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好きで好きでたまらない  作者: しおやき


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昔の話3



「ブレーキ痕もなかったらしいから、その運転手は逮捕されたんだけど、秋斗がわざと車の前に飛び出したっていう線も拭い切れなくてね」

「・・・・」

「目撃者がいたわけじゃない」

「じゃあなんで」



 そう聞いたとき、車が止まりかけて僕は前を向いた。どうやらまた信号に引っかかったようだ。今度は待ち時間が短い。



「・・・・遺書とかではないけど、悩みがあったらしい」

「・・・悩み?」

「僕は気が付けなかった。仲が良かったから警察にも呼ばれて質問されたよ」

「え?・・・質問?なんで?」

「司法解剖の結果で、車にひかれたのとは別に身体に痣があったって。その痣がどれくらいかとか、いつのものなのか詳しくは聞けなかったけど」

「・・・・・え」

「学校で何か悩みとか、いじめとかそういうのを聞いたことはないかって警察の人にね、聴取された」



 止まった車が動き出して、「もうすぐ着くよ」といつもと同じトーンでお父さんに言われたけど僕は平常心なんか保てなかった。



「・・・・本当は何があったの?」

「ん~・・・分からない。親友って言っても四六時中一緒に居たわけじゃない。親と小さな子どもじゃないから、常に行動をともになんて無理があったし。中学3年になってからは僕が部活とかで忙しい時期があって、そこまで頻繁に交流できてなかったからね」


 シートベルトを握ったまま話を聞いていたから、手には汗がにじみ出ている。駐車場に入っていく時に少し車体が揺れて、その振動で少し我に返った。



「僕の発言が淡白に聞こえるかい?」

「・・・・いや、別に」

「他人事のように話してるから、もしかしたらそう思われても仕方がない」


(ほんとにそんな事思ってないんだけど・・・)



 車がお店の近くに止まって、エンジンが切られた。ついでに暖房も切れたから、もうちょっとしたら車の中は寒くなるだろう。



「・・・・」

「知らせを聞いた時、何にも考えられなくてただ呆然としてたらしいよ」

「らしい?」

「うん。息だけしてたのは確かだけど。今生きてるからね」


 お父さんはシートベルトを外してから、ドアに手をかけようとしたけど、両手を組んだ。


「でもそれ以外何してたのか・・・警察の人と話してたこと以外ほとんど覚えてないんだよね」

「そう・・・だったんだ」

「高校に上がってから、環境が変わってその時のこと思い出すことがけっこうあったけど」

「・・・・・」

「どんだけ考えても、悲しさが込み上げるのは当たり前なんだけどさ、ちょっとしてから怒りに変わるんだよ。秋斗は何にも悪くないのにな」


(・・・・・お父さん)



「何にも話してくれなかったから、なんだったんだろうってね・・・・」

「・・・・」

「僕の存在って彼にとってなんだったんだろうって」



 もしかしてとは思うけどそんなのただの推測でしかない。でも、話せない何かがそこにあったのは確かだ。近い人には言えないというか、気付かれたくないというか。


(・・・同じだ)


「まぁ、亡くなってしまったから、もう本人に何があったかなんて聞くことは出来ないけど」

「・・・学校に調査とかは入らなかったの?」

「入ったよ。随分とずさんだったけど」

「・・・何も出てこなかったの?」

「ん〜・・・その当時は裏で色々動いてたから。大人の事情とかかな、いじめがあったとしても、多分握り潰されたんじゃないかな」


 ずさんなのはきっと今もあんまり変わらない。


(子どものことなのになんで大人が・・・)


「幼馴染だったから、親友たと思ってたから、何かあったら話してくれると思ってたし、相談してくれると思ってた」

「・・・・・」

「まぁ・・・・でも、その思い込みがそもそもだめだったね」

「・・・・父さんの・・・せいじゃないよ」


 力なく言った言葉にお父さんは組んでいた腕をほどいた。



「ごめんね、こういうことを言いたくてかずきにこの話をしたわけじゃないんだ。泣かせるつもりはなかった。ごめんよ」

「・・・・いや・・・だいじょうぶ」



 僕はいつの間にか泣いていたらしい。涙を拭くのも忘れて、思い出していたのはこうたくんが言ってくれた言葉だった。


 (・・・・・)



「ピザどうする?かずきは車の中で待っとく?」

「いや一緒に行くよ。ごめん、フード被っとく・・・から顔は見られないと思う」

「なんか怪しい人みたいだな」 

「・・・・じゃあ止めとく。普通にこのまま行くよ。オーダー一緒にしたい」

「そっか。分かった。じゃあ行こうか」

「うん」



 車の外に出て、足早に店内に入った。

外は寒すぎて涙に濡れた目元が異常に冷たく感じてしまったけど、店内に入るとフードを被ってる人も何人か居たから、僕はそれに乗っかるようにフードを被った。


(外寒いから被ってるのかな・・・これなら大丈夫そう)



 オーダーを終えて、商品を受け取った僕達はまた車に戻った。帰りは行きと違ってピザが冷めないように最短で。



「まだ12月じゃない・・・・って言ってももうすぐ12月になるけど、この寒さだと雪降るかもね」

「・・・そうだね」



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