってくれ、今回の礼は必ずする」


 私は、素直にレイへ頭を下げた


 「しょうがない、待ってやる。ただし今回の料理とは別にお前のとっておきの料理を作ってくれ」


 「クッ…わかった、私の全力を見せよう」


 私はなぜか偉そうに腕を組んでいるレイに少しムッとしたが、それでレイへ今回の恩が返せるならしょうがないと思った。


 「ふふふ、全くゴーレムに飯を作れと命令されるとは…。傑作だ、はは。攻撃魔法も使えないし、小僧ほど戦いに向かない騎士はいないな、なるほど…だから“元騎士”なのか」


 スカーレットが急に笑い出して私は驚いた。


 「笑うんじゃない、私はこいつに恩を返したいだけなんだ」


 「す、すまない。ついつい笑ってしまった、ははは」


 「スカーレットも笑うんだな」


 スカーレットはレイの冷静な突っ込みで顔を赤くした。


 「ふん、妾もそれぐらいの感情は持ち合わせておるわい!」


 私は彼女の表情をみてふと我にかえった。


 妖魔の姿になったスカーレットを見てその威圧感と戦闘力に驚いたが、こうしていると人間と大差ないように思える。


 …私が今まで思い描いていた妖魔とは妖魔は残忍で得体の知れない人間を襲う怪物だった。


 スカーレットと出会ってまだ一日も経っていないが、とてもじゃないがそういった怪物とはは思えない。


 しかし、少し環境が違えば私もラモンのように偏見という呪いで真実が見えなくなり妖魔を憎んでいたかもしれない。


 もしそうなっていたら、そう考えると背筋が寒くなった。




 そんな事を考えているとスカーレットのまわりに複数の影が出来た。


 「なんだ!?」


 突然、影の中から仮面をつけた男達が3人、音も無く膝まずいた格好でスカーレットの元へ現れた。


 身に付けている仮面からして 妖魔と見て間違いない、おそらくスカーレットの従者達であろう。


 「スカーレット様」


 「お前達、無事だったか」


 「ハッ、義兄君様のお力を借り、なんとか敵を殲滅致しました」

 「そうか、ご苦労であった…どうした?面を上げよ」


  従者達は頭を上げずに下を向いている。


 「奇襲を受けたとはいえ、スカーレット様をお一人で逃がすとは従者失格であります。現在は護衛中のため、国に戻り次第どうか私たちの首をおはねください!」


「馬鹿者!お前達がいなくなればだれがランプリング家を守っていくのだ。たわけた事をぬかすな!…何をしている、帰るぞ!」


 従者たちはスカーレットの言葉に感動したのか、しばらく下を向いたまま目をつぶっている。


 よく見ると3人とも微かに震えている。


 「あ、ありがたき幸せ、我ら命つきるまでランプリング家へお仕えいたします」

 

 「うむ」


 スカーレットが満足そうにそう答えると3人の妖魔は立ち上がった。


「ところでこの人間とゴーレムはいったい…」


 「この者達は妾の命の恩人だ、無礼をするでないぞ」


 従者達は、冷たい目でうさんくさそうに私を睨みつけている。


 もともと憎しみあっていた人間に主人を襲われたばかりで、同じ人間相手に感謝するなど出来るはずも無い。


「なにはともあれ、お互い命が助かって良かった。早い所、ここを去ろう」


 「そうだな。…お前達とはまた会う気がする。妖魔は義理堅い、いつかきっと力になろう」


 「そのときは宜しく頼む」


 そう言うと私とレイは、スカーレットに背を向け目的地へ向かって歩いていく。


 振返ると、なんと従者達がこちらを見て頭を下げていた。


 スカーレットの計らいだろうか、それでもプライドの高い妖魔達が人間に頭を下げるとは信じられなかった。


その中でスカーレットがこちらに向かって手を振っている。


 「アル、レイ!必ずまた会おう!!」


 「ああ、また会おう!」


 「今度は一緒に飯を食おうなー!」


 私とレイはスカーレットに向かって手を振ると前を向いて歩き出した。


 「何笑ってるんだ?」


 しばらく歩いているとレイが私に尋ねてきた。


 「え?…ああ」


 レイに突っ込まれて私は自分が笑ってることに気がついて驚いた。


 「…大変だったけど、あいつ良い奴だったな」


  私がそう答えると、レイも嬉しそうに”そうだな”と返してきた。


 人間と妖魔の差なんて本当はあまり無いのかもしれない、スカーレットとの出会いが私の中の何かを変えたようだ。


  私は、新たな友を得た喜びがさわやかな風になって体を癒していくのを感じた。


次回はアルに関わりがある人物が登場します。


2014.9.16

会話が見にくいというアドバイスを頂いたので描写を少し増やしました。見やすくなっているといいのですが…。

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