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ある出戻り配信者の顛末  作者: 九木圭人
ドラゴンスレイヤー
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ドラゴンスレイヤー10

 岩壁に張り付くサラマンダー。

 そいつら自体は刺激しなければ危険ではない。

 だが問題は、サラマンダーの縄張り意識はかなり強いという事。そして連中が唯一の進行方向に陣取っている事だ。


「オペレーター、他にモンスターは?」

 マナブイを設置しながら尋ねる。

「その場所には確認できません。サラマンダーに注意して進んでください」

「……了解」

 慎重に対岸に伸びている道へと足を踏み入れる。

「……暑いな」

 サラマンダーも勿論だが、この足元にも注意が必要だ。ドロドロと、ここからでも分かる高い粘度で流れていく溶岩まで十数メートル。落ちれば間違いなく助からない。

「……それにしても、火山ガスの類が発生していないのは幸運だった」

 もしそんなものが出ていれば即座に中止だ。


 距離が近づくにつれてトカゲにしてはかなりでかいサラマンダーの姿が更に大きくなってくる。

 溶岩によく似た体は、よく見ると一定のリズムで腹を膨らませたりしぼめたりを繰り返している。それに何の意味があるのか、こちらに気付いているのかいないのか、その辺が分からない分目を離せない。

「……」

 ゆっくり、ゆっくりと、刺激しないように歩いていく。

 一度など足のすぐ下の所でサラマンダーの頭があって、そのぎょろりとした目と目が合ったことさえあった。

「……?」

 が、それでも動きは見せない――奇妙な状態。

 橋になっている部分を渡り切ってから、溶岩の流れに沿って緩やかな下り坂に差し掛かり、サラマンダーの群れを通過する――やはり反応はない。


「まあ、越したことはないか……」

 だが、今度は無理だろうと一目でわかる状況が現れたのは、そこから更に進んでいった先だった。

 少し進んだ、僅かに開けた場所。

 右手側は崖になっていて、その遥か下には溶岩だまりが広がっているそこに、そいつはいた。

「ッ!!」

 桁違いに巨大なサラマンダー。

 先程通過した個体が精々オオサンショウウオ程度だとすれば、これはワニぐらいになるだろうか、唯一の通り道の前にその4m近い巨体を横たえてじっとこちらを見ている。

「……ッ!!」

 流石に黙って通してはくれまい。そう思って腰間のものに手をかけた、その瞬間だった。


「上から反応あり!」

「なにっ!?」

 オペレーターの叫び声、それに反射的に見上げた視界に現れる二つの影。

 その影を認識するのと、それが飛び降りてくるのはほぼ同時だった。

「ッ!!!」

 反射的に飛び下がる。着地してすぐ、もしその方向を少しでも間違っていれば飛び降り自殺になっていたことを知り、このクソ暑い中でも背中に冷たいものを感じた。

「待ち伏せ……ってことか」

 だがそれだけでは済まない。

 人間と同じか、それより大柄な二足歩行のトカゲが二匹、手に持つ槍を逆手に飛び降りての攻撃をかわされると、槍を再び構えなおして仕留め損ねた獲物にその穂先を向けてきていた。

 こちらも張り合うように抜刀。先程までの道よりも多少は広いと言っても、安心して戦えるようなスペースは当然ながらない。


「……」

 相手も当然それは分かっていると見えて二匹が前衛と後衛に分かれ、肩に担ぐように槍を構えて距離を詰めてくる。

 前衛のリザードマンが進む。俺が半歩下がる。

 更に向こうが一歩。俺が半歩。

 もう一歩詰める――槍が届く間合。


「ッ!」

 それと同時:ひょいと刀を担ぎ八相に変化。

 それに一拍遅れてリザードマンが飛び込む。

 当然、その槍の穂先は奴の肩から突き下ろされる。

「シッ!」

 その出端を抑えるように飛び込み、同時に降り下ろした刀と槍のけら首がカッと音を立てる。

「ッ!!?」

 爬虫類特有の割れ目のような瞳が見開かれる――無理もない。突き下ろした攻撃が目標の手前で逸らされて、刺すべき相手が懐に飛び込んできたのだから。

「シャッ!!」

 そしてその飛び込んできた相手がそのまま首――どこからが首なのか釈然としない体型だが――を狙って斜めに切り上げてきたのだから。


「――ッ!」

 奴が何をしようとしたのかは分からない。

 だが確かな手応えと、小さく跳ねるようなステップ、そして奴の喉仏の辺りまでしっかりと切り込んだ刃で、確実に仕留めたという事だけは分かる。


「しゃっ」

 刀を引き抜き、こちらにしなだれかかるように倒れてきた死体を受け流して右へ。火葬はボコボコと音を立てている溶岩に任せる。

「次!」

 すぐさま構えなおし、叫び、そして後衛に切っ先を向ける。

 対してその生き残りが採った手は――。


「コロロロロロロロッ!!!」

 喉を鳴らす、奇妙な声。

 その見た目とは裏腹なテノールのそれが辺りに響き、それを鳴らしながら当人は踵を返して逃げ出している。

「あっ、おい――」

 そこまで声に出して、それからすぐに中断。

 前方のワニが動いている。

 それまでじっとこちらを伺っていた巨大なサラマンダーが、今は獲物を見つけたとばかりにその体を起こしてこちらに向かってくる――逃げ出したリザードマンがその頭を飛び越えてから。


 そして同時に響くオペレーターの声。緊迫した、驚きを隠さないそれ。

「後方から反応多数接近!先程のサラマンダーたちが一斉に動き出している!?」


(つづく)

投稿遅くなりまして申し訳ございません

今日はここまで

続きは明日に

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