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魔力詰まりは万病の元 〜回復魔法で治らない「身体の重だるさ」を、不遇の鍼灸師が針一本で調律する。魔力のコリを解したら、最強の戦乙女や聖女に懐かれました〜  作者: 夜凪レン
第1章 銀針の調律師、辺境に立つ

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第7話 強制トトノイ。――司祭様、お顔が凝っていますよ?

「な、ななな……何を、何をしたぁぁッ!?」


 司祭ボルジアは、目の前で起きた光景が信じられず、泡を吹かんばかりに狼狽していた。

 王国最強を自負する重装騎士たちが、たった一人の少年に、それも細い針を投げられただけで、地面に転がってピクピクと痙攣しているのだ。


「呪術だ……やはり不浄の呪術師だ! 者共、構わん、殺せ! この悪魔を浄化しろ!」


 司祭の叫びに、残った騎士たちが剣を抜こうとする。

 だが、彼らの動きはあまりに鈍かった。


「……遅いな。君たち、昨夜の進軍で腰の『大腸兪だいちょうゆ』が冷え切ってる。そんな状態で力めば、ぎっくり腰になるぞ?」


 レンの影が、騎士たちの間をすり抜ける。

 指先が空を切るたび、銀の閃光が騎士たちの首筋や手首、膝の裏へと吸い込まれていく。

 

「ぎゃっ!?」「あ、あががっ……!?」


 悲鳴を上げる暇すらない。

 レンが突いたのは、運動神経を司る魔力の分岐点――。

 痛みはない。ただ、脳からの命令が筋肉に届かなくなる。

 十数人の騎士たちが、ものの数分で「動かぬ石像」と化して森に転がった。


「ヒッ……、ヒ、ヒィッ……!」


 最後に残った司祭が、逃げようと背を向けた。

 だが、その不自然なほど突き出た腹と、脂ぎった顔がレンの視界サーモグラフィに赤黒く映り込む。


「司祭様。逃げるのはやめた方がいい。……あんた、今の怒張どちょうで血圧が限界突破してる。このまま走れば、頭の血管が弾けるぞ」


「う、うるさい! 悪魔め、近寄るな……ッ!」


 司祭が振り返り、光魔法の杖を掲げようとした。

 しかし。

 

「――失礼。顔が、凝りすぎてますよ」


 レンの指先が、司祭の耳の下――『翳風えいふう』のツボを電光石火で捉えた。


「ひ……ぎ、あ、ぁ……っ!?」


 司祭の杖が力なく落ちる。

 レンはそのまま、司祭の額、眉間、そしてこめかみへと、目に見えぬ速さで三本の針を叩き込んだ。


「あ……が、ぁ、ああああああああああッ!!!」


 森に響き渡ったのは、断末魔のような、しかしどこか悦びに満ちた絶叫だった。


 司祭の視界が、真っ赤に染まる。

 脳を直接揉みほぐされるような、凄まじい「響き」が頭蓋の内側で炸裂した。

 権力と強欲、そして暴飲暴食でドロドロに淀んでいた彼の魔力回路が、レンの針によって「強制掃除」されていく。


「な、なんだ……これ、は……っ。頭が、割れる……なのに、妙に……っ、気持ち、いい……ッ!?」


「強すぎるストレスで固まった表情筋を、強制的に緩めてあげたんだ。……ほら、そんなに怖い顔をしなくても、世界はもっと穏やかですよ」


 レンが最後の一針を抜いた瞬間。

 司祭の顔から毒気が抜け、まるで赤子のような、ふにゃふにゃに弛緩した表情へと変わった。

 膝から崩れ落ち、よだれを垂らしながら、彼は虚空を見つめて呟く。


「あぁ……。空が……青い……。私、何を……あんなに怒って……いたのかしら……」


「……強制トトノイ、完了だ」


 レンは道具を仕舞い、呆然と見守るエルフリーデとセラフィナの方へ歩み寄った。


「……レン、あの方はどうなったんだ?」

 エルフリーデが、あまりに変わり果てた司祭を見て引き気味に尋ねる。


「しばらくは戦う意欲も、人を虐める気力も湧かないはずだよ。脳内の快感物質エンドルフィンが出過ぎて、賢者タイムに入ってるからね」


「賢者……タイム……? やはり神の御加護があったのですね!」

 セラフィナが目を輝かせるが、エルフリーデは「いや、たぶん違うと思う」と苦笑いした。


「さて。追っ手は片付いたけど、ここに居続けるのも限界だ」

 レンは森の奥、王都が位置する方角を見据えた。


「エルフリーデ、セラフィナ。……僕と一緒に、王都へ行かないか? 本当の『医療』ってやつを、あの腐った医師団や教会に教えてやる必要があるみたいだ」


 不遇の鍼灸師と、彼に救われた二人のヒロイン。

 世界の「歪み」を治すための、本格的な旅が今、始まった。

第7話、ご覧いただきありがとうございました!

高慢な司祭が「強制トトノイ」によって平和な顔の抜け殻になる……。

これこそが、物理(健康)による究極の「ざまぁ」です。


さて、物語はいよいよ新展開!

辺境の森を飛び出し、腐敗した魔法医学の総本山・王都へと乗り込みます。

そこには、さらなる重度の「凝り」を抱えた強敵(患者)たちが待ち受けています。


「司祭の変わりっぷりに笑った!」

「王都編での無双も楽しみ!」


という方は、ぜひ【ブックマーク】と【ポイント評価】をお願いします!

皆様の応援が、レンの針をさらに鋭く研ぎ澄まします。


次回、第8話「王都の門番と、バキバキの腰痛」。

いざ、魔法医学への反撃開始です!

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