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好きで好きでたまらない  作者: しおやき


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二人の出会い〜はじめまして〜


―――――――――


「ちょっと!あんた何考えてんのよ!」



 突然聞こえてきた後ろからの高めの怒鳴り声に、身体が異常にビクッと反応して危うく線路に落ちそうになりかけたのは、もう年も明けて、2月に差し掛かった時だったらしい。



 雪が降っていて、とても寒い。



怒鳴り声が聞こえた日も、雪が降っていた。


 ボタン雪が、ゆっくり、ゆっくりと地面を濡らして、コンクリート特有の色が見えなくなるまで地面を覆う。凍りつきそうな夜中の時間を過ぎればそこはもう凍っている。

 そんな真冬で、まだ眠気がじゅうぶんに取れない朝の早い時間帯に学校まで行くのに毎日使っている電車に乗ろうと、駅のホームでボケーと突っ立っていた。



(は?・・・誰だよ、朝から・・・ふざけんなよ)



 その日は、たまたま気分転換にいつも乗っている車両ではなく別の車両にしようとして、立って待っていたのは別の場所。


 黄色い線よりも後ろに下がってなきゃいけないのは分かっていたけど、ラインギリギリに乗っかっていた。


(クソだなほんとに)


 眠気が覚めない時に、後ろから、しかもいきなり大きな声で叫ばれたら心臓が止まりそうになる。

 迷惑極まりない、こんなことをするやつはどこのどいつだよと、半ば半ギレ状態でそのアホ面を拝もうとした。


(誰に向かって言ってんだよ、独り言とかだったらまじでぶっ飛ばすぞ)


 まさかその宛先が自分自身なんてつゆ知らず、後ろを振り返ろうとしたその瞬間、左腕を掴まれた。


(は?)


 もしかしてこのまま線路内に落とされる?と身体が危険信号を出したと同時に無意識に掴まれた腕に力が入る。


「ねぇ、あんた・・・あんたに言ってんのよっ」

「・・・は?」

「は?じゃないわよ、こんな朝早くから、一体何しようとしてるの」

「・・・・・・」


(まじか)


「・・いや、普通に電車待ってんだけど、あんたこそ俺になんか用?」


 そのまま相手を押すように身体ごと後ろに振り返れば、腕を掴んでいたのは随分と気の強そうな、だけどなんとも可愛らしい顔をした女子生徒だったという。


(・・・・他校だよな、制服違うし。何歳だ?)


 自分よりも年下に見えるその顔はまだ幼さが残る。何歳なのか不明だけど、とりあえず多分同じ中学生であることには間違いない。


「・・・えっ、そ、そうなの?」


 啖呵を切って言ってきたかと思えば、言い返されて少し戸惑った顔に、出てきた言葉は声が小さくて聞き取りずらかった。


(唇すげー紫じゃん)


「なに?」

「・・・い、いや・・・それなら良いけど」

「・・・・・」


(こいつ勘違いしてんな・・・)


 多分これから来るであろう電車に飛び込もうとしているとでも思われたのか。それにしても、後ろから来たくせになんでこんなに息切れをしているのか俺には分からない。



「・・・・離して」

「え、」 

「腕」

「・・・あ、ご、ごめんなさい」


 案外すぐに離れたその手は手袋なんてしていなかった。

 寒いだろうに、鼻は赤くなって、なんでか額には少し汗をかいてる。


(・・・こいつなんなの?)


「ごめんなさい、失礼したわ。あなたが・・・・なんか、その・・・ちょっと怪しかったから、反対側の乗り場から駆けつけたのよ」

「・・・・・」



(やっぱり)


 

 どうやら俺は死ぬと思われていたらしい。そんなこと万が一にでもあるわけがない、俺はただ朝が弱くて低血糖なんだよと頭の中でブツブツと、目を泳がせながら戸惑いがちに言い訳をする目の前の女の子に文句を言った。




――――――――――





「これが母さんとの初めましての瞬間だよ」

「・・・・きょ、強烈だね」

「うん。まぁ、怪しい雰囲気を出してたのは事実かもしれない。秋斗があんなことになってしまってから、僕は塞ぎ込んでたからね」

「・・・・そっか」



 ある土曜日のお昼すぎ、お母さんがいないのをいいことに、僕は二人の出会いが気になってお父さんに聞いてしまった。


「その時は、それで終わったの?」


(っていうかお父さんって・・・やっぱり昔と性格変わったのかな)


「あぁ、もちろんそうだよ」

「・・・・名前も聞かずじまい?」

「そうだね。まぁ、またすぐに会ったんだけどね」




 そう言ったお父さんは、少し照れたように笑ってからコーヒーのカップを手に取り一口飲んだ。





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