気が休まらない日々に、過ぎていく時間
『心配だって言ってた、お前のこと』
朝にこうたくんから言われた一言が、妙に心に引っかかって、お昼まで頭をかしげていた僕はどうしても納得がいかなかった。
「いや、だからさ~、」
(絶対・・・)
「今年のクリスマスはホワイトクリスマスだよな、雪が降って~・・・イルミネーションとかめっちゃ綺麗そう。そう言えば、昨日さテレビ見ながら勉強してたんだけど、ぜんぜん進まなくって、今朝1限始まるギリギリで隣のヤツに答え写させてもらったわ」
(絶対に・・・)
「俺昨日帰る時女子高生のお姉さんにナンパされたと思ったんだけど、よくよく見たらセーラー服着たおじさんだったんだよね。足めっちゃ綺麗でさ、徐々に上向いたら顔が正四角形だった。いや~びっくりしたわ」
「・・・・僕のこと心配してるとか嘘でしょ」
(・・・この人ずーっと喋ってるんだけど、頭の中どうなってるの)
お昼になってまた僕達のところに来た恭平先輩は、これでもかと言うくらい喋り倒している。いまだに性格が掴めない先輩に開いた口が塞がらないのは僕だけで、こうたくんはもちろんけいた君も全く気にしてない様子だ。
「ん、かずきくんなんか言った?」
「・・・え、いや・・・なんでもないです」
(聞こえないように言ったんだけど・・)
「ふっ・・・・」
「え、なになに、なんでこうた笑ってんの。もしかしてセーラー服のおじさん見たことあんの?」
「いや、ないよ」
ご飯を食べながら少し肩を震わせているこうたくんは、バカにしたような笑い方をしている。
「あ~、お弁当美味しい、母さんが夜なべして作ってくれたんだ~」
「お前が見たのって地球外生物だろ」
「え・・・・え?!こうたからそんな突っ込み入るとか初めてなんだけど!」
「顔が正四角形とかどういうこと」
喋りながらちゃんと食べれてることに感心もしたけどやっぱりうるさい。そう思っていると隣からけいた君が僕にだけ聞こえる声のボリュームで囁いてきた。
「すごいよな、ずっと口動かしてんの。なんか前にばあちゃんに会いに老人ホームに行った時みたいな感じだわ。あそこ一人部屋だから、普段話す人いないんだよね。俺等が居るとずーっと部屋出るまで1人で喋ってる」
「・・・・」
「まじで止まんないもん」
「・・・・そ、そうなんですか」
「うん。しかも、おんなじことばっか言ってるしな。相槌も打つ暇なく次の話題」
「・・・・へ、へ~」
「とりあえず喋りたくてたまんないんだろうな」
(・・・・友達いないのかな)
僕も人のことは言えないけど、別に喋らなくてもぜんぜん大丈夫だ。逆に苦手だからずっと黙ってても平気なんだけど。
「かずき、」
「あ、は、はいっ」
「今日は部活ちょっと早く行かないといけないから、けいたと一緒に下に降りて」
「・・・・・え、」
「え~俺も一緒に行く。かずきくんの教室まで迎えにくればいい?」
「・・1人で大丈夫だよ・・・そんな気を使わなくても」
「いや、だめ」
「橋本くん、遠慮しないで。先輩は間に合わなかったら先に帰ろう」
「え、それどういう意味?」
「ホームルーム終わって先輩がまだ来てなかったら先に帰るって意味っす」
「それ絶対間に合わないやつじゃん」
(・・・なんで、こんな集団生活みたいなことになってるんだろ)
他の3人の会話を聞きながら不思議なことを考えていた。今まで1人で行動していたから複数人でというのが僕にとってはまずあり得ないことだった。
(なんかトイレ行くときも一緒だったけど、恭平先輩が付いて回る間ずっとこんな感じなのかな・・・)
僕は少し心の中で苦い顔をした。
もしこのままクリスマスまでこんな状態であれば、こうたくんと2人っきりになる瞬間が永遠に訪れない。
(っていうか先輩ってお昼のときだけじゃなかったっけ)
結局帰る時もけいたくんと、走って追いかけてきた先輩と途中まで一緒に下校。
そんな集団で行動する日々が少し過ぎて、僕の計画はいまだに、ただ考えるということから先に進んでなくて、気が付けばあっという間に11月に入ってしまっていた。
「・・・・これは本当にヤバい」




