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好きで好きでたまらない  作者: しおやき


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88/90

オレンジジュース



「・・・・え、い・・・家?」



 いきなり?とは思ったけど、普通に読めばお姉様方が僕に会いたいと書いてあるから別にそんな変なことをしようとしているわけではないのは一目瞭然。



「・・・でも、そんな・・・ひ、人様の家に行ったこと片手で足りるくらいしかないし・・・どうしよ」


 しかも来週だ。

 別にご両親に会って紹介されるわけでもないのに、準備なんて出来てないよと1人で焦る。



ブブーっ


「ひぃっ!」


 意味のない考え事をしているとまたスマホが震えた。



【恭平も来るから、多分大丈夫だと思う。面倒くさい話振られたら全部恭平に投げればいいよ。もちろんかずきが嫌なら無理にとは言わない】


「え・・・」



(面倒くさい話ってなに?)



 はて?と首をかしげてからこうたくんに返事をして、スマホの画面を下にふせた。


 どんなお姉さん達なのだろうと想像してみるけど、簡単に思い付くのは外見だけだ。こうたくんがああだから、きっと凄く美人なお姉さんばかりだろう。



「・・・・会いたいって言われても、女の人と・・・上手く話せないし」




ブブーっ


(へ、返事・・・)



「・・・・」


 そもそも女の人はお母さんとしか会話という会話をしたことがない。心証を悪くしたらどうしようと不安な心がゆらゆらと揺れ動く。


 僕が返した返事に、こうたくんは【分かった】とだけ連絡をくれた。




「はぁ・・・大丈夫かな」





◇◇◇





 土日が過ぎて休みが終わり、月曜日になったその日のお昼ごはん。

 こうたくんとけいたくんがゲームの話をしているのを横目にお弁当を食べていると、恭平先輩に肘をつつかれた。


(ん?)


「・・・・なんですか」

「・・・・・」

「・・・?」



 じっと見つめてくるその顔は何かを言いたげだ。思い当たるフシと言えば、今週こうたくんの家にお邪魔するということぐらい。


「お前さ、」

「はい」

「こうたの家に行ったら絶対に余計なこと言うなよ」

「・・・・え?」

「正直圧に押されてあんまり喋れないと思うけど、徴発するようなことだけは言うな」

「・・・徴発?」

「ほら、前にあのクソ野郎二人組に言い返したことあったろ」

「・・・・・」


(言い返したこと・・・・?)


「朝の廊下のときですか?」

「そう、それ」

「・・・・な、なんで僕がこうたくんのお姉様方に徴発みたいなこと言うんですか?」


 意味が分からない。

 そんなムカつくようなことを言われるのだろうか。

 僕の容姿とか、なんで付き合ってるとか。


(・・・・その可能性のほうが高い・・・っていうかどこまで知られてるんだろ)



「いいか、こうたの姉ちゃん達はな」

「・・・・・はい」

「すげえ怖いんだよ」

「は?」

「こうたと付き合ってること知られたら、何言われるか分かんねえ」

「・・・・そ、それは」

「だから言われるがまま頷くだけにしろ。一言言い返してみろ。30倍にもなって返ってくるぞ」

「・・・・」

「分かったか?・・・いっ!!!」


(え?)



「なにバカなこと言ってんだよ、恭平」

「・・・こ、こうたくん」


 僕に内緒話のようにしていた話は、こうたくんに丸聞こえだったらしい。それもそうかもしれない。如何せん地声が大きいから、静かに話そうとしても多分内緒話にならない。後ろから下敷きで頭をパシッと叩かれた恭平先輩は、大袈裟に声をあげていた。


「酷いぞ、こうた・・・後ろからって。卑怯だ」

「うるさい。お前が嘘つくからだろ」

「・・・・」


(う、嘘?ってなに?)


「あの・・・」

「ん?」

「こうたくんのお姉さん達は・・・・」

「うん」


 一体どこまで話が進んでるのか僕には分からない。家族にすぐに話したりするものなのだろうか。


「・・・・僕達のこと」

「あぁ、知ってるよ?」

「え?」


(・・・・・えー!!?!???!)


「知ってる。だから会いたいって」

「し、知ってるって・・・な、何を・・・ですか」



 不思議そうな顔をして紙パックのオレンジジュースを飲んでいるこうたくんは、口をストローから離し当たり前のようにニヤッとして僕に言った。



「全部」


(・・・・え)


 隣で恭平先輩が何かを言っているが、あんまり頭に入ってこない。



「飲む?」


 間抜けヅラをしてそんな彼を見つめ返していた僕になにを思ったのか、こうたくんは飲んでいたオレンジジュースを差し出してきた。


「・・・い、いいんですか?」

「うん。あげる」


 まだ半分ほど残っているのか、その甘い問いかけに簡単に引き寄せられた僕はこうたくんの言葉の意味に気を取られたままそのオレンジジュースを受け取る。



(・・・・嬉しい・・・けど、全部って)


 どこからどこまでなのか線引が謎な言葉に頭が支配されるも、手渡された紙パックのストローに口をつけてちゅうちゅうと吸いながらこうたくんをチラッと見ると、目があってしまった。


(えっ)



「美味しい?」

「・・・・・んっ」


 見られていた。その事実に恥ずかしくなって目を反らすと今度は隣から恭平先輩が言った言葉がはっきり聞こえてきた。



「間接チューだ」




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