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魔力詰まりは万病の元 〜回復魔法で治らない「身体の重だるさ」を、不遇の鍼灸師が針一本で調律する。魔力のコリを解したら、最強の戦乙女や聖女に懐かれました〜  作者: 夜凪レン
第2章 王都・学園編

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第17話 王宮の深奥。――禁忌の魔力と絶望の王女

王宮、最上階の『星天の間』。

 普段は美しい星空を映し出すはずの魔導天井は今、赤黒い雷雲のような魔力の渦に覆われていた。


「寄るな! 寄るではない! これは……これは、王女殿下を更なる高みへと導くための、聖なる儀式なのだッ!!」


 部屋の中央で狂ったように叫んでいるのは、王立医師団長ゼノスだった。

 彼の足元には、数名の医師たちが泡を吹いて倒れている。王女フレアの体から放出される暴走した魔力――『魔圧』に耐えきれなかったのだ。


「……見苦しいな、ゼノス」


 静寂を裂いて、レンが部屋に足を踏み入れた。

 背後には、抜刀したエルフリーデ、祈りを捧げるセラフィナ、そして計測器を構えたリセッテが続く。


「貴様……! あの時の小僧か! 来るな、これは私の……私の最高傑作なのだ! 王女殿下の経絡を魔法で強制拡張し、伝説の聖魔導師並みの魔力容量を与えたのだぞ!」


「……拡張、だと? あんたがやったのは、ただの破壊だ」


 レンの視界サーモグラフィに映る王女フレアの姿は、あまりに凄惨だった。

 ベッドに横たわる彼女の全身の経絡は、限界を超えて膨張し、今にも爆発しそうなほど熱を帯びている。ゼノスが施した『禁忌の術式』は、経絡という「パイプ」を無理やり太くしたが、その「繋ぎ目」である関節や内臓への負荷を一切無視していた。


「リセッテ、計測を」


「はい! ……魔圧、計測不能! このままではあと十分で、王女殿下の心臓が魔力熱で焼き切れます!」


「……十分か。十分あれば、お釣りが出るな」


 レンはポーチから、これまで一度も使ったことのない、黄金の輝きを放つ『極細長針』を抜き取った。


「ゼノス。あんたの言った『最高傑作』……僕が今から、ただの『ゴミ』に戻してやるよ。――エルフリーデ!」


「承知したッ!」


 エルフリーデが突風のごとく踏み込み、ゼノスが放った護身用の魔法壁を力任せに叩き割る。

 その隙に、レンは王女フレアの枕元へと跳んだ。


「お……おのれ、おのれぇぇッ! 私の……私の名声がぁ!」


「名声のために患者を壊す奴に、医者を名乗る資格はない」


 レンは横たわるフレアの額、そして胸元の急所――『鳩尾きゅうび』へと手を添えた。

 あまりの熱。

 だが、その奥でフレアの魂が、助けを求めて震えているのが分かった。


「……フレア様。痛いだろうけど、我慢してくれ。……あんたの体に溜まった、この『偽物の力』を全部、外へ逃がしてやる」


 レンの指先が、黄金の針を震わせた。

 ターゲットは、全身の魔力が合流する最大の関門――『百会ひゃくえ』。


「――抜き取る(アース)。……全経絡、開放ッ!!」


 黄金の針が、フレアの脳天に深く沈み込んだ。


 瞬間。

 部屋中の空気が一気に引き絞られ、フレアの体から純白の光の柱が立ち昇った。


「ぐ、あああああああああああああああああッ!!?」


 それはフレアの悲鳴ではなく、彼女の体内を荒らし回っていた『暴走魔力』の断末魔だった。

 

 レンの針を導火線にして、行き場を失っていた膨大な魔力が、天へと向かって放出される。

 

「な……魔力が、抜けていく……!? 私が注ぎ込んだ、全王国の叡智ポーションがッ!!」


 ゼノスが膝をつき、絶望に顔を歪める。

 だが、レンは止まらない。

 休む間もなく、フレアの両手足、そして腹部へと次々に針を打ち込んでいく。

 拡張され、ボロボロになった経絡を、針の振動(共鳴)によって本来の太さへと「引き締めて」いくのだ。


「……トトノえ。……君の、本当の形に」


 レンの額から汗が滴り落ちる。

 数分後。

 荒れ狂っていた魔力の大嵐が、嘘のように止んだ。


 部屋を包んだのは、静謐な沈黙。

 

「……ぁ、……ふぅ……」

 

 フレアの唇から、小さく、柔らかな吐息が漏れた。

 石のように硬直していた彼女の指先が、レンの手をかすかに握り返す。

 彼女の頬には、死人のような青白さではなく、健康的な桃色が戻っていた。


「……王女殿下……?」


 セラフィナが涙ながらに駆け寄る。

 フレアはゆっくりと目を開け、目の前にいる、汗だくの少年の姿を捉えた。


「……あなたが……私を……? ……暖かい、風が……吹いた、気がして……」


「……ただの、換気だよ。……溜まっていた煙を、外に出しただけだ」


 レンはそう言って、黄金の針を静かにケースに仕舞った。

 その背後で、自らのすべてを否定された医師団長ゼノスは、抜け殻のような顔で崩れ落ちていた。


 王国の象徴を救ったのは、高価なポーションでも、華やかな儀式魔法でもない。

 一本の針と、正しい身体の知識。

 

 魔法医学の時代が終わり、本当の『養生』の時代が、今ここに幕を開けた。

第17話、ご覧いただきありがとうございました!

第2章のクライマックス、王女フレアの救済。

「拡張」という名の破壊を、「調律」という名の再生で塗り替える。

レンの信念が、王国の理を打ち砕いた瞬間でした。


敗北したゼノスの末路、そして命を救われた王女がレンに向ける感情……。

物語は一つの大きな区切りを迎え、世界はレンを「救世主」として認め始めます。


「王女様を救うシーン、最高にスカッとした!」

「レンのプロの仕事っぷりに痺れた!」


と思ってくださった皆様。

ぜひ、今のうちに【ブックマーク】と【ポイント評価(★★★★★)】をお願いします!

皆様の応援が、レンの技術をさらに高次元へと引き上げます。


次回、第18話「王女の目覚めと、報賞の鍼灸院」。

一躍、時の人となったレンに、国王が下す驚きの『褒美』とは? お楽しみに!

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