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45 パートナーの正体判明

「 だああ――――――――――ニャ、もうっ!! めんどくさいニャ!! 」


 女は自分の頭髪の中へ指を入突っ込んで手を引き抜く。指先に鋏んだものを素早く放ると、木の葉が舞う。


 〈 パコン! 〉

 紙風船を割ったみたいな破裂音とともに、パメラの周囲は白い煙に覆われ…………――――それが晴れると、明らかに獣人の特徴をそなえた別者が立っていた。


 『 おまえ、人間じゃなかったのか! 』


「いや~~~、メンゴメンゴ。騙したおわびに相手が見えやすいのが良いと思って、明かりを燈したニャ。でも冒険者なのはホントだニャ」


 パメラの本当の外見はグラマーなヒト種の成人女性ではなく、まだ少女といってもよいくらいの年齢に見えた。そして頭部にはぴょこんと丸っこいケモミミがあり、これもまた特徴的な丸みを帯びた太めの尻尾が生えている。

 ただし結局、胸は大きなままときていた。


 『おまえ、ダックスメンだったのかよっ!』


「いっししし……ソッチの件もメンゴメンゴ。いやあ~~、相手が相手だから、こっちも変化できるやつを所望って依頼があって。アタイが出張ってきたんだニャ」


 女の半獣人。しかも狸系統ダックスメンの冒険者は始めて見たが、ウルも同様らしい。


 (「ボク、こういう種族のヒトを始めて見たよ。ホタカ」)


 (『キミは人間の孤児院にいた。エルフ族や自分のような小人族ハーフリングといった亜人系種族しか、馴染みがなかったんだろ。あれは半獣人だから』)


 (「このお姉さんも、耳とシッポ以外は人間とほとんど変わらないけど?」)


 (『〝半獣人〟っていうのは獣族と人間の特徴を持つ、きわめて広い亜種族の総称だからね。彼らをより人に近い外見を持つの種族順に並べたうえで比較・分類し、議論することは昔から盛んだったみたいだが』)


 (「ふうん。……人間さまって、ずいぶん偉いんだね」)


 (『むっ……』)

 ――確かに。人間中心主義の国や地域ではどうしてもヒト種をヒエラルキーの頂点に据えて、基準にする傲慢な発想をしがちだな。…………よし、大したフォローにはならんかも知れんが。


 (『でもね、人間と殆んど変わらない獣耳と尻尾があるだけの種族を、ゴブリンやオークといった魔物系、あるいは獣毛で全身を覆われた獣人たちと同じカテゴリで括る事に関しては、違和感や疑問を抱く者も少なく無いんだよ』)


 俺も、個人的には例として――《キャットピープル、バニー・スロゥプ、ダックスメン》などといった半獣人は〔亜人〕と分類している。

 理由は獣耳と尻尾がついていること以外、見た目の特徴や言語の習得能力もヒト種と比べてまったく遜色ないゆえだ。


 (「ゴブリンは肌がつるんとしてヒト型の種族だけど、魔物系って?」)


 (『ああ。ゴブリンやオークも、頭部の特徴や性質も含めより動物的なせいかコミニュケーションが取り辛いし、心も通じ合うことがないだろう? しかもヒト種の女を繁殖に使う習性が悪魔的でおぞましいとして、一般的に【魔物系】と分類されているんだ』)


 (「まあボクも、コボルトくらい動物の見た目に近い場合は分らないでもないよ」)


 (『そう。今回のコボルトに至っては全身が獣毛で覆われ、二足歩行することを除けば人間との類似点はほぼ見当たらない。そのために冒険者界隈でも、これら種族を〔半獣〕と称して〔亜人〕とは区別する場合が多いと感じたな』)


 ただ、これは大変複雑な問題で分類は難しい。リザードマンは見た目まんまの大トカゲだが高い知能を持ち言語を解すし、勇者パーティーには黒豹の頭を持つ僧侶枠がいると聞く。

 すると身をひるがえしたパメラが一瞬のうちに巨木上へ跳び立ち、こちらを見下ろしながら言った。


「そいじゃあウ……ノルちんだったかニャ。ウチはここらでお先に失礼するニャ」


 『おい! どこへ行く気だ』


「少しヤボ用ができてウチは今すぐ所属ギルドに引き返して、パーティー仲間たちと合流しなきゃ。だからもうお別れだニャ。役場への報告はノルちんにお願いするニャ」


 『あんたを見捨てたりはしない、一緒に街へ連れて行って良い所へ案内する。とか言ってなかったかね?』


「ニヒヒヒヒ。記憶力が良いニャア。…………約束をたがえて街まで一緒に行けないかわり、ノルたちにはいいものを譲ってあげるニャん。ウチが乗ってきた運搬用の〝ホロホロ〟ニャ。パレアンヌ村の〔金銀亭〕って安宿へ預けて繋いであるから、可愛がってあげてニャ」


 ――このタヌキ女、俺たちの人格が別ものだって、すんなり受け入れちまったみたいだな。


「じゃーねー」


 (「ホタカ。ちょっとボクと替わって!」)


 (『ああ』)


「 パメラ、ボクだよっ……ウォルフェ! いろいろありがとね! 」


 パメラは振り返った。


「ウルちん。また会えるのを楽しみにしてるニャ。ビクセン郡に入ったら、シエルレオナ市内のチェルシィへ来るとよいニャ。楽しい街だから。ギルドで冒険者登録したなら、またきっと再会できるんじゃないかニャ」


 ニヤリと微笑んでから再び背中を向け枝を蹴って飛び、ポンと例の煙に包まれると同時に消えてしまった。


 (『あいつ……俺を振り切っていつでも簡単に逃げられたんだな。これ見よがしに去って行きやがった。こずら憎いヤツだ』)

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