姉さんからの常識 ―色々な国があって、国々で常識が変わるから、日本語が変でも気にしないでね‥‥無理ですか?―
僕は、何時も真琴に起こされるんじゃなくて、目覚まし時計で起きている‥‥たぶん。
だけど、今日は、目覚まし時計の代わりに鳴った音は‥‥
―パッパラパー パーパーパー パッパラパー♪
競馬のゲートが開くラッパ音。
‥‥なんで競馬?
―ズドンッ!!
「えっ!? 何さ、今の大砲音は!?」
「たぶん、佳奈がタイミングを合わせて空砲を撃ったんだろ」
僕の隣で寝ていた、姉さんと激闘を繰り広げたシスコン興里が説明をしてくれた‥‥けどね
「何でそんなに落ち着いてんだよッ!」
「気付いてんだろ? 常識なんて無いって、何時もの事ってぐらい」
「‥‥言わないでよ」
僕だって気付いていたさ、この家で常識を求める方が馬鹿だって事ぐらい。だけどね、朝ぐらいは忘れていたかったんだ‥‥
興里のお陰で、お通夜の様な空気が僕を纏いだした。
そんな暗い空気から、意外な人が僕を助けてくれた‥‥
「おっはよー! ハハハ♪ 朝食ができたようぉ〜」
元気よくドアを開いて、空気を読まずにぶち破る柊先輩。
先輩、初めて先輩に感謝します!
「さぁ、行こう若人達よ! ハハハ♪」
僕たちに声を掛けた先輩は、自分から声を掛けたクセに動こうとしない。
「そこ邪魔ですから、リビングに移動するなり横に動くなり、退いて下さい」
「えっ? だって、そこ‥‥」
先輩が、心配そうに指をさす方には、僕が簀巻きにした上杉くん。
でも、あれはちょっと‥‥
「ガキは、あんなの見てんじゃねぇよ。
オラッ! さっさとメシ食いに行くぞ」
同じ考えだったらしく、興里が先輩を米俵みたいに担いで一階に降りて行く。
アイツ、本当に佳奈以外の女性に興味ないのかな?
そして、もう一人の女性に興味の無さそうな男‥‥
「も、もっと強く! もっと強く俺を縛ってくれッ!」
簀巻きにされて悦に入ってる上杉くん。
‥‥病院につれて行った方がいいかな?
「やめとこ、どうせ無駄だし‥‥
それより、僕も御飯食べに行こっと♪」
どうでもいい上杉の事は置いて、僕も一階に降りて行く。
――リビング――
何時もと違って賑やかな食卓には、先に降りた先輩と興里の他には‥
「空砲のタイミングだが、ずれておったぞ」
「そッスか? ウチは丁度だど思ったんスけどね」
先程の事で反省会を開いている、姉さんと佳奈。
そして、この二人に僕は言いたい。
朝から空砲とか撃つことを反省しろッ! てか、撃つな!!
まっ、弱者な僕が言える訳ありませんけどね‥‥
「哀しいね、修くん」
「僕を哀れむ目で見るなッ! そして、心を読むなッ!」
相変わらずピンポイントで僕の心を読む真琴。
ハハッ♪ 皆が、僕の平和を侵すから、心に罅が入ったよ‥‥
でも、大丈夫! まだ折れてはないよ!
ただ、気になるのが、頬を流れる液体は何だろね?
「ねぇ、ひぃーちゃん見てよ! 何かお兄ちゃんが泣いてるよ。可笑しいね♪」
「そんな汚いものを見ては駄目ですよ鈴ちゃん。目が腐る前に行きましょう」
妹の鈴と後輩の平野ちゃんの連携プレイで、僕の心が折れた。
多くは望みませんから、平和な朝を僕に下さい!!
みんな元気ですかぁぁ!? ヒイラギお姉さんは元気ですよぉぉ!!
東北で震災が起きたけど、お姉さんの親族が津波で流されました。みんなの親族や知り合いは無事だったかな?
不幸って続くものって言うけどさ、不幸を知らない人は幸せに気付かないよね?
そこで、お姉さんは思います! どんな人生でも笑って生きて行こうと。
笑顔は幸せの元。みんなも暗いをしないで笑って行こう!
何時も説教くさいヒイラギお姉さんでした。




