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46 パレアンヌ村へ帰還 〜運搬手段を得て、冒険者ギルドを訪問〜

 (「パメラを殺さなくて、ホッとした?」)


 (『そうだな。同じ冒険者を殺したら、こっちが重罪人になるところだったよ。キミが止めてくれたおかげだ、ウル』)


 (「うふふ……パメラってば、最後までダガーを抜かなかったでしょ。正体を明かせば納得してもらえるってだろうって考えてたのかな」)


 (『そうかもしれない。アイツの方がずっと冷静だったか』)


 (「ホタカだって、追いつめて反応を確かめたかったんじゃないの? やたらと時間かせぎしてるように見えたけど」)


 (『ためらいはあったと認めるよ。ひょっとして、あんなふうに逃げ出してくれるのを期待してたかもな。情けない話だが』)


 (「よかったんだよ、それで」)



 パレアンヌ村に引き返した俺たちは、ギルドへの報告より先に、あのタヌキ娘がとっていた宿を探すことにした。行き会った地元民を捉まえて尋ねると、パメラの言っていた金銀亭とやらはすぐに見つかった。場末の古い木賃宿だったが、裏手には狭いながら厩がある。


 (『これがパメラが連れてたホロホロ鳥か』)――羽毛で覆われた鳥でドラゴンぽさはない。


 (「まん丸な目がカワイイなぁ。脚も太くてしっかりしてるや」)


 (『ウル。こいつは性質が大人しいし、大きさもキミの体格と合っている。火花杖や他に重い荷物があるからおあつらえ向きだ。ありがたく使わせてもらおう』)


 (「うん! でも名前はどうしようか? パメラは言ってなかったし」)


 (『それなんだが〝ドードー〟ってのはどうだろうかね」)


 この荷物運搬用の家畜は、地球でいうラバほどの大きさで、脚は長いが胴体から上の外見は大航海時代に絶滅してしまったドードーという、短い足でニワトリに似た飛べない鳥とよく似ている。

 ダチョウ同様、羽根が退化したかわり脚がより太く発達していて安定感がハンパない。


 モーリシャス島に棲息していたドードーは、体長1メートルほどで人の姿を見ても警戒せず、寄って行っても逃げ出さなかったため、絶好の食料とされ瞬く間に獲りつくされてしまった。


 疑うことを知らない生物を人間が絶滅させた経緯には、忸怩たる思いがある。


「ドードー、どうどう……」


 優しく声をかけながら、ウルは背中から短い尾羽まで反復してなでた。


 (『ドウドウ・ドウドウ?! って、……なんだか紛らわしいねぇ』)


 (「名前は師匠がつけたんでしょ!」)


 こちらが言い合う最中ドードーはゆっくりと足を曲げ、体を低めて乗りやすくしてくれた。

 性質は穏やかで素直な子らしい。

 これが駱駝らくだだとしたら、ご機嫌をとってなだめるのも一大事だろう。


 ――馬でさえ、ちょっとしたことですぐヘソを曲げて体を揺すったり、乗りなれない人間を馬鹿にしてわざと荒々しい態度を取ったり、指示を無視して突然走り出したりするからなァ。


 図らずも入手できた新しい運搬手段の背中にまたがり、俺たちは練習をかねて次の目的地へ移動する。


 パレアンヌ村の冒険者ギルドは役場に隣接する建物の中にあった。

 時刻が昼間のせいか冒険者の姿はまばらで、やさぐれた雰囲気を漂わせる者はいない。

 田舎に近い環境で人間も擦れていないようだ。


 俺たちは受付で野盗のアジトを突き止めた件、魔物である〝影喰い〟の出現と、その魔力で惑わされたコボルトどもの異常行動を見届けたことを報告に来た旨を伝えた。

 最初受付嬢は驚きの表情を浮かべたものの、すぐにお待ちしておりましたと応じ、事前に別の女性冒険者が同じ件を報告書で申請していて、


 「後で別のパーティー・メンバーが詳しい追加報告をする。ギルドの要請があれば、その者自身が現場までの道案内をするか、でなければ詳細地図を提出する手はずニャ」


 そう告げて去ったそうだ。


 (「師匠、パメラのことだよね?」)


 (『言うまでもない。自分も報酬を得られるように申請したんだろう』)


「すぐにギルドマスターに伝えます。直接報告していただけますか」

 言い置き頭を下げて、彼女は慌ただしく奥へ消える。


 しばらく待ち戻ってきた女に促されるまま、俺たちは階段を上り、ドアの前に立った。


「お連れしました」


「どうぞー」


 返答の口調からフランクな印象を抱く。中へ通ると、役所の公務員みたいな服装のまだ若い男が出迎えた。どうぞ、どうぞ、と応接用のソファを勧める。

 どうやらこの男は役人と冒険者ギルドの長を兼任している奴らしい。俺(たち)が座ると、事務員の女性が紅茶と菓子を出してくれた。待遇が良いなと感じた。


「いや、事前に報告こそあったのですが、その女性冒険者の方はシルバーランクと自称しながら、身分を証明するものはいっさいお持ちでなく、報告書も簡易だったもので。内容が大事なだけにイタズラとも考え、あまりアテにせず待っていたのですが……」


 男は一呼吸溜めて――


「ミスリル級のゴルゲットを持つ方が現れた以上、報告内容に疑問の余地はありません!」


 なるほど。受付嬢の「お待ちしておりました」にしては驚いた表情、半信半疑だったワケだ。パメラのことをアテにできなかったのは、ここのギルドでも同じだったらしい。


みなさん読んでいただき、ありがとうございました。

誤字のご指摘がありましたら、ぜひお願いします。

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