47 アストラ教団・ジャコビニ流星問答
(「ミスリルランクってスゴイね。ハーフリングの言うことでも即信用の太鼓判だもん」)
(『それが疑いない今のキミだよ。フフフ……』)
「ただちに役場の人間と、冒険者からなる調査チームを現場へ派遣して確認させますので」
『俺の道案内は必要か?』
「いえ地図を頂けましたらそれは。……実のところ、上級冒険者であるあなたを見込んで、他にぜひお願いしたい案件があるのですが」
ギルマスの言う案件内容は、教会の関係者をコロンポルまで送り届けてほしいとの依頼だ。無論、護衛も兼ねてのことだろう。
『なぜ荷馬車を使わない?』
「野盗を警戒しいてチャーターできません。魔物の心配もありますし」
『なるほどな。警戒が解けるのは今回の情報――野盗団の全滅を確認してからってわけだ。ギルド所有の荷馬車はないのか』
「あるにはあるのですが……そちらは冒険者たちを乗せる方へ振り分けたいですし。人手が足りなくなるのは目に見えてますから」
『把握した。ところで、護衛は俺一人でいいのか?』
「ええ。小さくて可愛い見た目でありながら、その実はミスリルランクのツワモノという点が、おあつらえ向きかと」
(『良かったな、ウル。かわいいってさ』)
(「わあっ、えっ、ええっ!?」)
――フフフ、照れてる照れてる。……やっぱり女の子なんだな。カワイイ反応しちゃって。
護衛対象はひとりの見習い神官で、女性だという。俺は快諾した。
ギルマスは別室のドアを開くと、中へ声をかける。依頼人はあらかじめ控えていたようだ。
「それではよろしくお願いします。護衛対象はこの人です」
「ごきげんよう。はじめまして」
白杖を携え、白い法衣を着た女性が進み出る。まだ十代後半ほどの年齢に見えた。しかも
(『おお。メガネっ娘かよ。これは特定層に刺さりやすそうなレアキャラだな』)
(「……なに言ってるの? イミ不明だよ師匠」)
頭をさげてあいさつした若い神官さんは、白くてフワフワとしておっとりした感じの、優しそうなお姉さんだった。確かにこの人だけが歩いて旅するなんて、ボクが見ても危な過ぎる。
「私はこの教会の見習い神官で、シエスティア・ミィムンと申します」
『ミィムン? ムゥミンじゃないのか?』
「はあ? ち違いますけど」
(「師匠。その〝むぅみん〟ってなにさ?」)
(『まあ…………そうだ、トロルの一種かな。前にキミがやっつけたのと比べたら、かなりサイズが小さくてカワイイ感じのヤツってところかな……』)
(「ふ~ん。そんなのがいたんだ」)
『それにしてもちょっと名前が長いな。あんたのこと〝ミィ〟と呼んでもいいかな?』
「それなら《シェス》の方でお願いします。そう呼ぶ人が多くいますので」
『わかった。ところでシェス。なぜコロンポルへ単身で赴くことになったんだ?」
「実のところ……私の属する会派はいたる所で物議を醸しやすくて。お恥ずかしい話ですけれど、今度も出戻ってゆくというのが実情でして……」
『追い出されはめになったのか? ナルホドな。どこの世界でも人間関係って大変だよな。会派の名を訊いてもかまわないかね?』
「アストラ修道会です」
その瞬間ピンときた。ウルもすぐさま、俺に疑問をぶつける。
(「アストラ修道会? それって創造主教会と別の団体なの?」)
(『いやいや。あくまでも創造主を崇めたてまつる宗教組織の中にある、一会派だよ。ただ近年になって世界規模のネットワークが構築されるまで、地域色の強い独自の修法や教義を持ち異端視される集まりだったから〝アストラ教団〟なんて揶揄される事もあるみたいだね』)
(「教えの内容がくい違っていてもいいんだ?」)
(『食い違いとかじゃなく、聖典の内容を補うみたいな部分があって、外典扱いとして認められてるって具合かな。たとえば創世神話の中に、神がアストランとエルデラン――交わらぬ《二つの世界を創った》という独得な記述があったりさ』)
(「あっ! エルデランって、ホタカが生まれた異世界の名前だよね」)
(『うん。アストランはその世界と対をなす、この世界(惑星)の呼び名だとされている。これが会派の〝アストラ〟という名称の由来だな』)
引き続きウルへの説明も兼ねて、俺はシェスに質問を向けた。
『アストラ修道会って、確か魔導師協会との関係が昔から深いんだったよね?』
「ええ。有史以来らしいから長いですよね」
――じっさい太古の洞窟壁画などに、天の下した奇蹟をシャーマンが行使する様子だと考えられる図が描かれていたり、神話や伝説の中にもそうしたものが語られている。
『グリムローディアス帝国なぞは以前から、盛んに魔導師を招請しているって聞くが?』
「集めてますねぇ……」
『何をする気でいるのかな?』
「あくまでウワサですけど、エルデランとこの世界を繋げる実験のためだと聞いてますが。陰謀論の類いかも知れませんよ」
『じゃあ、例えばだが。魔法を用いて異世界への門をこじ開けることって、本当に可能?』
「…………まったくの不可能じゃないとは思いますけど。…………すべては、創造主の御心次第でしょう」




