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玄関の鍵と連絡はしっかりすべし

「そんなことより就職口ください」


【・・・仕事で疲れ果てた独り身男の身の回りの世話をする仕事、する?】


冗談から始まった私たちの主従関係~大企業御曹司×家政婦兼秘書You~


「おめでと~!お幸せに!」


このセリフを言ったのは今年に入って何回目だろう

続々と結婚、そしておめでたを報告する大学時代の友人達


『ゆりこそ、渉君とはどうなの?もう付き合って大分長いじゃん。二人。』


「ん~~私達はほら・・・、お互い仕事も忙しいから。」


寿退社だ~なんて盛り上がる友人達を尻目に

寿する彼氏も退社する会社も無い私は、ばれないように小さくため息をつく。


大学の時から付き合って5年になる渉とは・・・彼の浮気が原因で先々週別れた。

5年も付き合っていると空気みたいな存在というか家族みたいな存在というか。


私の世話焼きな性格が災いして、一人暮らし歴の短い彼の家に訪れてはせかせかと家事をし、だらしのない彼に小言を言う日々。でも彼のことはちゃんと好きだったし、恋愛表現が日に日に減っていってもお互いにちゃんと好き合っていると思ってた。


Xデーのその日は朝からなんだか体調が優れなくて、出社したものの大きな立ち眩みを覚えてオフィスで

しゃがみこんでしまった。頭がぐわんぐわんする・・・体の節々が痛い・・・なんだか熱っぽい・・・。


上司に報告をしたところ、いやな顔一つせずすぐに早退を、とのお達しでオフィスから地下鉄で数駅先の渉の家で休ませてもらおうと電話をかける。


「おかしいな~・・・出ない。でも家にはいるはずだし、とりあえず行っちゃおう」


思ったよりも頭痛が酷く結局会社を出たところでタクシーを捕まえる。

(う・・・。揺れで吐きそう・・・。)


良かれと思い乗車したタクシーだったが、運悪く運転の荒い車を捕まえてしまったようだ。

吐き気と闘っているとピロン♪と通知音がメッセージの受信を知らせた。


渉『電話ごめん。どした?』


通知画面で表示されるメッセージに返信する気力は無く、そのままわたるのドライバーに渉の家の住所を伝える。


今思えばこの時返信をしていたら私の運命は大幅に変わっていたんだろうーーーーーーーーーー。




『はい、じゃあ1720円になります。』


渉のマンションの前につき支払いを済ませよたよたとまるで

生まれたての小鹿か何かのようなおぼつかない足取りで3階の彼の部屋を目指す。


(このコンディションでエレベーターなしはキッツい・・・!)


やっとの思いで彼の部屋の前にたどり着きインターホンを鳴らす。


・・・。


鳴らす。


・・・。


・・・・・・。


・・・・・・・・・・・出ない。



寝ちゃってるのかな?

平日のド日中だが、フリーランスで仕事をしている彼は生活リズムもまちまちなのであり得ない話ではない。



ドアに手をかけると施錠がされておらず玄関はいともたやすく開いた。


(全く渉ってば鍵もかけないで・・・)


絶不調な体調にもかかわらず、心の中で小言を言う。

そんな私の視界に飛び込んできたのは渉の履き慣らしたアディダスの白いスニーカーと

寄り添うように並んだ、リボンのついたペタンコパンプス。



ドク、ドク、ドクと全身が心臓になったように脈打つ鼓動と増していく頭痛。


(渉は姉妹もいないし、彼のお母さんが履くにしては若すぎるデザイン。)


フーーーーーーッ・・・と深呼吸をして1Kの部屋へ歩みを進める。




ガチャ。




渉「・・・ゆりっ!??お前、仕事は」


焦り一色の表情を浮かべ、私にそう問いかける彼の隣には私とお揃いのルームウェアを着る

ふわふわの栗色の髪の毛の小動物のような女の子。


ーーーーーーそれ以外の追求も弁解も必要なく、私達の5年はあっけなく幕を閉じた。






数年前に占いツクールというサイトで連載していた作品です。

少し改変を加えて投稿していきますので暖かく見守っていただけますと幸いです。

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