静かな朝に、掻き乱された時間2
「・・・・・かずきくん」
「笑わないでください。結構恥ずかしいんです・・・こんな事言うの」
僕は膝に顔をうずめて先輩によく聞こえないようにした。こうたくんが聞いてたら頭が爆発しそうだ。
「それは・・・その、」
(こんなことで恥ずかしがって、僕本当に好きって言えるのかな)
「・・・・なんですか」
「俺も・・・恥ずかしくなる・・そんなこと言われたら」
「・・・は?」
「いや、・・・あれ?・・・こうたじゃないの?」
「え?」
何やらブツブツ言い始めた先輩は自分の片手を口元に持っていき僕を見つめきてきた。
「か、かずきくんってもしかして俺のこと好」
「違いますよ」
なんとなくこうなるんじゃないかと心の底でひっそり思ってたけど、案の定そうなった。
「だよねー」
「だから・・・からかわないでって言ったじゃないですか・・・もういいですよ!」
「うわぁ、怒った!ごめん、ごめんって」
そのまま床に仰向けになりそうな勢いでケラケラと楽しそうに笑っている恭平先輩は、まるで反省してない。
「もう・・・話したくないです」
「ごめん、拗ねるなって。可愛いなお前」
「・・・・・」
僕はこうたくんみたいに先輩に対して無視を決め込もうとして視線を外した。そういえばこうたくんには空気だと思ってくれればいいと言われた気がする。
(話すんじゃなかった)
「あ~・・・」
少し笑っておさまったのだろうか、ため息のような身体に残った笑い声なのかよくわからない声を出して、彼は静かになった。
「・・・・・・」
(本当に嫌、っていうかこうたくんまだかな・・・)
かなり早く来たから本来の待ち合わせの時間になるには多分もう少しかかる。僕は今何時か確かめたくてスマホを取り出そうとした。
「こうただろ」
「・・・・」
「2人っきりになりたかったっていうの」
「・・・・・え、」
「分かってるよ、んなこと。お前さ、もしかして学校で告ろうと思ってる?」
「・・・・・な、なにを」
「やめといたほうがいいよ」
急にいつものおちゃらけた雰囲気が無くなって声色が一気にトーンダウンした先輩の顔は真剣だった。
「・・・な、なんですか、それ」
「別の場所で伝えたほうがいい。ほら、休みの日とか、なんか口実作って2人ででかけたりすればいいじゃん。その時に言えよ」
「・・・・・」
「学校ではやめとけ」
「・・・・な、なんでそんなこと」
「お前、あいつらに狙われてるの分かってるだろ」
(あいつらって・・・・)
恭平先輩が言っているのはあの2人組のこと。僕たちが教室で出くわして、こうたくんとは正面玄関のとこで言い争いになりそうだった人達だ。
「・・・・別に・・・そんなことは」
「またあいつらになんか言われたいの?」
「・・・・・それは」
「なに?」
「それは・・・そもそも恭平先輩のせいじゃないですか」
「何が?」
「先輩が・・・・先輩が教室に入ってきたから・・・なんであの時入ってきたんですか」
「・・・・・」
「それに、あんなこと・・・あんな変なこと先輩が彼等に言わなきゃ良かったんです。変に言い返さなかったら、僕だって男の人が好きだなんて思われてなかったですよ!」
僕は原因を作った張本人から忠告を受けたことにイライラしてしまい思わず本音をぶつけた。
分かってる。
あの人達からいつも会うたびに言われる言葉も、向けられる視線も。
全部分かってる。
「・・・俺があんなことしなくたって、お前狙われてたよ」
「・・・・・」
「あぁいう奴らって、おもちゃになりそうな奴がいないかいつも嗅ぎ回ってる。かずきくんは、わりと狙われやすい部類に入るから。それに、こうたをいつも目で追っかけてるだろ?俺でも分かるけど、いつも視線で好きって言ってるの凄い伝わるんだわ」
「・・・・え」
「お前気付いてなかった?まぁ自分がどう見えてるかなんて、言われないと分かんないわな」
「・・・それって」
「こうたは・・・・それをどう思ってるのか俺は知らない。聞いたことないし」
世話焼きというのだろうか、お節介にも程があるとは思ったけど、真面目な顔で言うもんだからこちらもどんな反応すればいいのか分からなくなってきた。
「・・・な、なんで恭平先輩にそんなことまで言われなきゃいけないんですか」
「決まってんだろ」
「・・・・」
「俺みたいになってほしくないからだよ」
(は?)
「なんですか、それ」
「そのまんまの意味。だから、学校で言うのはやめろ、どっか休みの日とかに外でデートして、そん時に言え」
「・・・・・・」
「な?分かった?」
「・・・・嫌です」
「おい」
(休みの日にデートに誘うのなんて無理・・・だから会うのに理由が必要ない学校で言おうと思ってるのに)




