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ある出戻り配信者の顛末  作者: 九木圭人
ある配信者たちの顛末
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ある配信者たちの顛末12

「おおおっ!!」

 着地直後の奴に突撃。今度こそ終わりにする。

「!!?」

 奴が何とか体勢を整え迎撃せんとこちらに向き直り、それと同じぐらいのタイミングで俺は大きく振りかぶる。


「ッ!!」

 一瞬の交錯――上段からの振り下ろしに備えようと忍刀を頭上に掲げる奴。

 そして、そのがら空きの胴を真一文字に切り裂いた俺。

「終わった……」

 手応えは、確かに奴を斬っていた。

 そして感じる急速なマナ反応の減少と、その末の消失が、それが決して錯覚ではないと教えていた。


「……」

 振り返り、膝から崩れ落ちる奴を確認して血振り。奴はもう、起き上がることはない。

「俺……京極……役に立てた……」

 うわごとのような最期の言葉は、ただそう絞り出されるだけ。

 誰も見ていない、誰にも求められてない、ただの私闘の末の死。

 かつての人気配信者。その、余りに惨めな最期。

 その骸から、アークドラゴンの時と同様に赤い光の蜂が飛び上がり、ほつれるようにして消えていく。


「……済まないな」

 その光が消えた時、俺が詫びたのは、その自らの後輩の最期を見届けた宮園さんにだった。

 自分でもどうして詫びたのかはよく分からない。だが、そんな事は彼女も気にしなかった。

「いえ……。ありがとう」

 それだけのやり取りで、俺たちの注意はすぐにもう一つの方=有馬さんを飲み込んだワームホールに向く。


「オペレーター、有馬さんの様子は?」

「今のところ無事。ハイブに入ってすぐのところで待機中」

 なら、するべきことは決まっている。

「了解だ。こちらもハイブに侵入する」

 それだけ告げて待ち構えるように口を開けているワームホールへ足を向ける。

「このメガリスは?」

 と、そこで宮園さんに呼び止められる。

 この戦いの間もここに鎮座していたメガリスは、変わらず淡い光を放っている。


「せっかくだ。破壊しよう」

 MCライリーの時に分かった事だが、メガリス自体の破壊は決して難しい事ではない。

 それを守っているガードの方が厄介で、メガリス自体は脆弱だ。

 風巻がこのメガリスのガードだったのかは分からない。ハイブを展開してそこに逃げ込むこともなく、こうしてこの洞窟の中で戦ったことを考えると、こいつとは別にガードがいるのかもしれない。


「ッ!!?待って!!!」

 宮園さんがハッとしたように声を上げる。

 そして声にこそしなかったが、俺もまた、恐らく彼女が抱いているのと同じものをその時に感じていた。

 破壊しよう――まるでその言葉を理解したように突然、メガリスが光を強めた。

 殆どフラッシュをたいたようなその強い光の中に現れる、もう一つのワームホール。

 恐らくそれがこのメガリスのハイブなのだろう、浮かび上がったメガリスが、その中に抵抗もなく飲み込まれて消える。


「消えた……?」

 発光するメガリスそのものが消えたことで辺りはそれまでと同様の光景に戻り、その光ごとメガリスを飲み込んだ新たなワームホールも消えた。


「……とにかく、今はもう一つの方に行きましょう」

 その光景に呆気にとられそうになりながら、宮園さんの言葉に俺は自分のするべきことを思い出し、もう一度有馬さんが消えたワームホールへと足を向けた。

「よし、行こう!」

 こちらのワームホールは健在だ。

 俺と宮園さんを苦も無く飲み込むと、外からは分からなかった強い光、先程メガリスを飲み込んだ時と同じそれが俺たちを包み込む。

「ッ!」

 思わず閉じた目を開いた時、目の前に広がる荒れ果てたオフィスらしき部屋を見て、俺たちは間違いなくハイブに到達したのだと知った。


「あっ!一条さん!宮園さん!」

 そして勿論、そこで再会した有馬さんの存在によっても、また。

「ああ、有馬さん無事で……ッ!?」

「って大丈夫!?怪我しているじゃない!!?」

 俺と宮園さんが同時に気付く、彼女の左肩に滲んだ血の跡。

「あ、だ、大丈夫です、大したことありません。ちょっと血が滲んでいますけど、皮膚が切れたぐらいで……」

 そう言ってちょっと恐縮した様子の有馬さん。

 倒れているハーピィの死骸を見るに、これらとの戦闘で負った傷なのだろうが、大事が無いようで何よりだ。

 ――恐縮しているその表情に安堵が見られたのは、俺の思い込みだろうか。


「そう?なら……いいけど」

 彼女の言葉を聞いてから、宮園さんは改めて周囲を見回す。恐らくライリーの時と同様、誰かの思い入れのある場所なのだろうが、ここを見ただけではただのオフィスだ。

 オフィスに思い入れ?俺個人の感覚では到底理解しがたい。

「どうやら外に続いているみたいです」

 有馬さんが付け加え、それから部屋の片隅にある扉を指さし、俺たちはそちらに向かう。他に出口も見当たらない以上、こちらに進むしかない――のだが。


「どこなんですかね?ここ」

「どこかのオフィスの廊下……だな」

 外に広がっているのは、そうとしか表現のしようがない廊下。

 真っ白な壁と、カーペットが敷き詰められた床の廊下が、一直線に奥へと伸びていて、その白い壁には何かのポスターが張り出されている。


 皆目見当のつかない俺と有馬さん。そしてそれとは対照的に、ぼそりと呟いた宮園さんはその正体を理解していた。

「これ……アウロス本社だ」


(つづく)

今日はここまで

続きは明日に

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