スローライフの交差点
青春ものの短編です
「はい次っ!!25m遊泳はじめっ!」
先生の掛け声で、男子が一斉にスタートを切った。みんな本来の目的を忘れて、誰が一番速いか競争している。どうして男子っていつもこうなのだろうか?バカみたい。あれでは確かに速いかもしれないが、無駄が多すぎる。
「ねぇ……ちーちゃんは誰を応援してるの?」
隣に座っていた女の子が聞いてきた。周りの女の子たちは皆お喋りに夢中のようだったから、呆けたように彼らを見ていた私が、その中の誰かを応援してるようにでも見えたのだろう。私は肩を竦めて見せた。正直に言って、まだここに来て間もない私は彼女の名前すら怪しいのだ。
「適当に見てただけだよ」
「…………そう?私はねぇ……イオリ君がいいな!ほら、あそこ!!」
彼女の指さした方を観る。なるほど、確かにカッコいい。周りが競争している中、ただ一人黙々となぜかアクロバット遊泳に励んでいる。その孤高さたるや他の子どもとは一線を画していた。
「へぇ…………好きなの?」
「えっ!?えええぇぇぇ!!そ、そんな事ないよ!!やめてよちーちゃん!!」
しまった直接的過ぎた、と反省反省。すぐに謝ると彼女は許してくれた。しかし、そこまで否定するくらいなら、そもそもそう気取られるような事を言わなければいいのに。自分と同じくらいの年ごろの子は本当に面倒くさい。
「ちーちゃんには……その……いるの?」
「いるの……って、好きな人?いないよ?」
それがどうしたと言わんばかりの私の返答が、彼女にはなかなか衝撃的だったらしい。大きな目をさらに丸くしている。しかし、これが事実だ。そもそも私はここに来てまだ半月も経ってないし、また一か月後にはここを出ていく。お父さんが世界各地をあちこち飛び回る人で、お母さんと私はそれについて行って各地を転々としている。いわゆる転勤族と言うやつだ。
普段はそういう事情があるから通信教育で済ましているのだけど、今回ばかりは実習という事で仕方なく近隣の小学校に転入させてもらっている。
「えーっと、次はっと…………あぁほら終わったら静かにしてなさい!」
先生が怒鳴った。男子のレースが終わり、対岸で騒いでるのはきっと優勝した子だろう。こういうのは意外とイケメンではなく芋みたいな顔の子が勝ったりするから面白い。まわりの男子たちからは讃えられたり、羨望の目で見られたりしている。
そんな中、次は私達女子の番だった。
先生に指示され、準備を始める。さっきの女の子がもたついていたので、少し手伝ってあげた。自分で言うのも何だが、私はこういうのは手慣れたものだ。
「それでは25m遊泳はじめっ!」
合図が会った瞬間、私は右手のハンドコントローラーを操作し、背中のタンクから窒素ガスを噴出させた。繊細な手つきで舵を取り、慌てふためいて暴走している周りの子と接触しない様にしながら最短ルートを選択する。完璧なタイムで私はゴールインした。その速さは先ほどの男子の比では無い。おぉっという歓声が場内に響き渡った。
「凄いじゃないか!みんなも今のを見習うように!」
そう言って先生は私の頭を撫でた。先生の手は大きく、ごつごつしていて、何だかくすぐったい。お父さんとは比べものにならないほど若いのに、同じくらい大人の手をしている。
「ちーちゃんって凄いんだねっ!!EVAユニットどうしてそんなに上手く使えるの!?」
今度は先ほどの女の子が目を輝かせながら言った。
「な、慣れてるから」
照れながら私はそう言ってみる。実際、慣れているのだ。彼女はまだ感心したように私を見てくれているが、どうという事はない。私はお父さんの仕事の都合上、どうしても船外活動(EVA)の機会には恵まれる。EVAユニットの操作が上手いのは当然の事だ。
私の父は銀河連盟文明監視局の職員であるため、連盟に登録された星々を回ったり、新たに登録する惑星が本当に既定の水準に達しているかを審査しに行ったりするのだ。ただ、もちろん星間旅行というのは必ずしも安全なものではない。船の故障は一大事。マイ宇宙船のローンを支払い終えてない我が家は、どんなにジリ貧でも自分達で直していくより他ないのだ。この技術はその時に体得した。
では何故私が今ここでこうして実習を受けているかといえば、それは義務だからだ。
銀河連盟文明教育局の指導方針により、連盟基準で12才以上の子どもにはこの実習を受ける義務が課せられている。いざ宇宙空間に放り出された時に、助かる可能性を1%でも上げるためだそうだ。非常に面倒くさい。
それに何より一番嫌だったのが、このスクール指定の気密服。
スク密と呼ばれるそれは、私にしてみれば全然可愛くなかった。むしろダサい。
次の日はロボットアームの訓練だったが、これは流石に私の上を行くものが現れた。同じヒューマン系でも、この星の住民は指が6本ある。人差し指から小指までと、親指が2本。片手で私と同じ量のタスクをこなせるのだから、コツを掴めばあっという間だろう。
「ね、ねぇちーちゃん。これ、どうすればいいの?」
しかし出来ない子もいる。私に仲良くしてくれる女の子はどうも不器用らしい。一度理解してしまえば後はサクサク進むのに、どうにもそれが出来ない。まぁそういう子はどこにでもいるものだ。私は女の子にやり方を丁寧に教えていった。
「……俺にも教えて」
バッと私と女の子が振り返る。孤高のアクロバット少年、確かイオリと言っただろうか、がいつの間にか後ろに立っていた。どうやら彼も出来ない方だったらしい。
「別にいい……けど?」
そう言うと、彼は私と女の子の間に座った。女の子の方を振り返ると、頭の中に核融合炉でもあるのだろうか、顔中真っ赤で湯気さえ立っている。どうしたものかと思いつつ、教える人間が二人に増えたので、私は席を立って二人の後ろから指示を出すことにした。
女の子の方がやや物覚えが悪い。というより、本当に覚える気があるのだろうかという気さえしてくる。逆にイオリ少年の方は教える必要があったのかも分からないほど、あっさり出来てしまった。
「ありがとな。また、頼む」
作業が終わると、そう私に軽く礼を言って、彼はそそくさと帰ってしまった。残された女の子が少し名残り惜しそうにしている。ようやく彼女が終わる頃には、もう作業場には子どもの姿は私達以外なかった。
「今日は随分時間かかったな。どうした?」
先生が私に尋ねた。前回の成績からして意外だったのかもしれない。私が弁明しようと口を開く前に、女の子がオドオドと言ってくれた。
「あ、あの……ちーちゃんはわたしに教えてくれて、それで遅くなったんです」
「なるほど、そうだったのか。偉いじゃないか!」
先生は笑いながら、また私の頭に手をやった。子ども扱いしないで欲しいのに、何だか変な気分になってくる。私は自分の頬が紅潮してるのに気づき、気取られないよう慌てて俯いた。きっとこれは、いや断じて気の迷いに違いない。先生の手を振りほどき、女の子の手を取ると急いで作業場を出た。
「やっぱりちーちゃんは凄いなぁ。何でも出来ちゃうもん」
帰り道、女の子がそう言ってくれた。
「そんな事ないよ。たまたま慣れてただけ」
「ううん!そんな事ない事ないもん!ちーちゃん優しいし、教えるの上手だし、それに何だかちょっと大人っぽい!!私もちーちゃんみたいになりたいって思うよ!!」
あまりに真面目に言うもんだから、私は声を出して笑ってしまった。彼女はそれに対して文句を言っているが、笑いは収まりそうにない。
「もう!ちーちゃん笑わないでよ!」
「あはは!ごめんごめん……でも、きっと私の秘密を知ったら、私みたいになりたいだなんて思わなくなるよ」
私がそう言うと、彼女は興味津々と言った風に身を乗り出してきた。
「秘密?ちーちゃんの?」
「そう、秘密。聞きたい?」
彼女が頷くと、私は手招きして彼女の耳を私の口元に寄せた。周りには誰もいなかったが、そうした方が秘密らしくていい。私が秘密を告げると、彼女は意味を分かりかねたのかキョトンとしていた。それがまた可愛らしくて、私はまた笑い出してしまった。
しかし、そんな日々も長くは続かなかった。
女の子が私と距離を取るようになったからだ。原因は私とイオリ少年が付き合ってるという噂だった。まったくの事実無根。だけど味方のいない私の言葉を信じてくれる人はいない。どうせ後一か月の辛抱だと、私はこの馬鹿らしい騒動を放っておくことにした。イオリ少年はイオリ少年で全く気にもしていないようだったが。
それでもやはり事件というものは起きてしまうものだ。作業前にスク密を着ようとした私はその異変に気付いた。サブの酸素のタンクが破損している。明らかに人為的な物だった。メインでないだけマシだと、私はそのまま作業に行くことにした。このまま負けたくはない、サブが使えなくてもメインタンクが尽きる前にさっさと終わらせてしまえばいいのだ。
更衣室の中ではクスクスと笑い声が聞こえる。それも一人じゃないから、きっと何人かで協力してやったのだろう。こんな奴らに負けるなんて、やっぱり死んでも嫌。
「お前、大変そうだな。大丈夫か?」
私が一心不乱に作業していると、イオリ少年が話しかけてきた。彼が話しかけてくる事が私にとって大丈夫じゃない状況を招いているのをわかって欲しい。
大丈夫、とだけ言って私は作業に専心した。今日の作業は比較的難しかったが、それでもテキパキと進めていく。
「…………終わった!!」
結果的には、誰よりも早くその作業を仕上げた。酸素の残量は40%と、少し時間はかかってしまったようだが。
「相変わらず早いな。良くやった」
いつものように先生に褒められる。しかし今日は素直に喜ぶより先に、早く中に戻って着替えた方がいい。そう思って、私は急いで室内に戻ろうとした。でも、そこで目が合ってしまったのだ。
女の子は私を見るなりすぐに俯き、隠れるように作業を再開した。今日の作業の難易度から、今まで以上に手こずり、もたもたしている。
気にする必要は無い。だって彼女こそが私のタンクを壊した本人かもしれないのだ。だから、仮に彼女が落第をくらっても、それは私のせいじゃない。
私のせいじゃないのに、私は彼女の方に向かっていた。
「ここ……違う。それはこっち」
「えっ?………ひゃっ!」
彼女が素っ頓狂な声をあげた。私に声をかけられたのと、自分がしでかしたトンチンカンなミスの両方に驚いたらしい。
「な、なんで手伝ってくれるの?」
彼女が聞いたので、単刀直入に聞き返す。
「私のタンク壊したのあなた?」
「え?」
彼女は私の背中のタンクを見た。当然中で壊れてるだけなので目で見えはしないが、彼女は慌てたように首を横に振って見せた。
「じゃあいいよ」
良かった。彼女がやってないと分かっただけでも、なんとなく嬉しかった。
「それと、私はイオリ君とは何ともないから。最初に言ったでしょ?好きな人はいないって」
「で、でも……いつも一緒にいるし」
「えぇ!?そんなの知らないよ。作業教えてって言って来るから教えてるだけ。知ってるでしょ?」
そこまで言って、ようやく納得してくれたように笑ってくれた。私もホッと一息つく。
「あなたがイオリ君のこと好きなの知ってるし、ちょっかいなんか……」
「…………?」
苦しい。呼吸が続かない。パタパタと手を振って彼女に伝える。どうして?まだ時間は十分ある筈なのに。
私はもう一度タンクの残量を確認した。
残り…………5%!?
酸素が薄くなってきたせいで、頭がガンガンと響いて痛い。視界がボヤけ、意識が朦朧としてくる。
さっきまでまだ40%もあったはず。どうして?まだ、そんなに時間は経ってない。いや、違う!早過ぎたんだ。多分メインタンクにも小さい穴か何かがあって空気が漏れてる。それも最初は小さかったけど、運動している内に広がったんだ。まずい……これは……
女の子が今にも泣き出しそうな顔で、先生を必死に呼んでいるのが微かに聞こえたけど、私は先生が来る前に意識を失った。
☆★☆★☆★☆★☆★
「お?起きたか?」
目が覚めてすぐ、あまり聞きたくない声が聞こえてきた。ボンヤリと見ていた保健室の天井から、声の主の方へ視線を移す。
「イオリ君?……なにしてんの?」
「何してんの?って……見舞い」
「いらん」
起き上がろうとするが、頭がまだクラクラする。さらに胸のあたりが苦しく、吐き気もした。
「まだ、起き上がらない方がいいよ。先生呼んで来る」
「あ、ちょっと待って!」
保健室を出ようとした彼を引き止める。もうこうなれば直球勝負でいい気がした。どうせ私はもうすぐいなくなるのだから。
「ねぇ、何でイオリ君は私のとこに来るの?教えてて思うけど、イオリ君って別に出来ないわけじゃないよね?」
彼は少し恥ずかしそうにモゾモゾしていたが、やがて意を決したように言った。
「だ、だってさ……お前……あいつと仲いいじゃん」
「あいつ……って、あの子?」
首肯。私は胃がひっくり返りそうなくらい笑ってしまった。何だこんな事に私は巻き込まれたのかと。
彼は逃げるように外に出てしまった。ちょっと笑い過ぎたと反省反省。これは彼女には内緒にしておこうと私は思った。
「おーい。大丈夫か?無茶したなお前も」
次に来たのは先生だった。話を聞けば女の子は何とか訓練をクリア出来たらしい。私が起きるまで待つと言ったそうだが、だいぶ興奮していたから帰したとのこと。
「次からはちゃんと気をつけるように」
先生はそう言った。でも、それは他の子ならそうかもしれないけど、私は違う。
「私は今日で最後だよ?先生。座学の試験は通信でも大丈夫だから」
あぁそうだったと、どうやら私が短期の転入生という事を今まで忘れていたらしい。私は今日で終わり、明日は準備で、明後日にはもう出発。
先生が「残念だ」とか「寂しくなるな」とか「またいつでも来なさい」とか言ってるような気がするけど、少しも頭に入ってこない。
また頭を撫でてくれるだけでいいのに、そうしてくれないから、私は言ってやるのだ。
「ねぇ先生?」
口上を垂れてた先生が、止まる。
「私が先生のこと好きって言ったら……怒る?」
言ってしまった。でも、別に後悔はしていない。ほんとに少し気になってるだけかもしれないのに、それでも良かった。
ひょっとしたら「からかうんじゃない!」って怒られるかもって思ったけど、先生は優しかった。
「大人になったら、また言ってくれ」
柔らかく、相手を傷つけないように先生は私を振った。それはそうだろう。まだ子どもの私の告白を受ける大人がいるもんか。
でも、だからこそ私は悪戯に笑って、先生を驚かせてやろうという気になる。
「でも、私……先生より年上だよ?」
私が意味の分からない事を言ったせいか、先生は目を見開いている。
嘘は言っていない。
「私ね、お父さんの仕事に着いていってるから、惑星間移動してる間は冷凍睡眠してるの。だから多分、先生の産まれるずっと前から生きてるの」
銀河連盟の基準で言えば、私は普通に活動していれば263万時間は生きている。生まれ故郷の単位で言えば300才くらいだろう。
これが私の秘密だった。同じ星にずっといれば、まずこんな事ににはならない。惑星間移動を繰り返す我が家ならではの問題だった。
先生とは、それきり話さなかった。お母さんとお父さんが迎えに来て、私はそのまま宇宙船に乗り込んだ。最後に少しくらい会えるかもって思ったあの女の子とも、もう会えなかった。多分二度と会う事はないだろう。
私は冷凍睡眠の準備を始めた。次に目覚めるのはまた20年後くらい。女の子はどれだけ可愛くなってるだろう?イオリ君は思いを告げられただろうか?
そうやって、私はまた取り残されていく。
大人になるには、後何年必要なのだろう?
☆★☆★☆★☆★☆★☆★
「はい次っ!着陸訓練はじめっ!」
教官の指示で、一斉に地上への着陸態勢を取る。私はそれを馬鹿だなぁと眺めていた。競争ではないのだ。それに互いの船をぶつければ減点は免れないから、急げば急ぐほど自分の不利になる。
私は急がず慌てず、確実に目的のポイントに近い位置に船を停めた。他の誰よりも綺麗な着陸。船から出ると、周りから歓声が聞こえてくる。
「凄いじゃないか!みんなも今みたいにするように」
「慣れてるだけです」
教官は大袈裟に言ったが、私としては慣れてるだけなのだ。免許のいらない所で船を運転する事は、それなりにあったから。
では何故ここにこうして実習を受けに来ているかと言えば、それが義務だからだ。15才になると受けなければならない。非常に面倒くさい。
正直、私はここで免許を取って早く帰りたかった。これでようやく私も父と母から離れて自分の人生を歩める。
「でも君、今のはちょーっと周りへの配慮が足りないかな。無線があるのだから教えてあげるべきでは?」
ふいに背後からポンっと頭に手を置かれた。懐かしい感覚に、まさかと振り返る。でも、すぐにそれが気のせいだとわかった。
「そうですね。次からは気をつけます」
「はい!大変よろしい。あなたは大変優秀ですから、他の皆さんの事も気にかけてあげてくださいね」
助教官の指は六本だった。だからきっと間違えたのだろう。それに助教官は綺麗な女の人だ。
「出来るだけ、やってみます」
踵を返し、再び宇宙船に戻ろうとした。
「ちーちゃんなら、出来るでしょ?」
「…………えっ?」
再び、また『まさか』っと振り返る。助教官がケロっとして私を見ていた。まるでもう気づいてるでしょ?とでも言いたげだ。
「えっと……誰だっけ?」
「えぇぇ!!?ひっどーい!私の事忘れちゃったの!?」
名前は元々覚えてなかったけど、確かにあの時の女の子だった。冷凍睡眠でもしたのだろうか、活動年齢は私より少し上くらいだろう。
「あはは、ごめんごめん覚えてるよ」
何だか凄く不思議な気分だった。
「もう!私はすぐに分かったよ!!」
顔を膨らませて、私に猛抗議している。
「私は、全然分からなかった。すっごい変わってるんだもの」
エヘヘっと彼女は笑った。子供っぽい中身は変わってないらしい。
イオリ君とはどうしたのだろうか?助教官になるまではどれだけ努力したのだろうか?今はどこに住んでるのだろうか?
聞きたい事が急に一杯出てきたせいで、どれを先に言おうか迷ってると、彼女は言った。
「ちーちゃんが変わってなくて良かった!!だから私、すぐにちーちゃんを見つけられたんだもん!!」
彼女はまだ少し興奮しているようだった。
「あはは、なにそれ」
そんな事を言われたのは生まれて初めてだ。でも、不思議と嫌な気はしない。ずっと大人に早くなりたくて、早く変わりたかったのに。
私がまだ子どものままだったから、彼女が見つけられたとしたら、こんなスローライフも悪くないかもしれない。
「ねぇ!今日空いてる?せっかくだし今日ウチに泊まっていきなよ!」
周りを無視して話し合ってるせいか、教官の怒鳴り声が聞こえてくる。
私は頷き、手を振って宇宙船に戻った。その中でも、こんな事があるのかと、堪えきれずにまた笑ってしまう。宿代も浮くし、これほど楽しみな事は無い。
今夜は彼女とどんな話をしようか?一晩で足りるだろうか?
考えても、考えても、まだ浮かんでくる。それから、そんな心配は全くする必要が無い事に気づいた。
だって、時間はたっぷりあるのだから。
最後まで読んでいただき本当にありがとうございました。
やりたかったのは転勤族の話です。人類が宇宙に進出したとしてもこういう話はあるんだろうなぁと思ったのがキッカケで書きはじめました。
予定では最後は再会させない筈でした。私の好みです。すみません。
スクール気密服は、この世界観では一部の男性にとても人気があります。