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14 大切なひとは失ってから気付く子供部屋おじさん

 『おや?』


 いま、この子は夢の中の俺を30代くらいの年齢のオッサンで、行き倒れていた現の姿よりずっと若く、マシに見えるなぁ。と考えてる。


 『フフン……』


「? どうしたの? ……、、…………!!」


 俺たちは心がリンクしている。見透かされていることを覚った少女は、赤らめた顔をそむけて胸を高鳴らせている。


 その想いがまた俺の感情に作用して、実に妙なる波長というか、スパイラルへ陥る。


 互いの思考が流れこめば、感情も伝わる状態にしたからしょうがない。


「ズ……ズルイ! ずるいよっ! ホタカはっ」


 『おたがいさまだな。そっちからだって、俺の意識は読み取れるはずだよ』



 18のとき高校を出たあとは定職に就かず(就けず)、フリーター生活に入っていた俺はどこでも長続きしなかった。最初は親切に接してくれていた職場の先輩が、終いには鬼みたいな顔をして

 『やる気がないなら辞めちまえ!』みたいな感じで追い出される。


 最後はいつもそのパターンだったから相手が悪いわけではなく、きっと俺の方に問題があったんだろう。


 いわゆるコミュ症ってやつなんだと思う。


 だが自身では原因が分らないので、改めようがなかった。


 本当は高校を出た直後、親のコネで一時公務員になったこともあったが、職場の人間関係が嫌で

「辞めたい」と親に話したが、我慢しろ、辞めるなら家を出て行け。


 そう言われた俺は、翌日新しい勤め先を決め、アパートを仮契約した。


「借家が決まったんでもう辞めるよ。出て行くからいいよね?」


 両親にそう告げた。


 二人は大層驚いて

「もう辞めて良いから、出て行くのも止めろ。家にいろ」と言った。


 今度は俺がびっくりした。両親は決して前言撤回などしない厳しい人達だと思っていたから、引き止められるとは思わなかった。


 どうして自立に反対するのか? 尋ねたところ

「無理に家出され、外で借金なんかさられたら敵わん」

 なんてもっともらしい事を言っていたが、当時の俺からしてどうも釈然としない。


 意外と甘い二人だな。そう感じただけだった。


 やがてフリーター生活もうまく行かず、〝引き篭もらないニート〟状態になり、ご多分にもれず中二病に陥っていた俺は合気道に傾倒する一方、リアル世界でも長い修練すら必要とせずチート能力を得る手段があることを、偶然知った。


 そう――


 当時二十歳になったばかりの俺は、人間の英知が生み出した最強の《牙と爪》である銃を手に入れていた。


 取り敢えずハーフライフルという散弾銃の資格で持て、サボットスラッグ弾などの一粒弾を撃てる銃〔サベージ212〕という12番径モデルを、今までバイトで稼いだ金でもって購入して、10年後のライフル所持まで備えることにした。


 最初の頃、俺は国内法規に適合するよう改造を加えた軍用自動ライフルに興味を抱いていた。珍しいし、何となくカッコイイからだった。


「ライフルを購入するなら、モーゼルかサコーかブロゥニングだな。それ以外のメーカーはダメだよ。そもそも、まっつぐ飛ばないからね。…………似リタリー・ライフル? まったく当たらないから駄目駄目。絶対後悔しちゃう」


 今まで自分が仲間達と散々撃ってきて確かめた結果だから。銃砲店の社長は言いきった。

 経験則上間違いないという彼のアドバイスを受け、俺はその当時からサコーを選択していた。


 狩猟用大口径ライフルの所持には、継続して10年間の散弾銃所持の実績が必要だったから。


 27歳時、突然の事故で俺の両親は揃って亡くなった。

 途方に暮れる間もなく、葬式や遺産の処理などの手続きに、俺は一人奔走する事になった。


 税務署は親の資産を全部把握できるが、質問しても教えてはくれない。

 家中をひっくり返してでも探して欲しい、と言う。


「そちらで見つけ出して計算したら、総て申告してください。正確・正直にお願いします」


 その過程で複数、俺名義の銀行預金通帳と書類の束を発見した。


 中には国民年金を2年ごとにまとめて振り込むための一千万円が入った郵便会社の口座、同額の都市銀行口座・全米インデックスファンドの積み立て口座などへの投資用預金通帳まであった。


 これは俺が二十歳になった時点から、月額5万円ずつが振り込まれる形になっている。


 ああ、そうだ!


 母親から毎年サインを要求されて公証役場の確定日付を押した〔贈与契約書〕十数枚……これ名義預金疑惑を払拭するための証拠か。

 でも都市銀行とか投資通帳。こっちのは明らかに、箪笥貯金へそくりが原資じゃないの? 宝くじでも当たったか?!


 しばし呆然。



 両親は、何かあっても当座は困らないような資産形成を、築いてくれていたのだ。


 ………………



 ちょうどその頃、北海道では人里と接した場所にまで現れた羆が、人を襲う事件が頻発していた。

 その十数年前から、知床を除いた全道で羆猟が解禁され


「どんどん撃って捕ってくれ」と言わんばかりの対応に変わった。

読者の皆様へ。

ここまで読んで頂いてありがとうございます。


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