21 うざい義理の筋と一緒にモンスター出現情報が!
緊張を示すオハラの態度が気になった。
訪ねてきたのは招かざる客、好ましからぬ人物か? 彼女が外へでてから間を置いて、俺とウルは扉のそばへ行き、聞き耳を立てた。
「オハラ。よそ者の子どもを連れ帰ったって本当か」
「まあ。だれに聞いたの?」
「メルビンが心配してたよ。若いやつらも知らせてくれた。今度は浮浪児を連れてきて。……まさかこのまま引き取って、ずっと育てるつもりじゃないよね?」
(『ああ。昼前すれ違った、あの髭面のおやじだな』)
――ウルに向けて俺はつぶやいた。村の入り口でたむろしていた連中も、やはり報告に走っていたらしい。
「……あなたには、関係のないことだわ。あの子は野宿を続けてきたみたいで痩せているし、会わなかったならいざ知らず、見かけた以上は放っておくことなんて出来ないわ」
「つれないことを言わないでくれよ義姉さん。義理の仲とは言え、オレは弟なんだからさ」
「夫も息子も亡くなってしまったし。もうあなたとは……」
「赤の他人って? ヨハン坊やが流行り病で亡くなったのは、エドモンの体質を引き継いだせいだと思うよ。兄貴は元々体が弱い人だったから…………懸命に看病した義姉さんが責任を感じる必要なんてないんだ」
「私が罪滅ぼしのためにあの子を連れてきたとでも?」
「いや、オレはただ、今までみたいな犬や猫の子とは訳が違うじゃないかと思って」
「私はあの子を動物と一緒だなんて気軽に考えてないわ。そんな言い方をするならもう来ないでちょうだい」
男はオハラの機嫌を損ねたことで、動揺をのぞかせた。彼女より年齢は下と見受けられる。
『なるほど。オハラは未亡人で、どうやらこいつは彼女の亭主の弟。義理の弟みたいだな。……兄嫁に横恋慕する弟、ってところか』
まあ旦那が亡くなってる以上、誘惑してけしからんとも言えないが。
(「ねえ師匠、出ていこうか?」)
(『いいや。いま俺たちが間へ割って入ったら話がこじれて、一層事態が悪化するだけだ。止めておこう』)
(「ちがうよ。このまま裏の窓から外へ出て行こうかって言ってるの!」)
――なっ、、、なんだってぇ?!
(『黙って挨拶もなしに? ウル、それじゃあまりにも酷すぎるじゃないか。オハラが悲しむぞ』)
ウルはここから去りたがっている。オハラが嫌いというより、彼女と俺の接点を絶ちたがっているような気が。…………いずれにせよ黙ってトンヅラは失礼の極み、裏切りだろう。
「用事がそれだけならもう帰ってくださいな。あの子とのことは構わず放っておいて」
「違うんだよ。実はトロルの姿を見た者がいて騒ぎになってる。樹海の中から出てきて徘徊しているらしい。義姉さんもあまり出歩かない方が良いって言いに来たんだよ」
――(トロルだと?!)俺は思わず立ち聞きをやめ、扉を開き外へ出た。
『トロルはどこで目撃された? 数は何頭だ』
「ウォルフェちゃん!」
「おまえっ……」
俺の姿を見てケネスと呼ばれていた男は表情を険しくしつつも言葉を呑む。聞いて想像していた浮浪児のイメージとは少々違っていたのかもしれない。
ところが男は俺の質問を無視して、オハラの方へ言い分けみたいな説明をふった。
「モンスターに注意するよう言いに寄ったついでに、子どもの話にも触れたんだ……」
(こいつ、まだオハラに意味の無いことをほざいてる。今はモンスターに関する情報が最優先だろうが!)
ケネスは細身だが引き締まった筋肉の持ち主でガタイは良く、独得の雰囲気をまとっている。コイツはもしかしたら同業者かもしれん。
『それよりトロルのことを話せケネス。やつらの動き次第で犠牲者が出るかもしれんのだ』
「子どもが生意気な口をきくな! オハラに何か言われて期待してたなら生憎だが、彼女におまえを養う義理はない。食事がすんだらすぐにここから立ち去るんだ、ぼうず」
(なっ、このやろう!!)
男の子だと勘違いされたウルの精神がショックを受けているのを感じた俺は、直ぐさまフォローというか、心のケアにかかる。
(『ウル、今のは〝俺〟という自称によって相手の誤認を誘ったせいなんだ。大丈夫。キミはじゅうぶん可愛らしいぞ』)
――次はこの阿呆野郎に対してだ。
『俺っ……いや、これでもボクは、ぴちぴちの9歳女児だ!』
「ウソつくなっ」
「 なら見てみる?! おじさんっ!! 」
(『ちょっとウル、唐突になに言い出してんの? ダメ、俺はぜったい認めません!! ……余計ややこしくなるから、少し引っ込んでてくれる?』)
やれやれとケネスは鼻白んで、大げさに両肩をすくめ言った。
「ハッハハーー、……義姉さん今の聞いた? 残念。男の子ですらないんだってさ!」
――この馬鹿、オハラを本気で怒らせたいらしい。
「 最初から知っていたわよっ! ケネス、もう帰ってちょうだいっ、帰って!! 」
「義姉さん、おれ……ただ心配してるだけなんだよ」
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