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Nightmare  作者: かつおぶし
11/17

No.10 暗示



まず動き出したのは、白い少女だった。

一瞬体勢を低くすると、凄まじいスピードで走り出す。


それと同時に、紫の少女も足下に幾何学模様を広げ、

目の前を右手でなぎ払うようなしぐさをする。

その一瞬で、彼女の右手には、5本のナイフが現れた。


紫の少女が、一本のナイフを投げつける。

高速で走っている白い少女は、それを鎌で軌道を逸らし、走り続ける。

それを4回繰り返し、とうとうナイフがつきた紫の少女は、

白い少女が走ってくるのを、何もせずに待っている。

そしてとうとう、白い少女があと数メートルにまで迫った時。


白い少女の全身に、傷が走った。



「なっ・・・」

「やはり、【トリック】か。」

思わず絶句する俺の横で、陽さんは動じていない。

「トリック?」

「あぁ、元々mns-04は防御系のロボットなんだが、

 攻撃も少しはできる。あれは、4号機が持ってる技の1つだ。」


白い少女が、紫の少女に近づこうとするたび、傷が深くなっていく。

彼女の白い肌や服に、真っ赤なシミが次々と増えていく。


「何でああなってるんですか?何もないのに。」

「そりゃそうだ。あれは幻想だ。

 さっきのナイフは、2号機に暗示をかける下準備だ。

 おそらく【4号機に近づくと、傷つく】とでも思いこまされてるな。」


「思いこまされてる?」

 まぁ、催眠術の一種だと思えばいい。

 人間は、【そう思う】と、本当になってしまう事がある。

 それを使った技だよ。

 ロボットとはいえ、私達が創った人工知能だ。人間とそう変わらない。」


それだと、2号機は、あの4号機とやらに傷を負わせる前に、体がミンチになって終わりだ。


実際、2号機の見た目はほぼ真っ赤に染まりかけていた。

しかし、2号機はまったく引こうともせずに、さらに4号機に近づいていく。


「どうして2号機は、傷が深くなるのに、4号機に近づくのを止めないんですか?」

「・・・2号機を始め、ナイトメアシリーズは一切痛覚を感じない。

 戦闘の時は邪魔になるからな。」

「じゃぁ、このまま・・・」

 絶句した俺を横目に、陽さんは2機の闘いに目を向けたまま、言った。


「行動不能になるまで、動き続ける。」



俺たちが話してる間も、2号機は体中を切り刻まれている。

だが、陽さんは少しも顔色を変えなかった。


「そうあせるな。確かに4号機は少しは攻撃もできるが、

 それはやはり【少し】だ。」




傷だらけの少女の足下が光る。

4号機も慌てて幾何学模様を浮かびあがらせるが、遅い。


ブチブチッと何かを引きちぎる音と共に、白い少女が一気に紫の少女へ詰め寄る。





「――戦闘に特化している2号機には、遠く及ばない。」




そして、白い少女は持っていた大鎌を、紫の少女の首に食らいつかせた。





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