表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔力詰まりは万病の元 〜回復魔法で治らない「身体の重だるさ」を、不遇の鍼灸師が針一本で調律する。魔力のコリを解したら、最強の戦乙女や聖女に懐かれました〜  作者: 夜凪レン
第2章 王都・学園編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/22

第12話 特別講師レン。――初日の授業は『全員、深呼吸しろ』

「……あんな子供が、バルバラ閣下の推薦した特別講師だと?」

「冗談だろう。魔力もほとんど感じられない。持っているのは……なんだ、あの細い鉄の棒は」


 学院の第零講堂。

 そこには、将来の王国を背負って立つはずのエリート魔導師たちが集まっていた。

 彼らの視線の先に立つのは、いつもの脱力した表情のレン。そして、その横で神妙に控えるエルフリーデと、資料(と針の予備)を抱えたリセッテだ。


 教壇に立ったレンは、一通り学生たちの顔を眺め、深く溜息をついた。


「……ひどいな。ここは学院じゃなくて、重症患者の待合室か何かか?」


 その言葉に、最前列に座っていた金髪の少年――公爵家の三男にして学年トップの成績を誇るカイルが、不快そうに立ち上がった。


「失礼だな、無名の治療師。我々は日々、血の滲むような修行と、最高級のポーションによって魔力を高めている。君のような野蛮な術師に、我々の何がわかるというのだ」


「修行ね。……カイル君だったかな。君、今すぐ魔法を放ってみて。的は何でもいい」


「ふん、後悔するなよ」


 カイルが杖を構える。

 彼が放ったのは、高密度の火球魔法。轟音と共に的を焼き尽くすが、その直後、カイルはわずかに眉を寄せ、肩を回した。


「見たか。これが我が魔力だ」


出力パワーは合格。だけど、効率(燃費)は最低だ。放った後、右の首筋から肩にかけて、電気が走るような鈍痛があっただろう? あと、最近は夜中に何度も目が覚めるはずだ」


 カイルの顔が、一瞬で強張った。

 図星だった。


「それは、君が『魔力を練る』時に、無意識に横隔膜を固めて呼吸を止めているせいだ。……全員、一度杖を置け。今日の最初の授業は、魔法の練習じゃない。――『深呼吸』だ」


「……はぁ? 深呼吸だと?」


 困惑する学生たちをよそに、レンは教壇を降り、カイルの背後に立った。


「魔法は『気』と『魔力』の循環だ。だけど、君たちは効率を上げようとして、体中の『ツボ(節)』をガチガチに閉ざしている。……カイル、少し失礼」


 レンの指先が、カイルの胸の中央――『膻中だんちゅう』というツボを鋭く突いた。


「っ、ぐぅ……ッ!?」


「そこは気の集まる場所だ。さらに、首の付け根……ここを針で解放する」


 レンが銀針を一本、カイルの天柱てんちゅうへと滑り込ませた。


「――っ、ぁ…………ッ!!」


 カイルの身体が、ビクンと大きく跳ねた。

 直後、彼の肺が、本人の意思に関係なく大きく、深く膨らんだ。

 

 空気が、肺の最深部まで流れ込む。

 それと同時に、今まで「重い塊」のようだった体内の魔力が、サラサラとした清流に姿を変え、全身の毛細血管へと染み渡っていく。


「な……なんだ、これ……っ。空気が、甘い……!? 魔力が、勝手に……溢れてくる……っ!」


「それが、君が本来持っている出力だよ。……もう一度、魔法を撃ってみろ。今度は、息を吐きながらだ」


 カイルは、狐につままれたような顔で杖を向けた。

 無造作に放たれた火球。

 だが、その速度と熱量は、先ほどの倍以上に達していた。

 何より、放った後のカイルの表情には、一切の疲労がない。


「……信じられない。魔力消費が、ほとんど感じられない……。たった一本の、針で……?」


 講堂が、水を打ったように静まり返った。

 エリート学生たちが、自分の手と、そして教壇に立つ「無能に見えた少年」を、畏怖の眼差しで見つめ始める。


「いいかい。強い魔法を撃ちたければ、まず体を『から』にしろ。詰まったままじゃ、どんなに注いでも溢れるだけだ。……さて、次は誰を『トトノわせ』ようか?」


 レンが不敵に笑い、針を指先で回す。

 先ほどまで嘲笑っていた学生たちが、今度は我先にと挙手を始めた。


 魔法医学の常識が、今、一つの教室から音を立てて崩れ始めていた。

第12話、お読みいただきありがとうございました!

「深呼吸」という、現代人にとっても大切な養生の基本を、魔法のブースト理論として描きました。

カイル君、一瞬で「わからせ」られてしまいましたね。


エリートたちがレンの技術に心酔していく中、面白くないのは既存の教師陣。

次回、第13話「魔導医師の逆襲。――『その治療は違法だ』」。

レンの授業を「危険な民間療法」として糾弾する勢力が動き出します。


「カイルの驚き顔が気持ちいい!」

「レン先生の授業、私も受けたい!」


と思ってくださった方は、ぜひ【ブックマーク】と【評価(★★★★★)】をお願いします!

あなたの応援が、レンの新しいツボ(プロット)を刺激します。


次回、学院に嵐が吹き荒れます。お楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ