2話 派遣奴隷商
向陽はドウカクと一緒にドウカクの奴隷商がある町「アンチョウ」に辿りついていた。道中向陽はドウカクにこの世界の事、奴隷商の事、色々聞いていた。今居る国は大陸の数ある国でもトップ5に入るほどの国「グルト王国」だそうだ。この国では奴隷は禁止にされてはいないが、基本は犯罪奴隷、借金奴隷に限られており、例えば誘拐による無理矢理に奴隷にする行為は禁止にされてる等禁止行為もあるらしい。だがドウカク曰く、裏の世界ではやはりそういう行為をする輩は居るそうだ。因みにドウカクは気が弱い為、そういう事に関しては気が引けるそうだ。
ドウカクは親から2年前奴隷商を引き継いだ。しかし引き継いだといっても父親の急死によっての引継ぎだった為、気が弱い性格も相まって大分商いに関しては苦労したそう。そのせいで2年間父親の遺産で何とか遣り繰りしていたが、それもキツくなりとうとう奴隷を売りに行くとしたところ盗賊に襲われたそうだ。
「私の奴隷商には子供しか居なく、この子が一番年上だった為売りに出そうとしたのです。」
ドウカクは説明する。売ろうとした子は15歳で名前はイリス、女の子だ。彼女は子供達のリーダー的存在であったが、経営が苦しいと言うドウカクの言葉を受け皆を救う為売られる事に自分から立候補したそうだ。それがどんな覚悟だったのか。向陽には想像も出来なかった。
そんな話をしているとドウカクの奴隷商に到着した。白い四角い建物。その周りには壁が在り、登るには梯子が必要な高さだ。門を通ると建物周りには学校のグラウンド並の広場や林も見える。玄関に入ると奴隷と思われる子供達が一斉に集まってきた。中にはイリスの姿を見て泣く子供もいた。ドウカクにお帰りと言う子供もいる。その光景を見て向陽はとある思いがあった。
応接間の様な部屋に通された向陽はドウカクに改めてお礼を言われた。しかしお礼をしたくても先に話した通りお金の余裕は無い為、向陽は何か代案は無いか問われた。向陽は少し考え、そして言う。
「じゃあさ、俺も奴隷商の運営に加えさせてくれない?」
その言葉にドウカクは当然驚いた。実は言うとドウカクは向陽に用心棒的な存在になっては欲しいと思っていたが、持ち前の弱気でそんな事は言えなかったのである。しかし向陽から言われて驚きと同時に安堵もしたのである。そんなドウカクを尻目に向陽は続けて言う。
「多分ドウカクさんはさ、2年間も遺産だけで施設を維持出来たんならお金の管理は上手いんだろ?ならそっち方面は任せるわ。んで俺がこの奴隷商のやり方を指示する。つまり俺がこの奴隷商のオーナーな。」
向陽の言い方は完全に奴隷商の乗っ取り発言だった。ドウカクは反論しようとしたが向陽は更に言う。
「ドウカクさん、とりあえず俺の話を聞いてくれ。多分だが貴方は気弱だが同時に優しい性格もしてるんじゃないか?だから2年間も奴隷を売らなかったんだ。さっきドウカクさんが帰って来た時笑顔を見せる子供もいた。俺の偏見だが、普通の奴隷商の人間に対して笑顔を見せる奴隷ってあんまり居ないんじゃないかな?つまり今回イリスちゃんを売るってのは断腸の思いだったんだろ?ドウカクさんにとって。」
向陽はドウカクに優しく諭す。するとドウカクは俯き、そして泣いた。向陽の予想は当たっていた。ドウカクが初めてこの奴隷商を訪れた際、奴隷の子達はボロボロの服を着ていて痩せている者ばかりだった。ドウカクは父親が奴隷商をやっている事は知らなく、山で木こりとして生きてきていたところ郵便が届き知ったそうだ。借金が無く逆に貯金があるのが幸いだったが、奴隷商としてのノウハウが無いドウカクにとっては苦労の連続だったらしい。
「その日どうやって皆を生きていかせるか。どうやって運営していくか苦難の連続でした……。一応売買ルートや相場等は調べて分かりましたが、どうしても子供達を売る気にはなれず……そうこうしている内に資金も底を尽きかけてきて……どうしようもなくなって。」
ドウカクは涙ながら説明をする。一通り聞いた後、向陽は自分の提案を言った。
「ドウカクさんの気持ちは正直俺も分かります。売る勇気が出ない。でも売ってお金を手に入れないと奴隷商が持たない。だから俺から提案があります。奴隷を売らず、でも奴隷を使ってお金を手に入れる方法を。」
ドウカクはそんな方法存在するのか?という顔をした。向陽は続けて説明する。
「売らずにお金を手に入れる方法。それは……貸すんですよ。奴隷をね。」
向陽はドウカクに詳しく説明した。つまり奴隷を契約書付きで貸すのだ。農家でも商店でも、出来たら貴族の屋敷の使用人としても。就業時間を指定し奴隷を働かせ、そして給金を貰う。その給金を奴隷商の運営資金に回す。現代風に言えば派遣会社の様な感じだ。向陽はボランティア活動で様々な人と交流をしていた。その中には派遣会社で働いている人もおり、会社の運営の仕方など世間話で聞いた事があった。
「言うなれば『派遣奴隷商』かな?多分この世でそんな事業をしている奴隷商なんて無いんじゃないか?つまり物珍しさがある。最初はその珍しさで顧客が来るかもしれない。そこで成功すれば後は安泰になるかもだが……失敗すれば言わずもがなだな。」
向陽は腕組みをしながら言い終えた。その説明を聞いていたドウカクは口を開く。
「確かに……チャンスという意味では試す価値はあります。……が今現状問題点もあります。」
ドウカクは複数の問題点を指摘した。
1つ目、奴隷の差別。やはり奴隷は侮蔑の対象で貸した先で酷い扱いを受ける可能性があり、尚且つ給金が支払われない可能性がある事。
2つ目、貸しようにも奴隷の子達には基本教養が無い為、結局肉体労働しか出来ない。そんな奴隷を借りるぐらいなら一般人を雇用した方がまだ良いと言われる事。
3つ目、仮に契約出来たとして現場までの往復方法。特に給金を貰った後の帰り道は特に危険。子供の、しかも奴隷ともなると何が起こるか分らない。
その他にも細かい指摘をドウカクはしてきた。しかし向陽は微笑み、そして自身満々に言った。
「ドウカクさん。実はですね、今ドウカクさんが仰った事項については……まぁゴリ押し部分も無くは無いですが、ちょっと解決できそうな思惑はあるんですよ。」
向陽の言葉の自信はここに来る途中にドウカクから聞いた内容にあった。それは「奴隷紋」に対する事柄だった。
ドウカクの奴隷商に居る子供は計8人。男5人(8、9、9、12、13歳)・女3人(7、10、15歳)
イリス
身長150㎝・体重40㎏
奴隷商では最年長であり、従業員が居ないため他の子供達の面倒を見ている。その為炊事、洗濯、掃除は8人の中ではかなり出来る。あとドウカクにお願いされ、客に出すお茶の淹れ方も覚えた。




