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24 モンスターを撃つ―――初めての血闘!

 背中を曲げ頭を低める姿勢で覗き込んだ状態のまま、開いた口腔内下部中央に盛り上がりが形成される。

 カメレオンほど長大ではないが、粘着性の高い唾液をからめた舌が跳び出して対象を捕食する寸での特徴を確認。


 時が満ちたと見える。


 瞬間、俺は小さくもハッキリとつぶやいた。



 『 撃て 』



 凶暴な爆裂の咆哮。

2,900フィート/秒・音速マッハ2・6で打ち出された弾速――

 空気抵抗を含め880メートル飛1.428秒の灼熱した弾頭は、華と咲いた大火球を後方にトロル・モンスターの口中へ飛ぶ。

 最大到達距離4000m以上を飛翔してもなお対人殺傷力を残す初速2900/fpsのダイナマイト弾が、延髄まで数メートルの近距離で炸裂した。


 着弾で粘膜は即蒸発。細胞を挫滅しつつ高回転のエナジーを放射状に発散、周囲組織を圧壊し巨大な空孔を形成・螺旋傷害させながら、延髄中核を破砕断絶。

 なおも生体中の水分が超音速の衝撃波となって体内を投射、周辺組織の圧排を肥大させ巨大な銃創を形成して、体外へと貫通する。


 トロルは両膝を折り曲げたまま、正面からの打撃に圧倒され軋み音を立てながら傾き、後頭部と背中を地面へ叩きつけ、地響きを立てて轟沈した。


「 わ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ、あ、あ、あっ、…………!! 」


 ハーフリングの少女はたまりかねたような叫び声をあげ、緊張を一気に解き放つ。


 (『 やったやった! やったぞぉ! ウル、よくやった!! 』)


 仰向いた巨体はいったんはビクビクと大きく、全身をゆっくりと波打つように痙攣を始めた。怪物は絶え絶えの息を吐き出すたび、赤黒い体液を低めに噴射しながら指の動きも徐々に弱めて全身が毛ほどの動きも見せなくなる。


 微かに

 〈クル、クル、クル、ルルル……〉

 音が聴こえていたが、それも鼓膜で拾えないほど小さくなって、やがて途切れた。


 死の静寂が周辺を支配する。


「ゴホゴホッ、ゲホッ、ハア、ハア、ハア、ハア、ハア、ハア、ハア、ハア………………」


 (『もう大丈夫だよ』)


「ふぅ~~~っ、………………」


 ウルは深く息をつき、へたり込んだまま頭を垂れる。


  ――〈トク、トク、トク、トク、トク……〉

 激しかった鼓動の勢いが次第に落ちついてきた。


  俺は自らの恐怖に耐え抜いた彼女をねぎらう。


 (『重圧プレッシャーに負けずよく留まってくれたね。えらいよ』)


「…………、……、……………………」



 ――ありがとう。そしておめでとう。


 キミは、本当に勇気のある子だ。


 …………………………………………………………………………




「何がどうなったんだ」


「落雷みたいな凄い音が聞こえたが」


 驚いたことに、いつの間にやら100人以上の村人がわらわら顔を出して集っている。


 (『こいつら結局村の外へ逃げなかったのか? こんなに大勢家屋の中に潜んでいたとは……あのバケモノが村へ侵入してたら、家ごと潰されてるとこだ』)


 緊張から解き放たれた俺たちが、座ったままほっとした余韻に浸っていると、村長らしき白い顎ひげを蓄えた老人が傍らに立つ。


 懐から葉タバコを取り出し、差し向けながら訊いた。


「おまえさんがやったのかね?」


 『ああ』


 俺は手の甲を挙げ、それをさえぎって断りの意思を示し返答する。


 (9歳女児にそんなものを勧めるんじゃねえ。まあ俺自身の体だった頃から、タバコなんぞ呑む悪習慣は持ち合わせちゃいなかったが)


「はあっ~~…………。このバケモノの死骸、どうしたものかなぁ…………」


 『まあ一苦労だろうが。頭部を切り離して、胴体と一緒に森から見える場所に晒すと良い。人里へ近づく個体がどういう末路を辿るか、頭の悪いモンスターでも理解できるだろう』


 ――この馬鹿でかいヤツの解体処理は、村人たちに任せるしかないからな。


「ウォルフェちゃん、今のはいったい…………」


 オハラが少女のそばへ歩みよってきて尋ねた。俺たちを心配して、結局近くで見守っていたらしい。まったく困った女性ひとだ。


「それは魔法の杖なの? あなたは魔法使い?」


「うん。ボクは魔法士なんだ」

 (「別れを済ませたばかりの人と、また話すのってなンか気まずいもんだよねぇ……」)


「……これからどこかへ行くあてはあるの?」


 ふたりの相棒・火花杖を肩に回しながら、ボクは立ちあがって言った。


「ビクセン郡にゆくつもり。ボク、最初から冒険者として登録するのが目的だったから」


「もし…………」


「?」


「あのね、もしもだけれど…………ウォルフェちゃんさえ良かったら」


「えっ……」


 ――ウルは少し視線を落として沈黙した。迷いでなく、無難な断わり方がわからないんだろう。ややあって彼女も察したらしい。


「そうよね……あれ程の力があるんだものね。歳が幾つかなんて、冒険者の実力とは関係ないって言うし」


 オハラはがっかり感を滲ませながら声を潤ませた。


 『ケネス。ちょっと顔かせ』


 俺は不器用者を会話の届かない場所まで引っ張って行く。

読者の皆様へ。

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