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好きで好きでたまらない  作者: しおやき


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ごめん



 チャイムが鳴って、恭平先輩と遅刻ぎみの生徒が廊下を走って行く様子を見ながら、さっき絡んできたあの人達はいったいどうしたんだろうと思った。



「なぁ、かずきの父さんと母さんって今家にいる?」

「・・・・・え」

「今の時間。共働き?だっけ?」

「・・・・・う、うん。もう誰も家には・・・いないです」

「そっか」


(ほ、ほんとに家に来るのかな・・・仕事に出掛けてるからいないはずだけど)


 このままの流れだと家に来ることは確定だ。こうたくんが突然笑って『冗談だよ~』と言ってくれればいいけど全くそんな雰囲気はない。


(トゲ無くなった・・・・?)


 そして言葉にピリピリした感覚は無くなったけど、いつ元に戻るか分からない雰囲気がある。



「邪魔はいなくなったから・・・」

「えっ」

「行くか、かずきの家に」

「・・・・・ほ、ほんとに?」

「うん。ほんとに」

「で、でも・・・・あ、こうたくんっ」 

「お前の家は前に行ったからな。道案内されなくても分かるわ」

「・・・・」

「もうちょっとだけ我慢して」


(我慢って何が・・・)


「・・・こ、こうたくん」

「大丈夫だよ、そんなに長居するわけじゃない」

「・・・・・」

「ちょっと話したい事がある。それだけだから」


(えっ・・・・)


 そう言って僕の頭をぐしゃぐしゃしたこうたくんは「行くぞ」と言って止めていた足を動かし始めた。


「あ、まっ」

「転けんなよ」

「は、はい」


 カバンを背負い直して慌てて走ってこうたくんの隣に並んだけど、校門のとこに先生が居たらどうするのだろう。


(この時間帯に登校したことないからわかんないし、ましてやこの時間帯に家に引き返したことないから校門付近どうなってるのか謎なんだけど、こうたくんはそこら辺気にしてないのかな・・・)



 朝学校に来て、たいして時間がまだ経ってないけどまた靴を履き替えた。マフラーも首に巻いて少し口元を覆うように手で引き伸ばして顔から冷たい風が服の中に入り込んでこないようにする。



「かずき、校門のとこに多分岸田先生が居るから、俺が話すわ。多分、という確実になんか言われるし」

「・・・・え、き、岸田先生ですか」

「うん。ギリギリで登校してる生徒とか、そもそも遅刻前提で来るやつも中には居るから、そいつ等のケツ叩いてんだよ、毎朝毎朝」

「・・・・・そ、そうなんですね」


(ケツ叩くって物理的に叩いてるわけじゃないよね?)



 学校から外への境界線が近づいて、校門のとこまで来るとこうたくんの言ったとおり岸田先生がいた。大きな声で生徒を早く教室に行くように促す先生はまるで部活の試合中のようだ。


「・・・・凄い声」


 ボソッと言った声は口がマフラーに覆われているからこうたくんには聞こえていない。



「おい、お前らなんで逆走してるんだ?」

「・・・・・」


 普通に隠れることもせず先生の前を堂々と歩いて学校の外に出ようとしてるから案の定当たり前に呼び止められた。


(・・・・ですよね)


「おはようございます、先生。ちょっとかずきが体調悪くて、その付き添いで家にこれから送るとこです」

「・・・・・」


(ええ?)


「あ、そうなのか?大丈夫か?」

「今はちょっとまだ。あと、俺も親から連絡あって緊急で戻るように言われてるのでかずき送ったら今日はそのまま家に帰ります」

「本当か?それならお前ら、俺が送ってやろうか?」

「いや、そこら辺は大丈夫です。早く行かなきゃいけないんで失礼します」

「お、おう・・・分かった。橋本は?ご両親に連絡は?」

「あぁ~、そこも大丈夫。俺からするので」

「分かった。とりあえず一応担任には言っとくぞ。あと、夕方に家に電話かけるようにするから。念のため」

「あ~、はい。分かりました」


(・・・・僕・・・一言も喋ってないけど・・・大丈夫かな)


 僕にふられた話も全部こうたくんがかわりに応えてくれた。僕は誤魔化しが下手くそだからありがたかったけど、それにしても体調不良を理由に持ってくるとは思わなかった。


(あながち・・・間違いではないけど)


 『体』というより『心』のほうが落ちている。



 結局先生にはお辞儀だけしてこうたくんと一緒に外に出た僕は、後ろじゃなくてちゃんと彼の隣を歩いてる。


(・・・・家に来たことあるって言っても、けっこう前だよね)


 こうたくんが家に来てくれた時のことをはるか昔のように感じるのは多分あの時とは寒さが違うから。


(・・・・こうたくん何も喋らない。僕がなんか話したほうが良いのかな。家の場所覚えてるんだろうか。それともまだやっぱりなんか怒って・・・)



 もうすぐ12月になって、もうすぐ冬と呼べるような季節になって、そしてもうすぐ僕の誕生日が来る。



 結局家につくまでこうたくんは一言も話さず、そして僕に家までの道のりを聞くこともなかった。





 ◇◇◇




「かずき」

「ご、ごめん、ちょっと・・・・手がうまく動かなくて」

「・・・・・」


 寒さで震えているのか、緊張して震えてるのか分からない。家に着いて鍵を中々うまく差し込めない僕は何回かチャレンジしてようやく差し込めた鍵にホットしてドアノブに手をかけた。



「ごめん」

「・・・・え?」

「お前が風邪引いたら俺のせいだな。とりあえず時間かけずに話すから、玄関でいいよ。部屋にまで上がらないから」





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