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好きで好きでたまらない  作者: しおやき


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72/90

ありがとう



(もう塞ぎ込んでる時期は過ぎたって言ってたけど・・・ほんとに大丈夫なんだろうか。僕が聞いてしまったから)


 帰りの車の中は打って変わって静かだった。僕はピザを持っていたから足が暖かくて暖房も暑いくらい。


「ピザ、余ったら母さんに残しとこうか」

「うん。そうしよう」


 家に着いて、すぐに入るとリビングに直行。

 暖房をつけてピザはテーブルへ。



(お父さんは・・・・)


 ドアに視線を向けるとちょうど入ってくるとこだった。


「僕は着替えてくるけど、かずきはどうする?」

「・・・あ、なら僕も着替えてくる」

「分かった」



 そう言って部屋に戻ってまた寝間着に着替えたけど、寒いから素早くと思って、服を脱ぐとそのはずみでスマホが床に落ちてしまった。


「・・・げっ、やば」


(・・・画面割れてない?)


「・・良かった。っていうかこうたくん返事ないけど寝てるのかな」


 僕もこうたくんからのメッセージにはだいぶ遅れて返信してしまったから、僕と同じで寝てるのかなと思っていた。



「ピザ、ピザ、ピザ~・・・・お腹すいた」



 帰りの車の中で、ピザのいい匂いがして途中お腹がなった。悲しくて泣いたあとでも、感傷に浸ったあとでも、お腹はすいて美味しそうな匂いを嗅ぐと体は反応する。


 着替えたあとにリビングに向かいながら、ブツブツ独り言を言うと余計にお腹がすくような感じだ。


 車の中ではお父さんの過去の話で頭がいっぱいだったけど今はもう夜ご飯のことを考えている。   

 それでも多分、お腹が満たされればまた彼が亡くなった原因を部屋で1人になった時に考えるんだろう。


(・・・お腹空いた)


 頭の中をだんだんとピザが占めていき、ドアを勢いよく開けてリビングに着いたらお父さんがもう先に居た。

 飲み物の準備をしてくれていてリラックスした様子に見える。


「あ、ごめんよ。僕も手伝う」

「着替えた?大丈夫だよ。ピザの蓋開けてくれるかな。お皿は出してあるから」

「うん。分かった」



 2人で準備をして席につくと、僕は見る気もないのにテレビをつけた。音楽番組なら歌がBGMになってくれるから、音量は抑えてテレビのほうに体は向けず。



 ピザは何枚か買って、1枚は僕が食べたい種類にした。


「「いただきます」」


 そう言えばお父さんがピザを食べるとこを僕は初めて見る。食べ始めた彼の姿をチラッと見て、昔から今みたいな性格だったのだろうか、それともあんな事があったからこんな性格になったのだろうかと少し考えた。


(僕がこんな性格だから、元々かな。っていうかうまい・・・・)


「かずき、」

「ん?」

「さっきの車の中で話したことなんだけど」

「・・・・大丈夫だよ。お母さんには言わないから」

「いや、そういうことではなくて」

「・・・うん?」


 食べ始めて少し経ってから会話らしい会話もなく、つけたテレビに助けられてシーンとしたリビングにはならなかった。


 そんな中、突然車の中での話へ戻ったお父さん。


(どうしたんだろう・・・)


 家族以外の人に話すとでも思われているのだろうか。ピザを頬張りながら聞いていたけど、あらたまった格好でお父さんが口を開こうとしていたから、手に持っていたピザをお皿に置いた。



「あの話をして、本当にかずきに言いたかったことっていうのはもっと別にあって」

「・・・・うん」

「なんていうかな、あんまり神妙になりたくはないんだけど、今更感があるね。ごめんよ」

「いいよ。大丈夫」


(元々話振ったの僕だし)


 多分ああいう話の振り方をしなかったら、お父さんはもっとうまく説明してくれていたと思う。僕に合わせて全部答えてくれたからあんな話の流れになったんだろうなって。


「僕が今から言う事は、あんまり深く考えなくてもいいけど、心に留めておいて欲しい。何かあった時に思い出してくれればと思ってる」

「・・・・・うん」


 僕を見つめる眼差しは悲しさがまじっていた。


「外の世界がどれだけ苦しくても、どれだけ辛くても、ちゃんとかずきの味方が居る場所はあるから」

「・・・・うん」

「この家も、そのうちの1つだ」


(・・・・)


「だから迷ってもいいし、時間がかってもいいけど、ちゃんと帰っておいで」

「・・・・・」

「僕と母さんは何があってもかずきの味方だよ。何も心配はいらない」

「・・・・」

「って言うことを言いたかったんだ。回りくどくなったね、ごめんよ」

「・・・大丈夫」



 今日はもうだめだ。


 我慢してもどうせまた泣くと思った僕はお父さんの言葉を聞いて熱くなった目頭はそのまま放置。


「お父さん、」

「ん?」

「ありがとう」

 

 服の袖でこぼれた涙を拭いながらお礼を言う僕に父さんは笑いながら返事をしてくれた。


「どういたしまして」




 今までで一番長かった親子の会話は、一番重たい内容の話だった。


 だけど僕にとっては色々と肩の荷が降りた瞬間だった。




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