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31 木こり小屋ベースキャンプ確保と異世界の料理ショー

 『ふん。かなり大手の商業ギルドだ』


「そう。だからモチロン金品は奪い返したいけど、自分たちにチョッカイ出したらどんな目に遭うか、思い知らせてやりたいって気持ちが大きいみたいだニャ」


 ――おっかねぇ。商人ってよりマフィアみたいに好戦的だ。


 『それで俺たちの仕事としては、野盗の動向を把握して速やかに報告する。もしヤツラの金蔵を付き止められたら別途で追加料金を出す。それでいいんだよな?』


「そのとーり。後は情報をもとに商会がどうするかは、ウチらに関係ないニャ」


 (〝サーチ・&・デストロイ〟の最初の部分を俺たちに担わせ、後は殺人すらもいとわないパーティーにでも依頼するのか? ……だとしても、上級冒険者のいるパーティーは絶対に受けんだろうな。)


 いくら野盗連中が魔物やモンスターと同等あつかいとはいえ、人の命を奪う仕事というのは決して積極的に取り組みたい案件ではない。それをあえて請け負う者は、金と引き換えならどんな汚れ仕事でもやる、ベテラン揃いだが等級の低いヤバイやつら。と相場は決まっている。


 やがて一時間ほど進んだ俺たちは、ブッシュの密生していない場所に設けられたログハウスを見つけてベースキャンプとした。

 巨木の根元の傍らが小高くなった所に位置していて、比較的開けて見晴らしが良い。築年数はかなり古いようだが、木こりが道具小屋兼休息所としても使っていたらしく、頑丈でしっかりしている。


「モンスターや獣やらに、内部を荒らされた痕はないみたいだニャ♪」


 『それは食べ物の匂いがしなかったせいだろう』


 小屋の木材は真っ黒になっていて表面を焼いたらしい。建てたばかりの頃は焦げ臭く、時を経過して周囲の匂いと同化したようだ。物は見当たらず、最近まで何者かが使っていた痕跡もなかった。無断で使っても特に問題はないだろう。

 暖炉はなく、そのかわり部屋の中央には囲炉裏があって、日本で生まれ育った俺にとっては馴染みが深い。屋根の真ん中に煙突があったのは、このためらしい。


 (『懐かしいな、これは』)


 (「珍しいじゃない。部屋の中で焚き火をするの?」)


 (『そうだな。この囲炉裏の火を囲んで食事を摂り、楽しい会話を交わす』)


 とどのつまりは夕食用の食材確保だ。


 俺は投げナイフが得手だというパメラに協力させて、鳥のような羽毛で覆われた、オオコウモリと良く似た外見のバー・バットと呼ばれる翼類動物を2羽捕獲した。

 七面鳥サイズであるため身のボリュームは充分で、食いでがある。直ちに血抜きをおこない、あらかじめ臭みを予防しておく。


 木こりの休息小屋を確保してから、ベースキャンプとして最低限使える状態にしているうち。

日が陰り、辺りは急速に暗くなってきた。まだ外は夕方前のはずだが、ここは鬱蒼とした原生林の中だから、少し太陽が傾くとこんな様相になる。


 とにかく腹が減ったんで、俺たちは小屋の中で獲物の仕込みと調理に取りかかった。

 まず毛を全部むしる。むしるのは食べる直前でないと、味が落ちる。


 済んだら逆さにして両翼を自分の足で固定した上で下半身を引っ張って胴体を引き裂いてしまう。残酷で荒っぽいやり方だけど、ウルには目をつむっていてもらった。


 手羽・腿・胸肉やモツなど、食べられる部分が容易に剥ける。空鍋に入れて少々焦げ目がつく程度に炒って、それから水を加え強火で煮る。

 後にキノコや野草も投入してぐつぐつ煮て最後に魔王岩(塩)を振って仕上げた。

 この〝岩塩〟は周知の通り、九十年ほど前に先代勇者が倒したベルクサタナの体が神威の光を浴びて、塩の塊に変化したものだ。



 ――さあ、出来上がりだ。はよ食え。…………うまいか? うまいかっ!?



「 うはぁっ! こりゃすごくイケるにゃ♪ 」


 (「 美味しい。旨味が濃厚だね、師匠! 」)


 『 だろ。出汁ダシが違うんだダシがっ! 』


 やがて日没の時間を迎えて夜中になった。


「いやぁ~~~~~、喰った喰った。もう満腹。……幸せだニャ~~~」


 自称冒険者は心底満足したように、タイコ腹をさすって一息ついている。


「ウチはがっつり成人だから、コイツを頂くニャ」囲炉裏端へ胡座をかいて、どこからか取り出した酒瓶を呷り始めた。


「未成年のウルちんにはこっちの方を提供するニャ。いくらでもお食べ。おいしい乾し肉。ウチにとっては酒の肴だけど。シシシシ……」


 『おまえ、まだ呑み食いする気かよ?』


 女はニヤけ面をこっちへ向け、無言でまた酒をあおった。


 (「……これ、何の肉だろう?」)


 (『たぶんバロッファ(牛とよく似た家畜)だろう。何れにしろ、バッタの佃煮よりは栄養価はずっと高いし、せっかくだからよく噛んで、胃袋に入るだけ食べておこうよ』)


 (「う~~~ん。ボクはもうお腹いっぱいだから。…………そうだ、いま食べずに、緊急用に少しだけキープさせてもらおうかな」)


 (『ふふふ。おやつ用じゃないのかね?』)



「んぐんぐ。……プハァ~~~~~~~……、ヒック」



 早くも酔いが回り始めたのか。

 思った矢先、パメラが突然ぶつける勢いで身を寄せて、その胸がウルの頬に触れる。

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