レベルゼロだ
(いた・・・・急に黙るのやめて欲しい)
「もう1つだけ教えてやる」
「・・・・え?」
「最初お前がこうたのこと好きって聞いた時、またかよって思ってた。どうせ他の女みたくしつこく付きまとって、アイツのこと困らせるんだろうなって」
「・・・・・」
「でも、こうたの反応見て、そうじゃないんだって思った。今朝も言ったけど、アイツ嫌いなもんにはとことん拒絶反応示すヤツだから嫌がってる時はすぐに分かる」
真面目なトーンで話す恭平先輩を僕はただ黙って聞いていた。
「でも、好きなもんに対する反応は俺は知らん。アイツは人を好きになったことがないからな。中学の時はずっとサッカーだったしな。モテてたけど、それを相当嫌がってた・・・・まぁ、ごちゃごちゃ言ってるけど要するにだな、」
「・・・・」
そして次に何を言われるか見当がつかなくて僕は思わず生唾を飲み込んでしまった。
(・・・・なに言おうとしてるの)
「あいつの恋愛経験値はレベルゼロだ」
(は?)
「だから、まぁ頑張れや。男が男を好いてるのを気持ち悪く思う人も居るだろうけど、そう思わないやつも居るから。でも当の本人は気にしてないし、それは俺もだしな」
「・・・・先輩って・・・ゲイなんですか」
「おう。お前と同じ」
「・・・そ、それはいつから?」
「覚えてない。気付いたら俺が好きなのは男なんだなって」
「・・・・・」
「まぁこの話はまた今度にでもな。こうた戻ってくるし」
「・・・分かりました」
「おう、じゃあな」
「あ、はい」
じゃあなと言われたから僕は普通に電話を切った。
耳から離して通話が終わったあとの真っ暗な画面を見て、あれ?と思う。
「・・・・あ」
(ぁああああー!!!!)
電話をかけてきてくれたのはこうたくんだった。
なのに話していたのはほとんど恭平先輩。
そして「じゃあな」と言われたから電話を切ったのは僕。
「・・・・なん・・・なんで・・・最悪」
自分からかけ直す勇気なんてない。
ぶるぶる震える手で慌ててこうたくんにメッセージを送った。
【すいません。恭平先輩と話してたら間違えて切ってしまいました】
「ぼ・・・僕の馬鹿」
ベッドの枕にポコポコと左の拳を打ち付けて足をバタつかしてもなんの気休めにもならない。
喋りたかったというよりかは、声を聞きたかった。
僕の名前を呼んでくれる声が好きで聞いただけで幸せになるのに。
恭平先輩のせいではないのは分かってる。
(・・・・このままじゃ寝られん)
恋愛経験値がレベルセロとかあんまり信じられないけど、彼の心の中に好きで忘れられない誰かがいないのであれば僕はそれでいい。
握ったままのスマホの画面をメッセージのところまで飛ばして、こうたくんとのやり取りを再度見直した。
(・・・・・ん?・・・返事)
【タイミング悪すぎたな。ごめんよ。話したいことあったけどまた、月曜日に】
「・・・・」
【分かりました。また月曜日に】
読んて返信をしたあとスマホを胸に当て大事に抱えてはまた足をバタバタさせて、大きくため息をついた僕はそのまま部屋の電気を消した。
(寝たら早く月曜日が来る・・・)
そう思って目を閉じて無理矢理夢の中へ。
◇◇◇
土曜日はきりゅうくんへ一部始終を連絡したら、会って話が聞きたいと何故か僕の家に。お父さんもお母さんも会うのが久しぶりでみんなで楽しく話してから僕の部屋で一連の流れを話した。
「いや~・・・とりあえず良かったね。安心した。やっぱりこうたくんは偏見なんか持ってない人だよ」
「・・・はい。そうでした」
「でもさ、その2人組は退学になればいいのにな~」
きりゅうくんが何気なく発した言葉に僕は「それはないと思いますよ」と返事をしたけど、彼は首をかしげる。
「他に被害にあってる生徒もいるんじゃない?だいたい義務教育じゃないんだから、勉強する気がないなら来るなよって感じなんだけど」
「・・・・それは、僕もちょっと思いました」
その後も軽く話をして、「また聞かせて」とにこやかに帰って行ったきりゅうくんは、学校生活が充実しているようで楽しそうだった。
(・・・・いいな。僕も、この先楽しくなればいいけど)
日曜日は、お父さんと車の中で話したことを再考。
当時の件について何かネットに情報はないかと探してみたけどあるわけもなく。
「・・・・気にはなるけど」
ネットサーフィンなんて普段しないから情報量の多さに目と脳みそが疲れて途中で断念。
その日は早々に寝て、待ちに待った月曜日の朝を迎えた。




