三高優良物件は早めに確保すべし
書類がぜんっっっっっぜん、通らない・・・!!!!!!!!
退職後、複数の転職サイトに登録した私は自分の職歴などをぽちぽちと入力し
良さそうな求人に応募を続けていた。
前職での4年の職歴はあるものの、いわゆる事務方で得られた特別なスキルなどは
特になく、語学や資格など私が戦える要素は一つもなかった。
『未経験歓迎!』の文言を信じ応募した大本命の企業からの書類選考通過の連絡はなく、
「お祈りすらしてくれないんかい・・・」とぼやいた私は、ヤケ酒をするため近場のバーへ足を運んだ。
カランと小気味いい音と共に入店した店内は狭すぎず広すぎず、
客足もぼちぼちといったところでカウンターの端の席に着いた。
何を飲むかな・・・まあ酔えれば味なんてどうでもいいけど。
とメニューを見つめる私の前に置かれた一杯のピンク色の透き通ったカクテル。
「あの、私まだ頼んでませんけど・・・?」
『あちらのお客様からです』
普段オーセンティックなバーとは程遠い生活をしている私は、
(このセリフ、本当に言うことあるんだ)なんて思いつつマスターの目くばせの先へ視線を投げる。
『もしよろしかったらご一緒しても?』
口の端に笑みを浮かべ、反対の壁側に佇む男性。
少々薄暗い店内でもよくわかる、小さい顔に目鼻立ちしたパーツ・長い手足に仕立ての良いネイビーのスーツ。袖から除く高そうな時計に形の良い頭になでつけられた清潔感のある黒い髪。
The 勝ち組エリートって感じなのに浮かべる笑顔は人懐こい子犬のような雰囲気を漂わせていて。
・・・うん、めちゃくちゃにタイプだ。
『大丈夫ですか?もう酔ってる?』
そう言って私の顔の前で手をひらひら、とさせる彼。
いかんいかん、つい見とれてしまった。
「い、いえ・・・The 勝ち組エリートイケメンみたいな人だと思って」
このロマンティックなシーンにそぐわない言葉がつい口から漏れ出る。
『はは、それはありがとうございます・・・でいいのかな(笑)』
言われ慣れてんだろうな、顔も整って良い服着て良いもん食べて、勝ち組人生まっしぐらって感じだもんな。
「・・・で、そんな立派なスーツ着た男前さんが私にどんなご用件でしょう」
勿体ない。本当に勿体ない。こんな見るからに優良物件、滅多に出会えないのに。
でも今は男に媚びなんて売る気力もない、ただ一人で酔っ払いたい気分なんだよ放っておいてくれ・・・