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好きで好きでたまらない  作者: しおやき


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54/90

木曜日




「そっか・・・そういう連中が居なければもっとゆっくり時間かけていけたのにね。なんか、ほんとムカつくね」

「・・・・そう・・ですね」


 でも、こんなことがなければ多分こうたくんと2人っきりで朝に教室まで一緒に歩けなかった。


(それに・・・)


「まぁ、こんな事なければ多分好きって伝えることもしないでしょうから・・・」


 なるべくポジティブに、ポジティブに考えたい。

 あのカフェで話した時とは180度変わってしまった考えに浮き沈みが激しいからおかしくなったと思われそうだけど、今更もう原状回復なんて無理に等しい。



 差し伸べてくれる手を僕はちゃんと握り返して、正直に伝えたい。


 (今日学校行かなかったら多分ずっと行けなかっただろうな・・・)


 自分が思うより結構大丈夫だったりするのか。大袈裟に捉え過ぎてるのかもしれないけど最悪のことを考えるのは悪いことではないと思う。



「かずきくん・・・それは」

「分かってます・・言いたいことは」

「・・・ほんと?」

「僕ちょっと変になってるって思ってますよね」



 人に恋して好きが溢れて、その人の隣で歩くと胸がきゅうってなるなんて。

 こんな気持ち知らなかった。


「いや、ぜんぜん違くて」

「え、」

「・・・ごめんね、凄いかっこいいなと思った・・・だけです・・ごめんなさい、なんか不謹慎かも・・気にしないで」

「・・・・・」


 きりゅうくんの言葉に一瞬言葉が詰まって、少し可笑しくて笑ってしまった。



「えっ・・・」

「あ~いや、ごめん・・・よく見るアニメのキャラも似たようなこと言ってたから、僕の推しではないんだけど・・・なんかその子のことも好きになりそう」

「・・・なんですかそれ」



 結局きりゅうくんとは今直接会って話はできないから、メッセージと電話のやり取りで相談することにした。




 ◇◇◇




 次の朝をむかえて、あらためて自分の気持ちと誰かに突かれたら簡単に崩れ落ちそうなゆるゆるの覚悟を再確認。


 周りにバレないように、でも正直に伝えられるように段取りを考える。



(何から始めたらいいか分からない・・・からそれを考えるのが最初のミッション)



「おし・・・」



 伝えるならなるべく早いほうがいい。




 前向きに、前向きに。

せめてこうたくんの前だけでは。



「さむっ」


 開けた家の玄関の先は、少し冷たい向かい風が吹いてきておでこを冷やす。



「恭平先輩・・・・今日もお弁当かな」


 

 意外だった。彼が持って来ていたお弁当は、見た目も美味しそうで僕のお母さんが作るそれよりも豪華。



「え、もしかして自分で作ってるとかないよね・・・」



 一人なのを良いことにブツブツ呟きながら学校へ向かった。流石に今朝は校門のとこには誰もいない。


(良かった・・・先輩は居なかったけどこうたくんも・・・いないよね)



 今日は1人で階段を上り教室に着いた。


「・・・・・」


(・・・ん?)



 教室内が少し騒がしい。嫌な予感がしてガラス窓から覗いた時、タイミングが最悪なことに中にいる人と目が合ってしまった。



 (やばっ)



「あ~!!かずきくん!!」

「・・・・」


(な、なんで居るの)



 校門に居なかったから良かったと思って気を抜いていた。

 しゃがみこんで戸惑う頭を落ち着かせようとしたけどそんな暇はなくてガラっと勢いよく戸が開く音が頭上から聞こえてしまった。



「何隠れてんの?」

「・・・・・え、いや」

「かずき、おはよ、とりあえず中入れ」

「え・・・お、おはよう・・ございます」


(こうたくん・・・・もいた)


 

 違う学年の関係ないクラスに朝っぱらから1人で騒いでるのかと思ったけど、そうではなくて実はこうたくんと一緒に居たらしい。

 疑問しか浮かばないけど、ドアのとこまで来てくれたこうたくんに一緒にくっついてきた恭平先輩と、言われたとおりに中へ入って席に着いた。


(・・・・ど、どういう事?)



「いや~、寒いよね~、明日も寒いかな、11月とかすぐじゃん、そしたらもう12月じゃん。寒くなるいっぽうじゃん!」


(・・・こ、この人何言ってるの)



 あんまり触れないほうがいいと思ってカバンの中から机に入れるものを取り出して忙しいフリをしているけど、このあとはどうすればいいのだろう。


 こうたくんを見るとスマホに目を落としていて、恭平先輩には全くの無反応を決め込んでいる。



「かずきくんはクリスマスの予定とかあるの?こうたは何も教えてくれないんだけど」

「へ?」

「クリスマス」



 ニィーと笑うその顔はなんだかわざとらしさが見え隠れして、反応に困った僕はこうたくんの方を見た。だけどいまだにスマホをいじってる彼に僕の視線は届かない。



「えっ・・・と」と濁すように何か言えないか考えていると突然バイブ音が鳴る。



 ブブっー


(えっ)



「かずきくんは家族で過ごすの?」

「恭平、もう大丈夫だから戻っていいよ」

「え、そう?まだかずきくんからの返事聞いてないんだけど」


 鳴ったスマホの画面を見るとこうたくんの名前。


「・・・・」


 僕のかわりに相手をしてくれているこうたくんの声を聞きながらメッセージをタップした。



【クリスマスは秘密な。恭平に言うともれなくついてきそうだから。あとさ、チョコレートのケーキめっちゃ美味かった。遅くなったけど、ありがとうな】


(・・・・・)



「いいよ、朝はもう大丈夫。あいつらこの早い時間帯はまだ学校に来てないから」

「ほんと?おけー、じゃあまた昼に」

「うん。またな」

「・・・・・・」


(・・・行ってしまった)


「こ、こうたくん」

「ごめん、恭平また校門のとこに居たから、回収しといた」


(か、回収?)


「・・・・なんでまた」


 先輩がドアの窓から手を振ってる様子を何もせずにただ見つめているこうたくんは少しため息をつきながらスマホを机に置いた。


「心配だって言ってた、お前のこと」

「・・・・・」




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