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好きで好きでたまらない  作者: しおやき


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後日談その2


 その日の授業中、またしても僕の頭は使い物にならなかった。


(・・・ど、どうしよ)



 隣に座って授業を受けてるこうたくんは凄い普通だし、なんならお昼ごはんの時も普通に話してる。



(もしかして、僕の妄想・・・だったりした?)


 ちょっと安心したことは、ずっとふにゃふにゃだった僕の脳みそがあからさまにミスをしなかったということだ。


 だいたいこういう舞い上がった時に限って、お弁当をひっくり返したり、机の脚に自分の足を引っ掛けて顔面から転んだりとか起きそうだけど幸いにもそれはなかった。



(今日は一緒に帰れない・・・・かな、こうたくん多分部活だよね)

 

 朝、部活用に荷物を持っていたのを見てるから最後の授業が終われば今日の帰りは1人だ。



(・・・もう終わる)



◇◇◇





 授業の終わりを告げるチャイムが鳴って、他の生徒達は帰ろうとぞろぞろと立ち上がる。静かだった教室も一気に騒がしくなった。



 僕は波に巻き込まれないようにゆっくりと準備をして隣のこうたくんの様子を伺う。最初の出だしは普通のカップルだとどんな感じなのか、何にも知らない僕は基準が分からないからとりあえず他の人でそれを測るしかない。


(本当はよくないけど・・・・)


「かずき、」

「え、あ、はい」

「準備できた?」

「はい・・・」

「行こう。俺部活だから玄関までな」

「分かりました」



(・・・・・)



 やはりであった。あとで話そうと言われたけど「あと」が分からないから今再確認したい。

 そんな気持ちが出てきて人が全くいない状況でないにも関わらず、ドアから出る寸前で少し長めの長袖からのぞいた彼の手の小指に、自分の人差し指を引っ掛けた。



(・・・・ちょっと密着しすぎたかも)


 こうたくんのすぐ後ろに立ったから、多分僕が彼の手に触れているのは他の生徒にバレていない。


「ん?どうかした?」

「あの・・・えっと・・・・・・」



 もちろん手なんて振り払われていない。

首をかしげて不思議そうに僕に小さな声で聞いてくるこうたくんに、『なんて言えば伝わるのだろうか』なんて愚問を自分自身に問いてみても、答えなんて1つに決まってる。


 引き留めて申し訳ないと思いながら、朝の返しは失敗したから今ちゃんと聞こうと生唾を飲み込んで同じ声のボリュームで聞こうとした。


「・・・っ」

「部活なんだけど」 

「・・・・・そ、そうですよね・・あのっ」

「遅刻するんだけど」

「っ・・・僕たちは、」



 それなのに僕が飲み込んだ生唾は、 こうたくんの返しのおかげで一瞬無駄になる。


 言葉とは裏腹に僕に喋りかける彼の声は優しくて、引っ掛けたはずの人差し指はあっという間にこうたくんの大きな手に掴まれてしまった。


「なに?」

「・・・・こ、恋人っていう関係に・・・」

「・・・・・」

「・・なるんでしょうか」


 聞き終わっても心臓のバクバクが止まらない。むしろ口を閉じてからのほうが大きく感じる。目を閉じちゃだめだと掴まれた手に視線をやると、その瞬間手が緩んだ。


(えっ)


「そうだけど、」

「・・・・・へ?」

「だから、これからよろしく」

「・・・・」 


 顔を上げたら当たり前に至近距離に見えるこうたくんの顔はニヤリと笑っていて、緩んだと思った手はあの誕生日の時と同じように握手を交わすような格好になっていた。


「・・・・」

「かずき、そろそろ遅れるから、行きたいんだけど大丈夫?」

「え、あっ、ごめんなさい。大丈夫・・・大丈夫です」

「行こっか」

「・・・・うん」


(嬉しい・・・嬉し・・すぎる・・・)




 正面玄関まで向かおうと、教室から出た。

握手をしていた手はもちろん解かれている。


(・・・・こうたくんと恋人)



 でも、指先だけは絡まったまま。

 

 誰にも見られないように、少し寄せた体の右側は暖かかった。



「今週は部活あるから駅まで送れないけど、気を付けて帰れよ」

「うん。大丈夫・・・滑らないように気を付けます」




 下駄箱で履き替えて、「また明日」とお別れを言った僕達はそれぞれ違う方向に足を踏み出した。



(・・・良かった・・ちゃんと聞いて良かった・・)



 触れた指先も、触れ合った手も暖かくて、冷たくならないようにポケットにしまい込んで口から吐き出したのは、安心した時のため息。



 「早く明日が来てほしいな」




 雪が降らないうちにと、僕は足早に駅までの道のりを急いだ。









 後日談はあと数話あります。


 

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