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4 ブラックパーティーの後始末です

 俺は急に瞼が重くなって、意識が引かれ始めるのを感じた。


(「師匠、すごいや! 流れるような動きで一気にキメちゃったね!」)


 (『ウル、とても眠い…………あとは……頼んだ………………』)


( 「ええ? なに!? いきなりどうしたのさ、師匠」)


 (『夜中に活動した、せいか……やたらと眠い、ん、だ…………よ……』)


(「ししょ……、ホ、タ、カぁ――――――――――――――――――!!?」)


 自身の身体の主導権をイキナリ返還されてしまい、以降の処理はボクに丸投げ。


「そろそろおさまったのかな?」


 悲鳴が聞こえなくなり、外の状況が気になってきた。ボクは翼の下を這って進み、羽根の隙間から覗いた。


 (よく見えないなぁ)今度は杖先を突き出しつつ、上半身も出してみる。


「ひいえええええええええ――――――――――――――!!」


 そのとたん、異様な叫び声を上げながら何か近づいてきて、反射的に杖口じょうこうを向ける。目の前に身を投げ出し転げたのは、なんとあのジュペルだった。


 一番経験の浅いであろうヤツが、すばしこく最後まで生き残っている。

 さすがは期待のルーキーだ。


「ハヒッ、たっ……たすけて」


 空気を読む名人は腰でもぬけたのか、涙と鼻水と泥にまみれた顔で這い寄ってきて、クズと呼んだボクに哀願した。食い残しの存在を目にしたワイバーンが一羽、背後から迫ってくる。


「ドラゴンは、なぜ強いか知ってる?」


「はっ? …… ど、どして?」


「 最 初 か ら 強 い ん だ な コ レ が。――だってさ 」


 立ち上がったボクは杖を構え、おもむろに引き金を絞る。


 轟音と盛大な火花が炸裂して反動は肩を蹴りだし、杖全体がななめ頭上まで跳ね上がった。ワイバーンはなぎ倒されるかたちで地面に叩きつけられる。


 新入り冒険者は、左耳を押さえつんのめり、声もなくへたり込んでしまった。


 再び幼鳥ワイバーンの死骸のそばに身をひそめたボクは、サイドハンドルを起こしスライドさせて空の薬きょうをはじき出し、素早く反復して戻す。

 一連の動作で新たな弾が薬室へ装填され〝術″はいつでも発動できる。


 あらためて周辺を確認。閑散とした状況に戸惑う。


 パーティーメンバーは、そのほとんどが飛び去ってしまった。


 どうしよう? この後始末は。ギルド長への報告、信用してもらえるかどうか…………。


 そんなボクの目に入ったのは、近くの地面で団子虫状態でいる期待のルーキー。ボクはつま先を使って腰のあたりをつついた。


「はっひいっ!?」


 頬が砂まみれの顔をあげる。耳が遠くなっているだろうから、なるべく大きな声で言った。


「 どーするの? ボクとギルドまでもどって、一部始終を証言する気ある? 」


「ひひゃい! 一緒につれていってくださひ! 見捨てないでっ…………」


 空気を読む名人。変わり身も瞬速、やっぱり期待の新人ルーキーだ。


 当日のうちにギルドへ帰還したかったボクは、新しい荷物持ちをせっつきながら道を急がせた。

 強行軍の甲斐あって、なんとか日没までわずかという頃合いにビクセン郡リントンの街にあるギルド本部まで到着できた。


 報告書類の裏づけは、生き残りの新米に証言させて承認を得る。


 一応、この新人冒険者による殺害謀議などへの関与はなかったみたいだ。

 つまりやとったボクを始末して、バノンらが身包み剥ごうとしていた計画は知らなかったということ。本人は連れ帰ってからもすっかりしおれた様子で、半分死人みたい。


 ボクの存在がなかったら、自分が追い剥ぎの犠牲者になりかねなかったし、無理もないか。


 せっかくの期待の新人も、このまま冒険者やめちゃうんじゃないかな?


 知らんけど。


 受付まで呼ばれて、今回の報酬について算定額の表示を受け、引渡し方法を選択して告げる。手続きを全部終え手形をポシェットへ収めていると、受付のおねえさんに告げられた。


「ウォルフェさん。直接あって御礼がしたいとギルドマスターが申しておりますが」


「はあ……そうなの。でも、どうして?」


「ええ……」それからお姉さんは、声を潜めて続ける。


「実は今回のオブジェクトがベテランの上級冒険者で、周りへの影響力とか発言力も強かったんです。

 でも外部の人であるあなたが全部処分してくださいました。これでギルドの一角を占めていた闇を一掃できたと、ギルド長をはじめ商工組合までが大変喜んでおりまして」


「ナルホド(でもそれって、ボクらだけが一身に恨みを引き受けたってことじゃ?!)」


「どうでしょう?」

 おねえさんはさらに顔を近づけて、耳打ちするみたいに告げた。


「私も個人として喜んでます。……普段からすごく嫌な人たちだったもので」

読者の皆様へ。

ここまで読んで頂いてありがとうございます。

本日最後の更新は17時頃になります。


この小説を読んで「悪くない」「長編でやってみ」

と少しでも思ってくださったら、本文下↓の☆☆☆☆☆⇒★★★★★評価やブックマークで応援して頂けますと幸いです。


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引き続きよろしくお願いします!

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