No.8 起動
「なっ!?」
めまいかと思ったが、それは勘違いのようだ。
なぜなら、陽さんもその場でうずくまっているからだ。
「・・・っ、なんだコレ!?」
「やられたか。まさか2号機のことがこんなに早く伝わるとは・・・!」
そうしているうちに、俺の部屋はどんどん歪み、
そして限界まで歪みきったところで、瞬時に視界の歪みは消えた。
しかし、そこはもう俺の部屋ではなかった。
暗い空間がどこまでも続き、時折、流星群のようなものが降りそそぐ。
そして、どこからかオルゴールのような音色が流れ始めた。
「陽さん・・・なんですかコレ!?」
「nms-04か。
厄介なものにぶち当たっちまった。
少年、2号機、ちゃんと持ってるか。」
「なんとか・・・。」
俺の手は、確かにトランクの取っ手を持っていた。
「少年、悪いが迷って貰うほどの時間は無いようだ。
このままだと、5分ももたずに死ぬ。
・・・2号機と契約してくれ。」
はっきり言って、ものすごく迷った。
【契約】というものを、よく理解せずに、それを行おうとする事に。
嘘がきらいな陽さんが、【危険】【命に関わる】と言ったということは、
それは相当なハイリスクだという事だ。
・・・それでも、今ここで、すぐに死ぬわけにはいかなかった。
その決断が、後で俺の人生を大きく狂わせることになるとは、思わずに。
「どうすればいいんですか?」
まっすぐ陽さんの目を見ていった俺を見て、陽さんは一瞬悲しそうな目をしたが、
すぐにいつもの冷静な表情に戻った。
「そのトランクを貸してくれ。」
陽さんにトランクを渡すと、自分の手が触れないように持ち、俺の手に球体を押しつけた。
すると、球体が仄かに白く光る。
『コード認識中。No.Master確認。起動開始』
機械音が鳴り始め、どんどん光が強くなってくる。
そして光がひときわ強くなり。
『nms-02。起動完了』
そこには、1人の少女が居た。