表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ある出戻り配信者の顛末  作者: 九木圭人
ドラゴンスレイヤー
86/169

ドラゴンスレイヤー21

 熱線が消える。他の部隊も一斉に奴に駆け寄っていく。

 アークドラゴンまでの距離はまだある。それは奴の熱線の放射に晒される時間がまだしばらくは続くことを意味していた。


「熱線来ます!」

 オペレーターの叫び。

 それを裏付けるように動くアークドラゴンの首。その先端の口の中にこの距離からでも分かる光が宿っている。

「ちぃっ!」

 その首が一度横を向く=駆け寄る俺たちを拒絶するような横薙ぎの準備。

「ッ!」

 それを予測した瞬間、それが現実のものとして目の前に現れる。

 口腔内に宿った光がそのままこちらに飛んでくる――それも、薙ぎ払う軌道を描いて。

 土煙が舞い上がり、光の帯が通り過ぎていくのに合わせて土や岩が切り裂かれていく。


 幸いなことにターゲットは俺ではなく、更に先行していた村上隊だった。

 そして更に幸いなことに、遮蔽物を巧みに駆使して移動する彼等を捉えるには、単純な横薙ぎでは足りないようだった。


 首が他所に向くアークドラゴンの、その隙を逃さず俺たちは走る。

 刀を肩に担ぎ、足の回る限りのスピードでの肉迫。相手は今や飛び立たない以上、ゴールは見えている。

「再度反応増大!放射に警戒して!」

 再びのオペレーターの声。

 再びのアークドラゴンの口に現れる光。

 だが今回は薙ぎ払いではない。ターゲットは俺の前を行く村上隊――そして、恐らく俺。

「くっ!!」

 光を讃えた顔が地面に一瞬だけ向けられる。

 その一瞬で、次の軌道が割り出せた。


「回避を!!」

 絶叫に近いオペレーターの警告。

 それを聞いた時に踏み出した足に重心を移して蹴り出す瞬間、その力を弱めて減速を開始。

 とはいえ、それだけではまだ足りない。慣性で動き続ける全身はそう簡単に止まってはくれない。

「くうっ!!!」

 直後、熱線が放たれた。

 奴の真下から真っすぐに、村上隊と俺をその軌道上に捉えての一閃。

 ミシンで縫うように地面に深く傷を残しながら、一直線に俺たちの方へと突っ込んでくる熱線。

「おおおっ!!!」

 咄嗟のタイミングで横にすっ飛ぶ。

 その直前まで俺がいた場所、俺が走っていたルートめがけて直進する熱線。最初の放射と同様、躱したはずなのに周囲の焼け付いた空気が痛い程の熱でもって俺を包む。

「ぐうっ!!」

 放射が終わり、跡形もなく削れた地面をガイドラインにするようにアークドラゴンへと一直線。流石に距離はかなり詰まってきている。

 先を行く村上隊は散開を選択したようだ。放射を終えた瞬間に大きく散って、それぞれが攻撃対象から逃れようと動いている。


「……ッ!!」

 対するアークドラゴンが、その距離故に見える、牙の生えそろった巨大な顎が最大限に開かれた。

 その口の奥、というより喉を見せつけるようにこちらに向けられる奴の口。

 反射的に横へ。先程の放射で削れ、一瞬で蒸発した地面と距離をとるように。

 その俺の動きに、まるで糸で繋がっているように向きを変えてくる奴の口。


 疑う点の一切ない事実:奴の次の狙いは俺。


「ちぃっ!!」

 反対に跳び避ける。だが捕捉は外れない。

 集団を相手に一撃で掃討するのではなく、近づく相手を各個撃破する方向に切り替えたのか、執拗に俺を狙ってくる。

「この野郎――」

 覚悟を決めなければなるまい――奴の口を睨みつけながら、その言葉が否応なく頭の中を埋め尽くしていく。

「うおおおっ!!」

 回避動作を終了。代わりにあらん限りのスピードで奴に突進。

 左右のかく乱での回避は不可能だ。ならかくなる上は、残りの距離を一気に駆け抜けて奴の懐に飛び込むのみ。

 奴は真下に放つこともできる。だが、首よりも胴体に近づけば話は別だ。


 なら後はスピード勝負だ。

 ルールは至極単純。奴の熱線より早く駆け抜ければ俺の勝ち。それ以外の全てで俺の負け。

 そしてこの勝負に二度目はなく、どんな理由でも失敗すれば死だ。

 奴の口。俺の足。そして睨み合うお互いの目。


「ッ!!」

 その勝負は唐突に終わりを迎えた――俺の不戦勝という形で。

「おおおっ!!」

 ドラゴンに初太刀を叩き込んだのは、別方向から一気に接近した國井さんだった。

 村上隊と同様に散開した國井隊は、村上隊や俺が熱線回避に全力を注いでいる時間を使って俺がやろうとしていた事=懐に飛び込んでの一撃を確実に加えていた。それも、アークドラゴンが思わず熱線放射を中止してそちらに意識を向ける程に深々と。

「ッ!」

 そしてその一瞬を決定的なものに出来る程の肉迫は、俺の足でもなんとかなったようだ。

 ほんの一瞬、横からの攻撃に反応したアークドラゴン。注意が疎かになったそのタイミングを逃さず、ダッシュの勢いを乗せた斬撃を叩き込む。


「シャァッ!!!!」

 踏込みと同時の、体重を乗せた斬り下ろし。薩摩隼人ならチェストとでも叫んだだろう、地面まで斬りつける勢いの斬撃。

 しっかりと手応えが返ってきて、同時にアークドラゴンが咆哮を上げる。斥力場生成ブレードによる渾身の一撃は、無防備になった奴の前足の一本に、確実に深手と言えるだけの傷をつけていた。


(つづく)

今日はここまで

続きは本日19時~20時頃投稿予定です

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ