誕生日おめでとう2
「・・・・」
目が覚めて、朝が来たと思ってスマホを見ると8時。
(案外ちゃんと寝たな・・・・)
顔を洗って、リビングに行くとお父さんとお母さんがもういた。
「おはよう」
「おはよう~」
「・・・おはよう」
暖房がついてるから暖かい。廊下は凍るように寒かったけど、一晩でここまで寒さがしみることがあるだろうか。
(・・・もしかして・・・まぁいいや。とりあえず朝ごはん)
昨日たくさん食べたケーキがまだ胃に残ってるようで、喉元が甘ったるい気がする。それなのに甘いホットココアを飲んで、これから起こることを頭に思い描きながら目を閉じた。
(うまくいきますように)
◇◇◇
お父さんはグダグダ言っているお母さんを準備させて、お昼すぎに本当に買い物へ行ってしまった。
「遅くなるようなら連絡してね」とそれだけ言って手を上げたお父さんの姿を見送った僕は、ブランケットにくるまりながら閉まる寸前のドアの隙間を覗く。
ガチャ
「・・・・・」
音を立てて閉まったドアの向こう側に見えたものはやっぱりといったとこだろうか。
「暖かくしていかなきゃ」
急いで準備をして、服を着た。何度も自分の姿を鏡で確認して、用意したメモも何度も見る。
「・・・連絡ないけど、もう来るかな」
15時にまだギリギリにならない時、呟いた言葉に合わせるようにして、家のインターホンが鳴って、僕は体を一瞬緊張させた。
(・・・・こ、こうたくん?だよね)
荷物を持って、最後にもう一度だけ鏡で確認して、家の扉を開けると、最初に入ってきたのはフリーズしそうな冷たい風。
(・・・・うわっ・・・さむ)
「よぉ」
「・・・・・お、おはようございます」
「時間大丈夫だった?っていうか普通に鳴らしたけど問題ない?」
「・・・・・」
(か、・・・・めっちゃかっこいい)
私服姿を初めて見たけど想像の何百倍もかっこいい。
「かずき?」
「あ、はい。全く・・・・問題ないです」
「なら良かった。行こうぜ」
「はい。行きましょう・・・・」
体はガッチガチで、顔の表情筋もガッチガチ。
頭も固くなる前にちゃんと思い出して鍵をかけた。
ついでに言うなら歩いている足元もカチカチで滑りそう。どこに向かうのか分からないけど僕が鍵をかけたのを確認してから、こうたくんが歩き出した方向に僕もついていく。
「やべえな、この雪。一晩で降ったって」
「・・・・そ、そうですね」
「あの廊下の時みたいに滑んなよ。滑ったら絶対痛いぞ、顔面強打したら笑い話にもなんないやつだな」
「・・・うん。頑張る・・・と思う」
「ちゃんと前見て歩けよ」
「う、うん・・・滑ったらごめんなさい」
毎年雪は降るけど引きこもりだから雪道なんてまるで縁がない。だからこんな道なんて慣れていない。確実に意識を足に集中させないと滑って転びそうだ。
「腕、掴む?」
「・・・・え?」
「そのままダイブされても困るし」
「い、いいの?」
「いいよ、かずきが嫌じゃなければ」
ぜんぜん嫌じゃない。むしろ嬉しい。
(・・・し、幸せ)
こうたくんに触れることができるとか、幸せの極み。
それからだんだんと人で溢れかえる場所まで2人で話しながら歩いたけど、雪のせいでペースはかなり遅め。それでもちゃんと予習したようにうまく話を振れたし、普通に受け答えができた。
(この調子なら・・・あれもちゃんと言える)
「かずきのその服って、男物だよな?」
「え?あ、う、うん。そうだけど」
「なんかかずきがそういうの着てるイメージなかったから予想が外れたわ。可愛いな」
「・・・・・」
「ダボダボしてるの。そこまで大きいわけじゃないけど、なんかちっこいから可愛く見える」
「そ、そうですか・・・・こうたくんは・・・凄くかっこいいです」
「そお?」
「普段と変わんないよ」と笑った彼の笑顔に、心がきゅーっと締め付けられて腕を握っていた手に危うく伝染しかけてしまった。
(可愛いとか・・・・きりゅうくんに感謝しないと)
「うわ~やっぱり混んでるな・・・どっか店入る?」
「あ、はい。・・・人が・・・・凄いですね。クリスマスってこんなに人が居るんだ」
「ひっきーだもんな、かずきは。毎年こんなんだよ。こっちおいで」
「う、うん」
(いつまで腕握っといていいんだろう)
僕達は人混みをぬってお店に入った。
店内だからやっぱり暖かい。外の気温を避けるようにして買う気もないのにお店に入ってる人もきっといる。僕は多分そんな典型的な例。
「こうたくん、」
「ん?」
「向かってる場所ってどこなんですか?」
「・・・・」
僕の質問に、顔を向けたこうたくんだったけどすぐに違うものに目を向けた。




