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43 パートナーは気分の切り替えも早かった……

 (『奴らはこの場所にかなり執着している様子だった。…………どうやら当たりかな』)


 しばらく洞窟の入り口で中の様子を窺う。湿っぽい苔の匂いが漂うが、危険な獣が潜んでいるような異臭や魔物の気配はしない。


 右腕ひとつで火花杖を抱え、左手に持ったペンライトでごつごつした地面を照らしながら俺は慎重に奥へ進んだ。すると両ぎわ岩壁に錆びた剣や木剣が立てかけられ、イス代わりにでもしていたのだろうか、麻布を積んだ木箱などが多数置いてある。


 さらに進むと、黒っぽい布を用いて遮蔽されている箇所へ行き当たった。仕切りで奥が隠されていて、どうやらこの向こうが終着点らしい。

 そこで足下に丸みを帯びた光りの断片が散らばっているのに気付く。照らして見ると、それは無数のナーロ金貨や銀貨だった。


 俺は少しめくって中を照らして見たあとで、引きちぎって全体を露わにした。


 大量の物資がライトの光に照らし出され、想像以上に多額の金品が奥まで堆積されているようだ。その中でも手前の宝石や貴金属類だけが大きく乱れ、足下に崩れ落ちている。どうやらコボルトたちのイタズラで荒らされたらしい。


 (『ご覧よウル。ビンゴだぞ』)


 (「すごい。……これならパメラの依頼人も納得するよね?」)


 ――そういえば、コボルトの性質にキラキラ光るきれいな物に興味を引かれるってのもあったな。まるでカラスみたいに…………これがやつらからしても共有のお宝だったのか。


 ( うっ?! )


 俺は照明をかかげたまま後ろを振り向く。


「 ヒヤッ!? ニャにコレ! ……ま、まぶしいニャ! 」


 『おまえ!?』


 ライトを顔に浴びたパメラが両腕を目前に上げ首をすくめ、光を遮る姿があった。


  (コイツ、いま黙って後に接近して来てた?! 危ねえ危ねえ。……ヒヤリとしたぜ)


 背後に微かな気配を感じての、本能的な動作だった。

 女の手には、手提げのランプがあった。


 『お前、そのカンテラどこから持ってきた?』


「ン? コレ? どこも何も、この先の箱の中にあったよ。つか、ウルちんは中を確かめようと思わなかったのかニャ? ………………それよりも、ウルちんの持ってるその明かり」


 俺が手にするLEDライトを指して女が言う。


「小さいのにとっても明るくて便利そう。それはニャに?」


 『まあ。……これは俺だけの特別な魔導具さ』


「ふ~~ん。スゴイニャ~~~、欲しいニャ~~~~~」


 言葉通りの物欲しげな顔をして覗き込んでくるが、俺は掌中に包み隠す。


 『あの場から動くなと俺は言ったよな? 憶えているか』


「モチのロンだニャ。でも一人で森の奥へ進むのは危なっかしぃし。心配になってやっぱり追いかけてきちゃったんだニャ」


 『マッツとの再会が中途半端に終わっちまったろ? ショックで虚脱状態に見えたが』


「うん。…………だけど、こう見えても冒険者だし」


 パメラは曲げた右腕の力こぶに左手をそえるポーズをして見せ

「仲間を放ってはおけニャいしね!」そう言い、ニヤリと笑う。


 『ずいぶんと立ち直りが早いもんだ』


「ん~~~。……ウルちんのおかげで、あの子はあっちで幸せに暮らしているのがわかったから。ありがとうね、ウルちんっ」


 『…………洞窟の入り口で、中へ呼びかけなかっただろう』


「ニャ。ウルちんが居るとは限らないし、あの場では特に必要を感じなかったニャ」


 『ほう。それで俺の背中を認識した後、なぜ声もかけずに近づいてきた?』


「かけようとしたけど、その直前にウルちんが振り向いたから。かけそびれて…………」


 (ふん。……一応破綻は無いが。ことさら音をたてず接近してきたのも、偶然だってか?)


 こっちの質問をとっさの言い訳でよく凌いでくる。ああ言えばこういうってやつだ。


「あれれっ?! ウルちん、後ろのソレって!!」


 俺の頭ごしに視線を移したパメラが、わざとらしい素っ頓狂な声を上げた。横をすり抜けて盗品の山の前へ立ち、嬉々としてはしゃぎ、声を張り上げる。


「うわあ、なんてことニャ! これぜんぶ野盗が奪った金?! コボルトを追い払ったら、とんでもない財宝を発見してしまったニャ! どうしよう。ウル、どうするかニャ?!」


 ――コイツ!


 『………………どうするも何も、決まっているだろう。一部始終をパレアンヌの役場へ通報して、冒険者ギルドにも報告を入れるさ。なるべく多方面へ事を公にし、誰も財物を中抜きしたり、金もネコババできないようにする。後に被害者のもとへ返還できるかどうかは、俺たちのあずかり知らぬことだ』


「……は。……だよニャ~~~~~~、アッハハハハ……はあ~~~~~、…………」


 俺は自分のナイフに手をかけ、内心で告げた。


 (『ウル。どうも今から嫌な場面が展開しそうだから、意識を消していてくれないか?』)


 (「ええっ!? なにを言っているのホタカ? それって、どういう意味?!」)


 ナイフを抜く。


「わニャニャ! まさかウル、ウチの口封じして、お宝を独り占めするつもりニャ?!」


 『本音が漏れてるぞパメラ。ここの盗品はすべて被害者に返還するべきもので、埋蔵金でもなんでもない。俺を抱き込もうとしたんだろうが、キッパリお断りするぜ』

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