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落ちこぼれ騎士と銀のゴーレム  作者: ベンソン
第2章 災いの始まり
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第3話 スカーレット その3

 「な、妖魔?」


 「隠していたわけではない。妾はこの国と同盟を組みにきた。それをよく思わない者がいたのだろう」


 妖魔とは人間に比べ生命力が強く、独自の魔法を使う魔の者達である。戦う際に彼らは必ず特殊な防具で顔や体を守っているため、普段の姿がこのように人間と大差ないなど思いもしなかった。 


 歴史的に人間と妖魔は仲が非常に悪く血を血で洗う戦いを繰り返してきた。


私がいるこの国も例外では無く、長い間妖魔達と戦ってきた。


その妖魔が、この国と同盟を組むとは信じられない事であった。


 「お話中申し訳ないですが、仕事は早く終わらせたい質なのでね。速攻で行かさせていただきます」


 突然、大量のリスがラモンの背中からこちらに向かってきた。


 「レイ!」


 このリスは魔法と見て間違いない。

得体の知れないものには距離を取るのが一番だ。


 「わわわ」


 レイは突然のリスの襲撃に驚いていたが、その体が白く輝くと私と少女を連れて10メートルほど離れた木々の間に移動した。


 「一旦逃げるぞ!」


 私は二人を連れて森の奥深くへと駆け出した。


 「ふむ、なかなか変わった魔法を使うみたいですね。どこまで持つか楽しみです」


 ラモンはそう呟くと、アルが座っていた岩をなで回し、腰を下ろした。





 「アル、戦わないのか?」


 走りながらレイはリスに追いつかれそうになる度に魔法を使っている。


「相手が何をしてくるかわからないうちは戦えない、それにあのリスの素早さは危険だ!」


 おそらく、レイの力で瞬間移動をしてラモンを斬りつけたとしてもスカーレットが攻撃されていただろう。


 とにかく今は距離をおくことが先決だ。


 「小僧、そんなことを言っても、このままだと追いつかれるぞ」


確かに、走りたくても狭い間隔で生い茂った木々が邪魔をして上手く進む事が出来ない。


それに対しリス達は小さな体を活かし、全く速度を落とす事無く背後から距離を詰めてくる。


 「レイ、もう1度だ」


 私たちは何度かリスに追い付かれそうになるが、その度に、レイの瞬間移動で距離をあけた。


 「もう1度!」


 「もう1度って何回あるんだ…」


 徐々にレイの発言に疲れが見え始めた。


 あのラモンとか言う騎士は緑の魔法使いと見て間違いない、そうとう訓練したのだろう。


 これほどの数を1度に作り出すとは…。


 6回目の魔法を使うとレイは走る事すらできなくなり、ついに動けなくなってしまった。


「レイ、大丈夫か?」


 「だめだ、もう動けない、先に逃げろ」


 もうすぐそこまでリス達が迫ってきている。


 「そんな…」


 スカーレットは動けなくなったレイを見つめつつ、背後からやってくるリス達の声を聞き、不安そうにこちらを見ている。


 考える時間はなかった。


 私は荷物をレイの上に置いた。


 「すまない」


動けないレイをここに置いていくのは大変心苦しいが、今スカーレットを死なせてしまったら同盟を組もうとしていたこの国と妖魔達の関係はかなり悪化するだろう。


同盟が無くなるだけでなく、この100年小さな小競り合いですんでいたものが全面戦争へ発展するだろう。


もし、そんなことが起きればこの国と妖魔の間で多くの命が失われるだろう。


辞めたとはいえ、騎士として王と民にこの身を捧げた私はどうしてもそれだけは避けなければならなかった。


それに、おそらくリスたちはスカーレットだけを追っている。


大きく曲がればこちらに注意を引けるかもしれない。


 私は、スカーレットをつれて大きく右へ曲がり比較的走りやすそうな場所を選んで走り始めた。


 リス達はレイとぶつかる事無くこっちに曲がってきた。


 やはりスカーレットだけを狙っているようだった。



途中で追いつかれそうになった為、スカーレットを抱き上げて走った。

 

 これも時間の問題だな。


 今は木々の間隔が広いからなんとか距離を詰められずに済んでいるが、また狭いところに追い込まれたらレイがいない今、逃げようがない。


 一瞬、あきらめて戦うことを考えたが、逃げ遅れたカモシカの横を通り過ぎた時、カモシカが断末魔をあげながら骨になるのを見て考えを改めた。


 このリスとは戦ってはいけない。


 こういった相手に勝つには本体を倒すか、魔法の攻撃範囲外に逃げるしかない。


 出来れば後者をとりたいが、すでに1キロ近くは逃げたはずなのにこのリスたちはいっこうに追跡を止める気配がない。


 恐らく、簡単な指示だけだして標的を仕留めるまで追い続けさせるタイプの魔法なのだろう。


 私の騎士時代の同僚に似たタイプの魔法使いがいたが、単純な指示を出すことで魔力の消費量を減らして長時間、広範囲の追跡できるやつがいた。


出来れば早く魔力切れを起こして欲しいが、あまり期待はできないだろう。


 しばらく走っていると目の前に崖が広がっていた。


 万事休す、そう思った矢先に視界の右側で白く輝くものが見えた。


それは私にとって紛れもなく希望の光であった。


私はさらに加速して大地を踏みしめ崖を跳躍する。


向かい側は距離にして30メートルほど、どう考えても距離が足りない。


スカーレットは叫んでいる、きっと死を予感しているのだろう。


 「レェェイッ!」


私が叫んだ次の瞬間、横にレイが現れた。


 「またせたな」


 そう言うと、レイの体が輝き私たちは崖の向こう側に移動していた。


こんなに上手くいくとは思わなかったが私は後で食べれるようにこっそりと、レイのために焼き魚を取っていたのだった。


 鞄ごと置いてきたので、そこからレイは魔力を補給できたらしい。


食べることで魔力を補給するなんて、相変わらずなんて変わったゴーレムなのだろう。



「…リス達が」


 スカーレットの視線の先ではリス達が滝のように崖から落ちていった。


  本当にあのリス達は単純な動きしか指示されていないようだ。


スカーレットを食殺す。


それしか頭に無かったため、自分たちの命のことは考えられなかったのだろう。


前列か崖に落ちても止まることなく次々に底に落ちていくその姿は、蠢く1つの生き物のようだった。


 「死ぬかと思った」


 スカーレットは、そう呟くと目に見えてガックリと体から力を抜けているのがわかる。


 「アル、このまま逃げるか?」


 「いや、きっとあいつはまた追ってくる。今度は逃がさないように仲間を連れてな、そうなったら今度こそ逃げきれない」


「じゃあどうするんだ?」


 私は、深いため息をついた。




 おかしい、そうラモンは考えていた。


 リスたちとの魔力の繋がりがいっぺんに途絶えたからだ。


 「やれやれ、こうなったら彼らを呼んでまた追いましょうか」


 ラモンの魔法はアルの読み通り、単純な指示しか出せないものだった。


 また、リスを出している時は常に魔力を放出しているため、身動きもとれない。


 早く仲間を呼んでリスで追いつめる、追い込んだところを仲間に仕留めさせる。


 現状ではこれ以上の策はない。


 そう考えていると、一瞬視界に白く光るものが見えた。


足元にいたリスが自分の後ろを見たので、背中に違和感を感じて振り替えると、次の瞬間突然現れたアルにいきなり切りつけられた。


「うおおおおおお!」


アルは渾身の力と殺意を持って刀を降り下ろす。


ラモンは一瞬身を反らし、高速でリスを作り出して盾にする。


しかし、アルの全力の斬撃は止められず胸元に血が吹き出した。


「ぐぅぅぅ」


ラモンは痛みを堪えるように胸の傷を抑え後ろによろよろと下がった。


“こいつはここで始末する”


アルは間髪入れずに前にでると、刀をラモンに向かって振り上げた。

次回、戦闘が始まります。




2014.8.31

一部間違いがあったので訂正しました。

突然現れたレイ→突然現れたアル


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