表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
好きで好きでたまらない  作者: しおやき


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

87/90

5時43分



「・・・お母さんは、なんというか・・凄い意味不明な人だったよ」

「え?」

「怒ってると思ったら、急によそよそしくなるし、話しかけてくるのかなって思ったらチラチラ見てくるだけで終わったり」

「・・・・な、何もその後話してないの?」

「ん~・・・まぁ、僕からは何も用事はなかったしね」



(・・・お母さんって昔そんなんだったの?)


「違う中学だったから、電車の方向は反対側だけど、駅では会うんだよね。まぁ、会うというか、見かけるというか・・・」

「そっか、そうだよね」



 2人の最初の接点は分かった。そしてお母さんが少し嘘をついていたということも判明した。


(見かけただけとか言ってたけど、見かけてから話しかけてんじゃん・・・・)



 でもその後の流れが僕には全く想像できなくて、とりあえず馴れ初めのあとの付き合うまでの話でもと、もう少し踏み込んで聞こうとした。




(2人が付き合ってからの話は・・・・子どもとしてはあんまり聞きたくない)



「お母さんの印象ってお父さんにとってどんなかんじだったの?」

「印象か~・・・・そうだな、」


 ため息をついて、何かを思い出そうとしてるのか少し遠くを見たような表情をしたお父さんはちょっとだけ首をかしげてから吹き出した。


「なんだあれ?って感じだったかな」

「・・・え」

「何がしたいのかよく分からなかったけど、まぁそれは今もたまに思う時はあるけど」


(・・・・・)


「良くも悪くも、昔から変わってないよ」

「・・・そお・・・なんだ」

「うん。でもね、間違いなく彼女のおかげで少しだけ、いい気分転換にはなったかな」

「気分転換?」



 お父さんはカップの中の残りのコーヒーを飲みきってテーブルに静かに置いた。



「・・・話さないけど、見かけると向こうも僕のこと見てたからなんだかそれが面白くて」

「そうなの?」


(そんなんで気分転換に・・)


「うん。僕は毎朝同じ電車に乗ってたから、朝の5時43分だったかな。その時間はだいたい人がいないんだよね。早すぎるから当たり前なんだけど。駅のホームで彼女を見つけやすいんだよ」

「は、はやっ。え、でも名前は?いつ自己紹介したの?」

「ん~・・・・告白された時?かな・・・高校生になってからだよ」

「は!?」





 僕の中では、出会って、お互いを知って、しばらくして仲良くなって、それから好きですって告白をする流れが一般的だと思っていた。


 それが普通じゃないのか。

 出会いから付き合うまでの僕が想像していた時間経過を簡単にぶち壊したお母さんは、タイミングを取るのが下手くそだったのか、それとも何にも考えてなかったのか。



(多分後者だ・・・けどそれってストーカーみたい)



 でも僕も同じことしてる?と僕が口をあんぐり開けて何も喋らず固まったままだったから、そんな僕を見て勘違いしたのか、お父さんはまるでお母さんをフォローするように穏やかな口調で話した。



「まぁ、いろんな人がいるからね」

「・・・・」

「いろんな出会い方があるさ。何が正解とかじゃない。今ここでこうして家族になってる事実がそこにあるだけだよ」

「それは、分かってるけど・・・お父さんは・・」

「ん?」



(もしかして、ボランティア精神で結婚したとか言わないよね?)


「・・・お母さんのこと好き・・だよね?」

「もちろん、好きだよ」

「・・・・・そ、そっか」



 お父さんの迷いのない返答を聞いてホッとした僕は、なんだか無償にこうたくんに会いたくなってしまった。

 学校で毎日会ってるから、土日までも会いたいと言い出すとどうなるだろう。部活があるから断られる前提だけど。


(・・・・また手を繋ぎたい)


 体の何処かに触れたくて、少し落ち着きがなくなってくる。



「・・・・かずきは母さんによく似てるよ」

「え?」

「僕にも似てはいるけど、かずきは昔の母さんに本当にそっくりだね」

「・・・・・」



 嬉しそうにそんなことを言うお父さんの言葉を聞いて、こうたくんとの関係をどうやって告げようか迷っていた僕は、口をつぐんだ。


(もし、こうたくんとの関係が万が一にでもうまく進んだら、子どもは・・・できない)



「父さんは・・・その、子どもとか・・好きなの?」

「子ども?・・・・ん~、子どもというか、かずきのことは大事だよ」

「・・・え」

「それだけさ。かずきは自分の好きなように生きたらいい。僕は母さんと同じで、かずきが幸せならそれでじゅうぶんだよ」

「・・・・・」



 同じ表情で僕を見ながらそう言ったお父さんに、ポケットに入れたスマホを布越しにぎゅっと握りながら唇を一瞬噛んで、お礼を言った。



「ありがとう」

「うん。また話したいことや聞きたいことあったら言ってね。今度は違う場所にドライブでも行こう」

「うん・・・行く・・・・絶対に行く」



 お母さんが戻って来る前に話し終えた僕達は、彼女が帰ってきてからは何事もなかったように普通に過ごした。



(絶対お母さんには内緒にしとかなきゃ・・・)



 部屋に戻ってこうたくんにメッセージを送ろうとした僕はスマホの画面を明るくしたけど、今更サイレントにしていることに気がつく。


「・・・なんか来てる」



 来ていたのはこうたくんからメッセージで、何かあったのかとタップして確認してみたけど、思ってもなかった文章が目に飛び込んで来てまた身体が固まった。


(・・・・・え)





【来週の土曜日、暇だったりする?もし暇ならうちに来てほしいんだけど。なんか姉ちゃん達が会いたがってる】






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ