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好きで好きでたまらない  作者: しおやき


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78/90

誕生日おめでとう



 想いが交差せずに終わっても、別にそれが本当の終わりだとは思わない。



 お父さんは泣き腫らして、リビングに戻ったら案の定お母さんはあたふた。僕だけが彼の涙の理由を知っているから、お母さんの様子を見ても笑うことは出来なかった。


「だ、大丈夫?なんか・・・・なんか食べる?」

「・・・ごめんよ。ありがとうね」

「・・・・・」


 急に言ったお父さんのお礼の意味をお母さんは多分ちゃんと汲み取ったと思う。みんなで黙り込んで少しまた泣いた。





 そんな土日が過ぎて、好むも好まないも、クリスマスイブと呼ばれる日はすぐにやってきた。


(・・・・学校は、もう冬休み・・・来週からは年明けまでずっと・・・引きこもり)


 だと、今年も去年と同じように過ごすものだと思っていたけど、今年は一味違う。



「・・・明日はいよいよ・・デ・・・デ」


(だめだ、言わないようにしよう)


 今日は約束していたとおり家族みんなで僕の誕生日祝い。お母さんはきっとケーキをものすごく食べたかっただけだと思う。


 クラッカーもないし、相変わらずプレゼントもないけど、なぜか代わりにホールのケーキが目の前に2つ。1つは自分で選んだものでもう1つは違うもの。



「かずき、本当は明日だけど、まぁあんまり変わらないわよ。誕生日おめでとう!」 


(・・・・・めっちゃ適当)


 お母さんの声が弾んでいる。ケーキのせいかなと思ったけど、酒臭い。どうやら夕方から酒を飲んでいるらしい。

 まじかこの人、と心の中で思って目を瞑ったけど、次に聞こえた声にそっちのほうを向いた。



「はは。たしかにまだ早いけど。かずき、誕生日おめでとう」

「ありがとう、お父さん」

「何よ・・・あんた私にありがとうはないの?」

「ありがとうございます」

「どういたしまして」


 僕も適当に返したのに、なぜか満足そうに返事をするお母さんはニンマリ笑ったあと、明日のことを聞いてきた。



「明日は誰とデートするの?」

「・・・デートじゃないよ。友達」


 酔ってるお母さんをよそにケーキを取り分けてくれてるのはお父さんで、僕に多めに分けてくれている。



「明日は何時に家を出るんだい?」

「友達?嘘でしょ、嘘よ」

「お母さんうるさいよ。明日は・・・・あ~、15時かな」

「待ち合わせ?」



 しまった。これも伝えてなかった。



(どうしよう・・・・こうたくん家にむかえに来てくれるんだった)


「・・・えっとむかえに・・・来てくれる・・から」

「この家に?」

「うん・・・・」

「家に来たら私が出てあげるわよ!」

「やめてよ」


(絶対それ言うと思った)


 どうやら僕のお母さんは酔ってても、酔ってなくても考えてることはあんまり変わらないようだ。


「母さんは、明日買い物に行くんだよね、確か」

「・・・・え?か、買い物?・・・・そ、そうね・・そうだったかしら」


(買い物?・・・・はて・・またケーキ?)



「買い物ってどこに?珍しいね」

「うん。今日はきっとずっと飲んだくれだから、明日は僕が車を走らせるかな。朝はゆっくり起きてお昼すぎに家を出るから、かずきは遊びに行く時ちゃんと鍵をかけて出てね」

「・・・・・」


(やっぱりお父さんって・・・)


「ありがとう。お母さんの監視よろしく頼みます」

「任せて」

「え~、ちょっと!!」


 どうしてもお父さん頼みになる僕は、3人でケーキを囲んで食べながら思った。



(・・・これでバランスが取れてるんだろうな)

 

 きっと誰がかけても、今この景色を見ることは出来なかった。お父さんのことをどういう経緯で救ったのかは分からないけど、お父さんにはお母さんが必要で、僕にはお父さんが必要で、お母さんには・・・。


「お母さん、僕を産んでくれてありがとう」

「・・・・え」

「お父さんのこと助けてくれてありがとう」

「・・・・ちょっ、ちょっと・・・やだ。何よいきなり」


(酔ってるけど、こういうことには照れるんだ・・・)



 身内に慣れない言葉を使うと、恥ずかしくなるのはみんな同じだろうか。こんな日にしか言えないから今までのことも含めてまとめてお礼を言ったけど。



「はぁ・・・・私はね、お父さんとかずきが・・・・幸せでいてくれればそれでいいのよ」

「・・・・・うん」

「みんな幸せだよ」



 ため息をついてケーキを食べながら、生クリームを口の端につけて喋るからあんまり感動はないけど、それでも直接聞けて嬉しい言葉だった。



(・・・・喋る時くらいフォーク置けばいいのに)



「明日、15時?だっけ?寝坊はしないと思うけど、仮眠とかして寝過ごさないようにね」

「うん。大丈夫。ちゃんと準備して、家出る時は鍵閉めるよ」





 その日はそのままお開き。

クリスマスイブだったけど、誕生日のほうが優先されたから、いつもどおりの食事に2つのケーキ。



「・・・明日は」


 いよいよ、僕の誕生日。そして、伝え忘れたことを絶対に言わねばならない日。このミッションは絶対に成功させなければ、僕の心に残ったほんの少しのモヤモヤは取れない。



 僕はこうたくんと軽くメッセージを交換して、24日の夜は早々に眠りについた。







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