35 パートナーは立ち直りが早くてしぶとい
「ホントかニャ?!」
『ああ。俺たちみたいな心ある存在はみんな、神仏が身を分かって解き放った分け御霊だからな(って、俺の両親の葬式のときやって来た坊さんが言ってた)
俺たちの命の本質は、神様がいる限り同様に永遠不滅の存在なんだ』
「それじゃどうして病気とか、争い事や食べ物がなくて飢え死にしそうになったりとか苦しいことばかりの現実界に、ワザワザ生まれてきちゃうんだニャ?」
『魂を磨く修行のためらしいぜ。向こうの世界では、魂みんなが同じ分け御霊だってことを知っているものだから全員が兄弟で、互いのことを第一に思いやるから、争いごとが全く無いんだ。要するに、天国ってやつだな。それだけに居心地が良すぎて刺激もなく、ずっと其処にいたら全然成長や進歩がないだろう?』
「進歩なんて要らないニャ! …………そこで仲良く一緒に暮らせれば、充分幸せニャ」
『……だよな。だから向こうの世界でも、人生の旅っていう修行に出るのをイヤがる者達が、少なからず居るらしい。……どうだ? 可笑しいだろう?』
大きな間違いを犯さずに人生を終え、すんなり戻って来られたら問題ないが、もしあの野盗の若造みたいに煉獄へ落ちるような失敗をしでかせば、現象界にいる身内も全員で救助へ回らにゃならんとか。もちろんサポート連中はその間、修行の予定表が差し止められるらしいから大変だ。
宗教の世界観って、けっこうよく創り込まれたファンタジー小説の設定みたいなものか。
(「ありがとう師匠」)
(『んっ?』)
(「パメラを助けてあげたかったんだよね。あのままだったら、ずっと弟さんの最後の姿が忘れられずに自分を責め続けちゃうだろうから」)
(『キミから礼を言われることじゃあないよ。縁あってパーティーを組んだ仲だし、メンタルのフォローもサービス。アフターケアの内だよ』)
(パメラが本物の冒険者かどうかは知らないが)――気持ちが救われ吹っ切れたおかげで、今後の仕事をヘマしないでくれればこっちとしては万々歳だ。
確かにパメラの語った過去話は事実かもしれない。だがそうだとしても、コイツはまだ何か隠している事がある。これはまったく俺の勘にすぎないが、真実をすべて明かしていない気がしてたまらない。
それは一体なんだ…………?!
「なんだか気持ちが楽になったニャ。慰めてくれてアリガトね! ウルちん」
――うっ??!
考えていたところで、また女が肩を寄せてきてウルのホッペにキスしようとした。俺は思わず表面意識に出て肘を挙げてパメラを押しのける。
『だぁからいちいち抱きつくんじゃねぇっ! この酔っ払いめ!!』
「ああっ! まァ~~~た口調とか態度が替わったニャ?! ウルちん、これはいったいど~~~したコトなんだニャ。ゼヒとも解明したいニャ♡」
――メソメソ泣きながら殊勝な態度で聞いていたかと思えば、すぐこれだ。立ち直りの早いやつ。…………こういった部分が今一つ、この女を信用しきれない要因だろうな。
つい長々と話し込んでしまい、いつしか夜半近くになってしまった。
良い子はとっくに寝る時間だ。俺は少女の意識と内心で申し合わせた。
(『ウル、最初の夜の見張りは俺とパメラがやるから、キミは早朝までぐっすり寝るといい。……交替で眠ることができるのがこっちの有利だな。連中は頭数が多いし、24時間攻めれば楽に仕留められると勘違いして押し寄せて来るかも分らんぞ』)
(「なンか、楽しそうだね……」)
(『とんでもない。安眠妨害されるうえ、命がけなんだよ、一応』)
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…………
――ウル。
ウル、ウル。…………
エマージェンシー・コール。
お嬢さん、早く起きてくれ。緊急事態なんだ。
閉ざされていたボクの意識は、遠くから呼びかけてくるホタカの声で呼び覚まされた。
(「……なぁに……?! どうしたの? ホタカ…………」)
(『お客さんがいらしたらしい』)
まだボンヤリとした気分で出入り口へ目を向けると、ドアの下から毛むくじゃらの手が伸びてきて、爪でバリ、バリ床をかきむしるのが見えた。
「 うわっわわわ!! 」
ボクは一気に目が醒めた。
――ウルの叫び声を聞いた俺は、とっさにソイツの黒い手の甲を棒で叩き潰した。高く短い鳴声を残して、ブッシュを掻き分ける複数の音が遠ざかってゆく。




