たまには道を誤るべし
ピピピピッピピピピッ
「・・・・・・ん。」
今日もスマホが無機質な音で朝の訪れを告げる。
はいはい、起きたよ起きましたようるさいな。
自分でセットしておいて心の中で悪態をつき、アラームを止めようと
腕を伸ばす・・・・・・伸ばせない。
窮屈な感覚を不思議に思い、目を開くと数cm先にある見知った端正な顔と一糸まとわぬ上半身。
そして私をがっちりとホールドしている筋肉質な腕と絡められた脚が窮屈な感覚の原因だった。
「なにごと!?!!!??????」
勢いよく起き上がるとそれに伴ってズキズキと痛む頭にボスン、とまたベッドに倒れこむと
その衝撃で目覚めたらしい昨夜の彼と目が合う。
『・・・・・・・おはよう、ゆり。』
私の髪を撫でながら、差し込む日差しによって寄せられた眉間の皺とふにゃっと笑う口元と
かすれた声が無性に色っぽい・・・けど。
「あの、離してもらっていいですか。」
痛む頭をおさえ絞り出した声もむなしく。
『つれないな~~、昨日はあんなに俺のこと求めてきて可愛かったのに。』
ニコニコと昨夜と同じ笑顔を浮かべる奏さん。ああ、やっぱり顔はものすごくタイプ。
「ええええ!?!ちょ、今なんて」
どうやら学習能力が低い私はまたも頭痛にKOされる
『大丈夫?お水飲む?』
あまりの痛みにゆっくりと頷き、腑抜けのような声を出すことしかできない。
やっちまった、真面目に生きてきたつもりだったのに。
お父さんお母さんごめんなさい。娘はよく知りもしない男と一夜を共にし同衾しました・・・。
懺悔する私にお水と頭痛薬を持ってきてくれた奏さん。
『生理痛に効くやつだから頭痛にも効くよね?』
なぜ貴様が生理痛に効く前提として薬を持っているんだよ。と思いつつ素直にそれを受け取った。