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9 知りたくなかったけど、知らなきゃ話にならない話


  ……ううむ ……む、むっ……


 

 少々眩しい。納屋のボロくなった板目の隙間から、朝日が差し込んでいた。


 …………オレの…… ちょうど俺の、瞼のあたりを小さく照らしている。

 現実へ引き戻されたのか。



 ――ううー~~~……、、、! ………………。



 目の前に持ってきた小さな手を見て、俺はぼんやりとした気分ながらも、何が起きたのかを把握できた。

 どうやら寝ている間に、ぼうやの意識が沈んでこちらの意識が上ってきてしまい、身体の神経を乗っ取った状態…………になったらしい。


 (ああ。そうだった……〝あの女〟が言ってた通りみたいだな)


 もし自分が予期せぬアクシデントに見舞われ生命の危機に陥った時、他人の身体に間借りして、魂を現世に留める。そうすれば元の世界へ帰還すると同時に肉体も再生され生存の危機を回避することができるそうだ。


 ただし機会は一度だけで、幾度もくり返すのは不可能らしい。

 遵って〝家主〟の意識が沈んでいると、こうして間借り人の意識が表面に出てくる理屈だ。


 (ふぁ~~……)ひとつ大きくあくびをしてから、俺は左へ寝返りをうつ。


 まどろみの中で、わき腹のあたりへ手を触れてみて、かなり肋骨が浮いていると感じた。


 この子は現在9歳から10歳くらいと思うが。とはいっても身体が小さすぎる。長期間の慢性的な粗食のせいで、栄養失調一歩手前だな。……まずはバランスよい食事量で栄養を摂って、しっかりとした骨格作りから始める。


 俺は少年の持ち物であるおんボロで小さなバッグへ手を伸ばし、中を探ってみる。


 驚いたことに、バッタの佃煮みたいなものでいっぱいだ。


 (コレ自分で捕って加工したのか?! こんな昆虫食で今までしのいできたのか。栄養失調にもなるはずだ)


 むかし飼っていたネコを思い出す。 俺が見つけるまでは周辺で昆虫ばかり食べていたらしく、やせ細って餓死寸前だったのを保護したんだが、不覚にも涙が出そうだ。


 もう大丈夫だぞ、ぼうや。


 食い物に不自由はさせない。…………宿代だってはずむぜ。今後は危険な野宿なんぞくり返す必要はないからな。大船に乗ったつもりで………………。


 ふいに尿意をおぼえる。身体を丸めた俺は、ほとんど無意識のまま両腕を股ぐらの間へはさんで考えた。


 (まだ起きたくねぇ……もう少しこのままでいたい……)そのときフト、違和感がよぎる。


 ―― んん ?!


 俺の意識は急速に目醒め、その意味するところを把握して、驚愕した。


 細い腕と細い足。ペッタ胸――いや、胸板が厚ければ好い訳じゃないし、その点フィジカル面へ力を注ぐ目算だったんだが。


 ……もっと根本的な問題がっ


 無い! 無い!? ……ついているべきモノがないっ!! どして? なンてこったい!


「おっさんのエッチ!! どこをぺたぺたさわってるのさ、すけべ――――――――っ!」


 (『 うおあッ……!? 』)


 ウルがいつの間にか目ざめ、沈んでいた意識が猛然と抗議の声を突き上げる。


「 ヘンタイ! ヘンタイ! ヘンタイ!! 」


 (『お……ばかなっ誤解だ! 俺は、俺はただ純粋に、状況を把握したかっただけなんだ!! つか。――おまえ、女の子だったのかぁ!?』)


「あったりまえじゃん!!」


 (『昨日は〝僕〟っていってたろうっ』)


「じ自分のことをなんと言おうと、勝手でしょ!」


 (『おかげで誤解しちまった! 女じゃ鍛えたってろくに筋肉もつかんじゃないかっ。どうしてくれるっ……あと、ホタカって呼べとも言わなかったっけ? オレ!』)


 ――咄嗟に俺は、現実を受け容れる事ができなかった。


 あれだけ長期間鍛え上げ、熟成させた俺の筋肉も今は分解して消え去っている。いや、細くて小さいのは、最初見てからわかってたことだ。関係ないし、何とでもなる。


 男の子だから成長期など伸びしろもあり、これからがっつり食べて鍛えれば将来は有望。――……のはずだった。だから《筋肉がつきにくい》は完全に〝彼女〟に対する八つ当たり。


 すべて俺の早とちりが原因、自業自得だ。


「これってなにさ?! よくよく考えてみりゃ、ボクが沐浴してるときや用を足してるときだって、ずぅ――――っと見てるってことじゃないさっ!」


 (『冗談じゃない! そういう時の俺は必ず意識を消したりするぞっ、エチケットだろ』)


「出てって、出てってよっ! お金も持ち物もぜーんぶ返すから、出て行け――――!!』


 (『だからさぁ、それができたら苦労はないんだってば!』)


 現実を受け入れられないのは少女も同じみたいだ。


 睡眠をとって朝になり、冷静に思い返せばとんでもないことになっていた。

 彼女にしてみればそんなところらしい。でも、今になって心変わりされても困る。



 仕方ないな。

ここまで本小説を読んでいただき、ありがとうございます。


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