No.3 別荘
メールをもらった十数分後、俺は父親の別荘の前にいた。
門の前で、しばらく躊躇したが、周りに誰もいない事を確認すると、
門に手をかけ、玄関に足を踏み入れた。
さすがに父親の別荘、しかも誰もいない家に「お邪魔します」とは言わなかったが、
どうも他人の家のような雰囲気がして、堂々とは入れない。
部屋の中は薄くほこりがつもっている。
あれからしばらくここには寄りついていないので、当たり前だろう。
靴を履いたまま行くか、脱いでいくか迷ったが、
靴下がほこりで汚れるだろうし、どうせ誰も住まない家だ。
土足で入ったって問題はないだろう。
アメリカなんて土足は当たり前、と思いながら足を進める。
階段を上がり、2階に登る。
ぎしぎしと音が立ち、今にも床が抜けそうだ。
(確か、右側が父さんの部屋だったよな。)
右側を見ると、銀色のプレートがかかった扉があった。
プレートには『YUSHI』と書かれている。
確かに父さんの部屋だった。
扉を開けると、意外とスムーズに開いた。
そっと中をうかがい見ると、薄暗い部屋の中に、机や本棚、ベットがあり、
至る所に本や書類が散乱していた。
「・・・捜し物見つかるか?これ。」