表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/50

11 おっさんは自らをさらけ出して少女を口説く

 自分自身のすべて、半生をさらけ出さずに、この子の心を開かせるの不可能なようだ。


 (『ウル。俺の過去を見てみないか?』)


「えっ……!!」


  思いがけないことを言われ驚いたのか、彼女の動揺をしめす針が大きく振れる。


「い……いいよ、べ、べつに、興味ないもの…………」


 (『俺にはキミの過去が大体わかる。感情の動きもふくめてだ。不公平だとは思わないか? 興味や関心なくても把握しておいて損はないだろ』)


「うっ、…う………」


 『(当然、知りたいと思っているんだ。この歳なら好奇心も盛んで、見たこともない世界への興味だってつきないはず。本音をかくすのは、少しでも弱みを見せたくないからだろう)』


 ここからが本番だ。


 (『ウル。目をつむって』)


 彼女は瞼を閉じた。俺が睡眠導入する手段を講じると、急速に目蓋は重くなる。


 眠りは浅くて表面意識下。

 これでウルの生命本体に直接ふれて交流を図れるだろう。


「あっおじさん……」


 俺たちは夢の中で再び向かい合った。俺は少女の前まで歩み寄り片ひざをつく。


 『じゃあ始めるよ』


 俺は彼女の側頭部・こめかみ・頬にかけて両手の指先をあてる。


 最初ウルは少し顎を引き、上目使いでこちらを凝視した。

 潤いを湛えた目の光が小さく揺れ動き、脅えを覗かせる。


 彼女の警戒心を解きほぐすため、やさしく声をかけた。


 『怖いことは決して起こらないから、どうか信頼して欲しい。…………気持ちを楽にして』


 ゆっくり瞼を閉じ、少女は幼いながら覚悟を示してくれた。夢の中でも目を閉じてもらうことで、さらなる潜在意識下へ働きかけていく。


 『ふたりは、一人だ……』


 ウルは鼻から長く息を吐き、同時にお腹を凹ませる。


 みずから力みを捨て、開錠した印しだった。


 この子は勇気がある。俺の世界で言う、まな板の上の鯉という心境へ自らを置きにいく。


 『 安心していい。そのまま心に構えるものを設けずに、リラックスして 』






 『……――――俺は――――――――』




「――――ボクは――――――……」






 ――――ボクと俺―――― 意識が重なりシンクロする。




 互いの記憶が相互に流れこんで、再現されていく――――――――――……。




 靄のかかったおぼろげなトンネルをぬけると、視界の先が僅かずつ鮮明になってくる。


 記憶をもとに俺の視点で展開される〝あの世界〟の人や乗り物・天を衝いて林立する都会の摩天楼。


 町や風景などは、予想通りウルの心に大きな驚きをもたらしていた。


 『この世界の魔導師達が、古代から存在を指摘している伝説の異世界〝エルデラン〟だよ』


 親父やお袋。子供の頃の友人達や、学校の先生などの顔・姿の記憶が走馬灯のように再生されてゆく。


 俺自身、しみじみ

 (あの頃はこうだったんだ……!)そう感慨深い気持ちで眺めていた。当時抱いた気持ちまで思い出すことができる。


 決して見られたくない。

 そう思って隠してきた恥ずかしい記憶は、俺の心を激しく突き刺し苦痛を与えた。


 一方でしまってあった大切な想い出は、俺の気持ちを温かいやさしさで包み込む。


「ホタカには、ちゃんと父さんや母さんがいたんだね」


 『ああ。そうだよ』


 少女は立ちつくし、回想にじっと目をむけながら涙を流しはじめる。


「……よかった…………」


 頬をぬぐいつつ言った。


 思いがけない反応。これほどまでとはな――……


 …………この子は、ウルは本当に心がきれいな子だ。そう再認識する。


 『俺は苦労知らずでドラ息子だった。キミを知るほど、俺は自分が恥かしくなるんだよ』


「どうして? 親が両方そろってて大切に育てられるのって、すてきなことじゃない。孤児みなしごから始める人生なんて、だれも望んで選んだりしないよ」


 『うん…………そうだな。俺は幸せ者だった。神様に感謝しなけりゃな』


 安心した。

 ウルの気持ちはずいぶんと晴れ渡ってきている。やはり自分の過去を全部さらけ出す方法が、彼女の心をとらえたようだった。


 『ウル。実践に勝る勉強はないんだ。キミ自身で杖の力を行使してみないか? 習うより慣れろっていう言葉通りにね』



 翌朝。


 ブイヨンスープと干し肉を主体にした軽い朝食を摂ったあと、俺たちは大小の岩がころがるエアープランツもどきな植物しか見当たらない荒地をしばらく歩き、杖の発動(試射)ができそうな場所へたどりついた。


 この辺は開けた地形で遠くまで見通しが利き、見渡せる限りにおいて人影などは確認できなかった。


 革袋をといて中のものを取り出す。

 初めて《魔法具》の全体を目の当たりにした少女は、しげしげと見つめている。


 この世界に存在しないデザインの品だから、珍しいのだろう。


 俺は火花杖をさして《サコー・ハンター》だと紹介した。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


少しでも面白ければ、ブックマークや本文下↓の☆☆☆☆☆⇒★★★★★から評価していただけると幸いです。


作者のモチベが上がりますので、どうかよろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ