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魔力詰まりは万病の元 〜回復魔法で治らない「身体の重だるさ」を、不遇の鍼灸師が針一本で調律する。魔力のコリを解したら、最強の戦乙女や聖女に懐かれました〜  作者: 夜凪レン
第1章 銀針の調律師、辺境に立つ

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第8話 王都の門番と、バキバキの腰痛

王国の中心、白亜の城壁がそびえ立つ王都グランゼール。

 その巨大な城門の前には、入城を待つ長い列ができていた。


「おい! 列を乱すな! ……っ、痛たた……」


 門番たちの隊長、ボリスは、重厚な鉄の鎧の中で顔を歪めていた。

 彼の悩みは、長年積み重ねてきた『腰痛』だ。

 重さ二十キロを超えるフルプレートを纏い、一日中硬い石畳の上に立ち続ける。そんな生活を十年も続ければ、屈強な戦士の腰も悲鳴を上げる。


「隊長、大丈夫ですか? また『ギックリ』が来そうなんじゃ……」


「……分かっている。だが、今は聖女様失踪の件で警戒態勢だ。休めるわけがないだろう」


 ボリスは腰をトントンと叩くが、痛みは増すばかりだ。足にまで痺れが走り、剣を握る力も入らない。

 そこに、妙な三人連れがやってきた。

 一人は、フードを深く被った小柄な少女。

 一人は、どこかで見覚えのある銀髪の女戦士。

 そして真ん中に立つのは、ひどく眠たげな目をした、黒髪の少年だ。


「止まれ。身分証を……うっ、ぐ、あぁッ!!」


 ボリスが身分証を確認しようと前かがみになった瞬間、腰に鋭い激痛が走った。

 筋肉が岩のように固まり、息をすることすらままならない。


「隊長!?」「おい、救護班を呼べ!」


 周囲が騒然とする中、真ん中の少年――レンが、平然とした顔で一歩前に出た。


「無駄だよ。そいつは筋肉が魔力の流れを堰き止めて、神経を圧迫してるだけだ。魔法で無理に繋げば、次は完全に歩けなくなるぞ」


「……なっ、貴様、何を――」


「動くな。……『大腸兪だいちょうゆ』から『委中いちゅう』まで、魔力の線がバキバキに凍りついてる。鎧の隙間から失礼するよ」


 レンの指先が、ボリスの腰の、鎧の合わせ目に吸い込まれた。

 ボリスが「やめろ」と言う暇もなかった。

 レンの指が、腰椎の脇にある、最も硬く凝り固まった一点を正確に――それこそ寸分の狂いもなく――押し込んだのだ。


「あ、が……っ!?」


「ここだ。魔力のバイパス、開通させるぞ」


 レンが取り出したのは、これまでよりも太く、力強い銀針。

 それを、鎧の隙間から迷いなくボリスの腰へと刺し通した。


 ――ズ、ゥゥゥゥンッ!!


 ボリスの視界が、火花を散らした。

 腰の奥、自分でも触れることのできなかった「痛みの核」に、巨大な杭が打ち込まれたような衝撃。

 得気とっき

 あまりに重く、あまりに深い「響き」に、ボリスはあられもない声を漏らした。


「……ぁ、ぁあああぁぁぁあぁああーーッ!!?」


「隊長!?」「何をした、このガキッ!」


 部下たちが剣を抜こうとする。だが、それよりも早く、ボリスが叫んだ。


「待て! ……待て、抜くなッ!!」


 ボリスは、信じられないものを見る目で、自分の腰を触った。

 先ほどまでの、焼火箸を押し当てられたような激痛。

 足まで痺れていた、あの忌々しい重さ。

 それらが、たった一本の針によって、霧が晴れるように消え去っていた。


「……消えた。痛みが、ない……。それどころか、腰が、軽い……!」


 ボリスは、重い鎧をつけたまま、その場で軽やかに屈伸してみせた。

 周囲の騎士たちが、呆然と口を開ける。

 十年来の持病で、歩くのもやっとだった隊長が、まるで新兵のように軽快に動いているのだ。


「あんた、姿勢が右に寄ってる。長年の剣の構え方の癖だね。たまには反対側でも素振りしなよ。……はい、これはアフターケア用の皮内針ひないしん。貼っておくだけで魔力の澱みが取れるから」


 レンがボリスの耳の後ろに小さなシールのような針をペタりと貼ると、ボリスは今までにない「頭の冴え」まで感じていた。


「……君は、一体何者だ。この街の、どの魔導医師も治せなかった私の腰を……」


「ただの鍼灸師だよ。……さて、入城を許可してくれるかい? 連れが少し、疲れているんだ」


 レンが振り返ると、フードの下でセラフィナが小さく笑い、エルフリーデが呆れたように肩をすくめていた。


「もちろんだ! いや、ぜひ入ってくれ! ……おい、この御一行様を最優先で通せ! 宿の手配も私がしよう!」


 王都の門番を「腰のトトノイ」で買収し、レンたちはついに、魔法医学の本拠地へと足を踏み入れた。

 だが、その様子を城壁の上から見下ろす、冷ややかな視線があった。


「……針、だと? そんな原始的な呪術で、我が聖なる治療を汚す者が現れたか」


 白き法衣を纏った男――王立医師団の長、ゼノスが、不快そうに目を細めていた。

第8話、ご覧いただきありがとうございました!

王都への入り口を「腰痛治療」で突破する。

これこそが、実益を重んじる「なろう」的攻略法です。


いよいよ舞台は王都へ。

これまで辺境で「噂」でしかなかったレンの技術が、王都の権威たちと真っ向からぶつかります。


「門番隊長、一瞬で懐いた!」

「医師団の長、嫌な奴が出てきた!」


と思ってくださった方は、ぜひ【ブックマーク】をお願いします!

皆様の評価が、レンの針のキレ(物語の展開速度)を左右します。


次回、第9話「王都の隠れ家と、最初の『大物』患者」。

ひっそりと開院したレンの元に、夜陰に乗じて現れたのは……なんと、この国の?

お楽しみに!

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