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姉さんからの贈呈品 ―物を渡す受ける事には、礼儀作法があります。無礼の無いように気を付けてね―

 見上げると輝く星空。

 星座を指でなぞってみたりする、木材の上に座る僕。

 ‥‥僕って意外とロマンチストだったんだなぁ。

 

 夕方頃に『真琴は僕の事を本当に好きなのか?』って考えてから、僕のなかで何かがモヤモヤとしている。

 ‥‥こんな気持ち初めてだよ。

 

 この気持ちについて相談しようと僕は、現在地の木材置場に興里を呼んでいる。興里を呼んだ理由は幾つかあるけど、決定的な理由は、僕の話を聞いてくれそうだからだ。

 別に、妹の佳奈でも良かったんだけど、その後にシスコン興里が煩そうだから先手を打った。言い方を変えれば後腐れなく相談に乗ってくれる友達が、僕には興里ぐらいしか居なかった。

 ‥‥同情するなら友達になってくれませんか?

 

 

 ――なかなか来ない興里を待つ間に、虫に色々な所を刺されまくった僕は、撲滅作戦を一人で行なっていた。

 

 「せいッ! やっ! とりゃァァァ!!」

 

 座っていた木材をひとつ手に取り、棍棒みたいに振り回しては、虫を倒す。

 この逆襲作戦の運動量が結構ハードで、服から搾れるくらいの汗は流している。

 

 草木が多い僕の後ろから、ガサガサっと音が聞こえてくる。

 む、コイツは大きいぞ!?

 僕は、木材を構えて音が聞こえた方へ身体を向ける。

 そしたらどうだろう。興里が僕の事を、冷ややかな目で見ているじゃないか‥‥。

 

 「‥‥やぁ」

 

 なるべく自然な笑顔で挨拶をした。

 

 「バッ――カじゃね?」

 

 バカって言われた! 挨拶を返すのが礼儀なのに、バカって言われた! この人、バとカの間を溜めて、バカって言ってきた!!

 

 ‥‥と思っていても、今の状況が恥ずかしくて、口に出せないシャイな僕。

 

 「えっと、相談なんだけどさ――「お前、今のをそれで流せるとでも思ってんのか?」

 

 ぬッ! 見逃してくれなかったか‥‥。

 

 「まっ、お前の恥ずかしい趣味とか、俺には興味ねーけどな」

 

 コイツ、一発殴りたい‥‥。

 

 「相談事だろ? さっさと話してくれ、早く寝てぇんだよ」

 

 僕を急かしてくる興里は、何時の間にか木材の上に座っている。

 何だか、興里に対して怒るのも疲れるだけだし、話を聞いて貰えるなら別にいっか、と僕も木材の上に座り話始める。

 

 「相談したい事って言うのはね。『真琴は本当に僕の事を好きなのか?』 って、夕方頃に考えだしたのが始まりなんだ」

 「なんだノロケか‥‥つまんね」

 

 興里が僕に向かって興味が無いと、これ見よがしに欠伸をする。

 なら僕は目を覚ましてやろうと、「目を覚ませえッ!」って僕からの喝を込めた木材を、興里の頭目掛けてフルスイングした。

 

 「――どうだ、目が覚めたか?」

 「‥‥危うく永眠するところだった」

 

 大げさな事を言う興里は放って置いて、僕の話を聞いて貰うとしよう。

 

 「先に、真琴に告白された日の事を聞いて貰えるかな? 実は、姉さんも関わっているんだ――――

 

 

 あれは、小学校入学式の日だった‥‥。

 僕達三人が小学校に入る事に、姉さんが一番喜んでくれていたのが印象深いよ。

 それでね。まだ子供の姉さんが、僕達三人に入学祝いをするって言い出してね。

 『貴様等、この有坂忍に何をして欲しいのだ? 答えてみよッ!』

 って、僕達は姉さんに訊かれたんだ‥‥。

 それに対して、小さな頃から平和な日々を求めている僕は、

 『お姉ちゃんは、何もしなくていいです!』

 って、答えたんだ。この頃には既に、姉さんが危険人物だって認知してたからね‥‥。

 だけど、危険人物が他にも要るって事を、小さい僕は気付けなかったよ。

 『しゅうくんに、女の子みたいな服を着せて下さいッ!』

 って、上杉が叫んだんだ。この頃から僕の事を、そういう目で見ていたのさ。上杉の奴は‥‥。

 最後の真琴なんだけど。コイツが、よく解らないんだ。

 『しゅうくんをぉ、手にぃ入れるぅ力を、くだぁさいッ!』

 これは、僕への告白なのかな?

 とりあえず、そう考えた姉さんは、真琴をこの日から鍛えだしたんだ。

 

 

 ――――まぁ、こんな感じで姉さんも関わっていてね。

 更に厄介な事を、真琴の愛刀に成る刀を贈呈する時に言ったらしいんだ。

 『この刀で、修を一太刀でも出来たとき、貴様に修をくれてやる』

 って、僕の意思なんか関係なしにね」

 

 長い時間を一人で喋り続けた僕は、それを文句も言わず聞いてくれた興里にちょっと感動した。

 普段なら友達相手に感謝するのが恥ずかしいんだけど今は違う。友達の本当の良さって言うのかな? それが解った気がする。

 無性に、『聞いてくれてありがとう』って言いたく成ってきた僕は、興里の方へ笑顔と身体を向けた。そして、笑顔のまま凍りついた。

 

 「‥‥マジ?」

 

 僕が見たのは、うつ伏せに倒れる興里が頭から血を流して果てた姿。そして、木材に書かれた『シュウ』という血文字。

 

 ‥‥‥‥。

 

 「見てごらん。夏の大三角形だよ」

 

 目の前にある現実から逃げた。


 永遠の少女に憧れる、ヒイラギお姉さんだよん♪

 

 だけど、永遠の少女ってさ‥‥あれって難しいよね?

 考え方を変えれば、寿命が無い――死ぬ事が出来ない――って事じゃん。

 だからお姉さんは、憧れはするけど成りたくは無い、ってのが結論かな。

 さて、永遠の少女――アリスは、皆からそう呼ばれて喜んでいるのかな?

 まっ、お姉さんには解らないや。ハハハ♪

 

 それじゃ皆またねぇ。ハハハ♪

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