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ある出戻り配信者の顛末  作者: 九木圭人
ある配信者たちの顛末
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ある配信者たちの顛末4

「なんだ!?」

 目の前の異変に気付き、それに対する声が出た時には、その白い光がアークドラゴンの東部に突っ込んで爆ぜている。

「ッ!!!」

 奴の巨大な頭がのけ反る。

 口腔内に湛えていた赤い光が、その白い光との衝突で四方八方に飛び散り始める。


「あれは……」

 まるで日の出のように、崩落しかけた顔のそこかしこから光が漏れ出して、その光に耐えきれずに崩れかけの顔が更に崩れていく。

「ここっ!!」

 その瞬間を逃さず、有馬さんが矢をつがえ、即座に放った。

 光を宿した鏃。それが、まだ崖にしがみついているアークドラゴンを蹴り落すように、奴の崩れていく顔面に飛び込んで爆発する。

「ッ!」

 今度こそ、奴の巨大な前足がどちらも崖から離れた。

 顔が吹き飛び、首のあった辺りから真っ赤な光の奔流に飲み込まれたアークドラゴンの残骸。

 それが、ボロボロとパーツごとに崩れ落ちて竪穴の中へと落ちていく。


「「……」」

 今度こそ終わった――そう直感して武器を降ろした俺たち。瞬間、その光の奔流の中を別の何かが泳いでいるのを見て再び構えなおす。

「あれは……!?」

「あいつが操っていたのか……」

 赤い奔流の中から現れた、大型の鳥類ぐらいはありそうな巨大な蜂。

 今や辺り一面を満たしている赤い光そのものが蜂の形をとったようなそれが、崩落していくアークドラゴンの死体を乗り捨てるように飛び出すと、天井に向かって急速に上昇し、そして消えた。

「!?」

 まるでほつれ糸を引っ張って布をほどくように、光がしゅるしゅると伸びていって、蜂姿が解かれて消える。

 そしてそれに合わせるように、僅かに残されたアークドラゴンの残骸が、光の消えた竪穴の中へと落ちていって鈍い音を立てた。


「終わった……のか?」

 目の中に残った赤い光の残像を瞬きして追い払いながら、竪穴に身構える。

 だが、今度こそ全て終わったのだと、直感が、そして先程までと変わらない僅かな照明によって最低限の明るさが維持されているだけに戻った洞窟が告げている。

「アークドラゴンからのマナ反応が完全に消滅しました。これで今度こそ、奴は死んだはず……」

 加えてオペレーターの言葉がその認識が間違いではないというお墨付きをくれた。


 なら、もう一つの問題。即ち、乱入者の正体だ。

「で、今のは――」

 振り返った先にいたその人物に、俺はその一瞬前まで頭に浮かんでいた問いを飲み込んだ。

「侵入した連中……ではなさそうだね」

 そう言ってこちらに向かって坂を下りてくるその人物。

 燃えるような赤毛をポニーテールにして垂らし、その髪の毛と同じ色のチャイナドレス風の装束の上から白いジャケットといういで立ち。

 肩の上に担いだ苗刀(みょうとう)は、恐らく先程の一撃を放ったものだろう。

 そしてその苗刀の上、彼女の頭上で追従するように浮かぶトラバンドが、自らの主と、それが助けた二人に代わる代わるカメラを向けている。

 宮園麗華(みやぞのれいか)。元アウロス三期生が当時の装備そのままでこちらに歩み寄ってきていた。


「……」

 彼女の方に向き直るが、武器はまだ手の中にある。

 侵入した連中――彼女はそう言った。

 だが同時に、元アウロスでもあり、ここに来るまでに報告が無かったことから隠れていたものと思われる。

 つまり、どちらの可能性もあるという事。


「ああ、安心して」

 そして俺のその姿に内心を読み取ったのか、気にも留めていない様子でそう言いながら、自らの肩に担いだ苗刀を降ろす。

「私は不法侵入した側じゃない」

 それだけ言うと、俺たちの横=分岐の先にその切れ長の目を向けた。

「私の目的はあなた達と多分一緒。この先にいるだろう不法侵入者たちを見つける事」


「あの、どうして宮園さんがそれを……?」

 有馬さんが少し恐縮した様子で尋ねる。

 元とはいえアウロスの頃の関係で言えば、宮園麗華は先輩、それも候補生ではなく正規メンバーに当たる訳で、その意識がまだ残っているのかもしれない。

 だが、尋ねられた当の本人はそこまで意識はしていないようだ。

「あなたは確か、東レテで生き残った候補生の人……だよね?」

「はい、第八期候補生でした。有馬玄といいます」

 その名乗りと、現在の立場=移籍して仕事を受けているというものを悟ったのだろう、彼女は少しだけ相好を崩した。


「そっか……。なら、アウロスの内部事情は分かる?」

「はい、多少は……」

 前提知識を確認すると、彼女はもう一度俺の方に目を向けた。

「私も元アウロスの不法侵入者たちを追って来たの――」

 アウロス関係者による不法侵入した元同僚の追跡。

 身内の不行跡の始末は身内でつけるという事か。


「――いえ、正確には違うわね……」

 それから少しだけ、彼女は考えた。

 考えたと言っても精々一拍の空白だ。恐らく何を言うかではなく、言うべきかを考え、そして一瞬で己にゴーサインを出したのだろう。


「私が探しに来たのは同期の海老沢アリア……。不法侵入の首謀者京極と、それに従ってついてきた風巻空斗。そして海風レモンを案じて説得に向かったあの子を取り戻す」


(つづく)

今日はここまで

続きは明日に

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