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好きで好きでたまらない  作者: しおやき


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お母さんの図太さ



 ある程度一緒に過ごせば慣れていくはずなんだけど、それは僕にとってはあんまり好ましくないことのほうが多かった。


 先輩が僕の家と同じ方向だということにまずはびっくりして、毎朝家に迎えに来ると言われないかヒヤヒヤして落ち着かないし、学校であの2人組と出くわした時は毎回舌打ちをされてすれ違いざまに「キモっ」と言われるようになった。

 


(わざと僕だけに聞こえるように・・・)


 僕は背が低いけど、向こうも背が高くないから彼等にとってはちょうどいいのかもしれない。顔をよく見たことはなかったけど、たまに恭平先輩がすれ違う時に凄い溜息をつく時があるから多分彼らで間違いない。



 (それに・・・、)


 こうたくんは相変わらず朝に玄関のとこで待ってくれてはいるけど、なぜか恭平先輩も一緒にいる。



 「校門から場所移動しただけじゃん・・・家に迎えに来るとか言われてないからそこはまだいいけど・・心配とか、あの2人組絡みだよね・・半分原因なのは恭平先輩な気がするけど」




 家と学校の往復で、特に真新しいことを起こすことができない毎日。

 こうたくんに言いたいことや、こうしようと決めた段取りを書き留めたメモ用紙の量が日々増えていく。



 恭平先輩はいまだにずっと喋ってるし、でもけいた君とは仲良くなったかもしれないと勝手に思い込んだところで僕の目的は達成できていない。



「あぁ~・・・・」

「あんたどんな声出してんのよ、幸せが逃げていくわよ」


 何度目かのだらしない声を出して、お風呂から上がったあとソファで飲み物を飲みながら、つまらなさそうなテレビを見ては楽しく笑い声を上げているお母さんを横目で見ていた金曜日の夜、ふとあの時のことがよみがえった。



(・・・・あの時・・僕よく学校に行ったな・・・まぁこうたくんときりゅうくんのおかげだけど)


 今はみんなで一緒に居るからか、先輩がうるさいからなのか、学校にいる間は精神的にまいることはなくなった。



「え~なにこの人、絶対やめたほうがいいって~・・・あぁ、もう、なんであんな男選ぶのよ。ほんと見る目ないわね、どんくさい女」

「・・・・・」



 ただやっぱり家で一人でいる時はそうではない。脳が勝手に思い返す時はあるし、今でも顔を覆いたくなることがある。



(・・・ご飯食べた後にポテトチップスとか太るだろ)


 こうたくんや恭平先輩みたいに言い返せれば良いんだけど、生憎今僕に必要なのは、こうたくんに『初めて会った時からずっと好きでした』と伝える勇気のほうだ。



「かずきは?あんたが女だったらどの男の人が一番いいと思う?」

「・・・・はぁ~」


(何が面白いんだろ・・・)


 お菓子をボリボリ食べながら恋愛番組の男女の駆け引きに画面をとおしてギャーギャー言う彼女は今までどんな男の人を好きになったのだろう。



「はぁ~って何よ。っていうかあんた前のブラウニーどうだったの?あげたの?何かその後進展とかあった?」

「・・・・」


 (なんで質問に答えてないのに、次から次に話題変えるんだろ・・・)



「何よ、言いたいことがあるなら言いなさいよ」

「・・・進展は特にない」

「え~なによそれ。もっと攻めなさいよ」

「・・・でも美味しかったとは言われた・・から大成功だと思う」


(・・・攻めるとか・・・できることならしてみたいけど、普通に無理)


「え、それで終わり?」

「ん~・・・・」


(これ以上話したくない)


「お母さんってさ、告白とかされたことある?」

「ほんと奥手ね、誰に似たのかしら。告白?なんでよ。んなもん言わなくたってわかるでしょ」


(でしょうね)


 攻撃型の母親は多分男の人からけむたがられるタイプだ。


「・・・したことは?」

「あるわよ」

「・・・・どんなふうに告白したの?」

「んなの覚えてないわよ。昔の話だし」

「・・・そ、そうなんだ」

「まぁ~一人除いて全部振られたけどね」


(でしょうね)


「・・・・え、一人除いてって、一人成功したの?」

「そうよ、あんたのお父さん」

「・・・あ~」


 お父さんが言ってたのはなんとなく本当なのかなと思ったけど、同じ高校とかだったのだろうか。いまいち繋がりが見えない。


「え・・・・同級生だったの?」

「まぁ、そうだけど、学校は違うわよ」

「・・・へえ~」


(初耳・・・同級生?)


「どうやって知り合ったの?」

「内緒よ」

「・・・え」

「そんなことはいいから、あんた好きなら好きってとっとと言いなさいよ」

「・・・・」


(出た・・・・お節介で無神経。僕だってできることならそうしたいよ・・・)


 今の煮えきらない現状にどうすればいいか悩んでいる僕はお母さんに言われて顔をムスッとさせてしまった。

 別に彼女の言葉にイライラしたわけじゃない。ただ自分の勇気と勢いのなさに、流れ去っていく時間がプラスされてじわじわと感じる焦りが顔に反映されてしまっていただけだ。



「・・・どんな顔してんのよあんた」

「どんなんでもいいだろ別に・・・」

「あ~はいはい。ほんとに誰に似たんだか」

「・・・・・」


(お父さんだよ・・・性格は)


「ねえ・・・」

「なに」


 もう見ないのかテレビのリモコンを僕のほうに寄せたお母さんはソファから立ち上がり少しあくびをしながら伸びをした。


「好きな相手がいるんなら伝えられる時に伝えときなさいよ」

「・・・・・」

「いつ居なくなるか分かんないんだから」

「は?・・・・なにそれ」 

「あんたは臆病だからこれくらい言わないとしゃきっとしないでしょ。変なとこが父さんに似てるのよ」

「・・・・・」

「寝るんならテレビ消しといて」

「・・・・え、あ」


 捨て台詞のように僕に言い放ってリビングから出ていった彼女のその言葉は僕の思考を停止させるにはじゅうぶんで、お母さんが何を言ったのかもう一度頭の中で復唱するのに時間がかかってしまった。


「・・・・なんだあれ、どういう意味」



 僕自身は別にテレビに用はないから渡されたリモコンでそのままテレビを消す。


(部屋に行こうかな・・・そろそろ来る頃かも)


 お母さんが行ってしまって、僕も部屋に戻ろうと立ち上がったちょうどその時、机に置いていたスマホが鳴ってその振動で少し横に移動したのを見て「あっ」と声を出した。



(こうたくんだ・・・)



 なかなか2人っきりになれなくて、もしかしてわざと2人になるのを彼が避けているのかと思ったけど、違うと思いたい。


 4人で行動するようになったかわりに、なぜかこうたくんからは金曜日の夜と月曜日の朝、毎回同じ時間にメッセージが届くようになった。 



【もう寝た?】


「・・・・来た」



【まだです。ベッドで本を読んでから寝ようと思います。こうたくんはもう寝ますか?】


(部屋に行こう)


 こうたくんからのメッセージを読むと顔がニヤける。

 嬉しくて嬉しくて仕方がない。


ブブーっ



【まだ。だけどちょっとウトウトしてる。寝落ちしちゃうかも】


【大丈夫ですよ、部活もお疲れ様です。あと今日授業の課題集め手伝ってくれてありがとうございました。また何かお礼させてください】



 このまま好きって言えたら良いけど、言うんならやっぱりちゃんと直接言いたい。



「・・・・・付き合ってる人達ってこんなメッセージのやり取りも当たり前なのかな」


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