姉さんからの仕打ち ―忍さんが、忍さんがぁぁあ!! ‥‥出番がない―
みんなに訊きたい事があるんだけどさ。
‥‥これ、どうなってんの?
「有坂修 被告人、何か言い残す事でもあるんスか?」
はい、たくさん有ります。
朝から木材置場で僕は、何故にす巻きにされているのでしょうか?
「ですが、貴方に発言は認め無いッスよ」
「状況説明だけでも――」
「裏切り者は、黙るッスよ!」
‥‥質問も駄目なのね。
先程から、偉そうに喋っている佳奈以外のメンバーも、頷く。
それより、裏切り者って何の事‥‥?
「倉橋裁判長、有坂修 被告人に確認したい事があるのですか?」
「上杉弁護人、許可するッスよ」
へぇ〜。佳奈の奴、裁判長役で、僕の弁護人役が上杉なんだぁ。反対側に真琴が立ってるって事は、検事役かな?
‥‥‥‥。
「僕の弁護人役のチェンジを要求するッ!」
「「却下します」」
たぶん、傍聴人役の一年コンビに却下された。この二人、関係なくね?
そんな僕達を見ていた上杉弁護人役は、一つ咳払いをした後、僕に訪ねてくる。
「昨夜、有坂修 被告人と被害者である倉橋興里が、資材置場にて逢い引きされていたのは、事実でしょうか?」
「――ブゥッ!」
上杉が真剣な顔をしてまで訊いてきた質問の内容に、思わず吹いてしまった。
「僕と興里が逢い引きとか、何をほざいてんだお前わッ!」
「事実ぅ、でしょ?」
「真琴も――でしょ? じゃ、ねーよッ! 僕にそんな趣味は、無い!」
「だが、実際に修は俺の事を――「好きじゃ、なぁーーーい!!」
‥‥つ、疲れた。
一人で上杉・真琴コンビの相手は、疲れる。誰かとタッグを組んでおかないと、僕が過労死するぞ。
この中でタッグを組めそうな奴を考えると、興里しかいない。
しかし興里は、一人黙々とログハウスを建設中だから、タッグを組むのは無理だ‥‥。
昨夜の怪我はどうしたって言われても、僕らは大丈夫! 姉さんに、それ以上の事をされても生きてるから――人って痛みに慣れると、丈夫に成るものですから‥‥。
それよりも、肉体は丈夫でも精神が脆い僕としては、今の皆から責められている状況は、好ましく無い。心が折れてしまう前に、何とかしなくちゃ。
まずは、佳奈が僕の事を裏切り者と言う理由を知る事からだな‥‥。
「ところでさ、何で僕は裏切り者なの?」
佳奈と視線を合わせて、単刀直入に訊いたら
「てめぇ!! 俺の頭を木材でフルスイングしておいて、それを訊くのかッ!?」
木材を取りに来た興里から返ってきた。
「でも、それって裏切りじゃないよね?」
別に、誰の事も裏切りって何かいない。闇討ちによる傷害犯とかなら解るけど、裏切り者扱いは違う気がする。
「‥‥確かに、修くんは誰も裏切りって何か、いないッスね――。みんな集まるッスよ、今から会議するッス」
佳奈の号令により、す巻きにされて居る僕と建設作業員の興里以外のメンバーが、佳奈の所へ集まり出す。だけど、会議とか言って雑談している佳奈達。
そんな佳奈達を見ていると、『もしかしてサボり?』って考えが浮かんできた。それを、まだ近くに居る興里に訊ねてみる。
「ねぇ。もしかして建設作業をサボる為に、利用されてない?」
「ああ、俺もそう考えていた処だ」
「‥‥なんだろね。やるせない、この気持ち」
訊いても興里からの返事がこない。てか、さっきから僕に巻いているロープを、黙々と解いて要る。
そして、ロープを解いた興里が僕の前に立って、手を差し出している。
「そのやるせない気持ちを、一緒に建設作業で誤魔化さないか?」
‥‥そゆことね。
「それはそれで、何だかやるせない気もするけど‥‥」
少し躊躇したけど、差し出されている手を力強く握る。
そして僕は、身体を動かす事で記憶から抹消する為に、建設作業の現場へと向かった。




