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27 女冒険者パメラ(自称)は、本当に冒険者か?

「ウチの名はパメラっていうニャ。アンタは?」


 『ああ。俺はウォルフェだ。……〝ウル〟と呼んでくれ』


 ところでアレは? 親指で人だかり方向を示して尋ねると、パメラは答えた。


「屋篭りがおこってるんだニャ。赤ん坊が人質に取られちゃってね。犯人は野盗の片割れらしいニャ」


 (『う~む。……面倒な場面に出くわしたもんだ』)俺は期せずしてぼやいていた。


 (「師匠! 赤ちゃんが危ないんでしょ?! このまま通りすぎるの?」)


 ―― おお、ウルが自ら沈黙を破った!


 だよねぇ。キミならきっとそう言い出すんじゃ、と思っていたよ。……トホホホ…………


 (「お母さんはどこにいるんだろうか?」)


 (『まあ、現場近くでギャアギャア泣き喚かれても、犯人が逆上しかねないから。遠ざけられてるんじゃないかな』)


 (「なんとか赤ん坊を助けられない? この〝火花杖〟なら、遠くの的へ当てるのも簡単なんでしょ。『エンシャセイにも優れてる』って言ってたよね?! 悪党の足だけ撃つとか」)


 (『キミって案外と過激なコト言うんだな。人間相手じゃ威力が強すぎてオーバーキルだし、第一、人質に当たったら大変でしょ』)


 そもそも屋内にいるからこその〝屋篭もり〟であって、狙撃は不可能。初めからむちゃ振りなんだ。


 (「盗賊なんてひどいやつらだし、今だって赤ちゃんを楯にするなんて。憎たらしいよ」)


 (『【野盗】ね。盗賊は街中で行動する別者枠だ。人を殺したり女性に乱暴する外道働きをしないし、高利貸しや悪徳商人・貴族しか狙わないから、過去には義賊と称えられた者も多い。野盗は徒党を組んで襲撃するヘタレだが、盗賊は単独で隠密行動なのも特徴的だな』)


 〔元盗賊〕などは侵入・諜報といった忍者同然のスキル持ちであるがゆえに、冒険者ギルドでも特殊技能職扱いされ、重宝がられる存在だ。野盗と紛らわしいので〝怪盗〟とでも呼称を変更した方がよいかも知れない。

 決して触れようとしないが、俺と出会う以前のウルは旅の途中でかなり酷い場面に遭遇したらしく、野盗の類いを心底嫌悪し恐怖もしている。


 この世界でのウルは底辺だ。小人族で天涯孤独、しかも9歳女児ときては戦闘能力最弱だ。

  

 そんな少女が指一本で巨大なモンスターを斃す経験をした。

 万能感を覚えることで脳内麻薬ドーパミンなどが分泌され自家中毒になり、気が大きくなっているんじゃないか? ……頼もしいと思う一方で、安易に危険へ飛び込もうとするのは良くない、との懸念もある。


 ――だがしかし、こうなると知らん顔を決め込むわけには行くまい。……あれだけ高難度な対トロル零距離撃破を成し遂げたんだし、彼女も度胸が据わっただけかもしれない。


 俺は仕方なく段取りを提案した。今回も結局、零距離作戦になった。


 (『まずは食い物を差し入れるフリをして近づく。相手の隙を見て俺が赤ん坊を取り上げ、外へ逃げる。もし格闘になった場合は叩きのめして終了』)


 (「うん。ボクはハーフリングの子供だから軽く見られるのには自信があるし、相手は油断するだろうからうってつけだと思う!」)


 話が早い。俺はこの場で唯一人の責任者である警備番ガーディアンに協力を申し出た。低い姿勢で現場の様子を窺う奴の背中をぽんぽんと叩く。


 『もし手詰まり状態なら、俺が何とかするぞ』


「はあ?」


 振り返った〝駐在〟は気の抜けた返事をして、俺(たち)の頭の天辺からつま先まで眺め回してから、怪訝そうな視線を戻した。子供がなに言ってる、とでも思ったんだろう。


 『任せろ。俺はミスリル級冒険者だ』


 ゴルゲットを示して告げた。周囲からも、あまりに予想通りな反応とセリフが返ってくる。


「本物かいっ?!」 「大体おまえ、幾つなんだよ?」


「……ハーフリングみたいだな」


 『くだらん詮索はあとだ。子どもの救出こそ喫緊の課題で最優先事だろう。どうする?』


「でも、あんたが本物だったとて、上級冒険者に払えるような報酬なんて無ぇよ……」


 『金は不要だ。(ギルドを通していないから)そのかわり誰かライスボールを二つばかり用意してくれ。あとは信頼して任せてくれりゃいい』


「おう、合点だ! ちょっと待ってな」――――


 周りの男達の一人がそう言って、どこかへ走ってゆく。弁当屋か女房のところへでも行くのか? その直後、さっきのパメラが声をかけてきた。


「ウチも手伝おうかニャ♪」


「 いらないよ! むこうへ行って 」


 ――あっ! またもやウルが出てきた。


「即答はないニャン! ウチも冒険者なのにぃ~~~~~~~」


「冗談でしょ。じゃあ、ゴルゲットを見せてよっ」


 (『ウル、もういいよ。彼女には俺の口からはっきり言ってやるから』)


「それが…………所属のパーティ事務所に忘れてきちゃったニャ」


 『ほ~お。じゃあ、今すぐとって来い』


「それが遠くの町にあるからぁ~~~間に合わないニャ♪」


 女はてへぺろして言う。


 ――、~~~~~……。適当な言い訳を。唯一の身分証を忘れる冒険者なんぞいるかよ。

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