告白のタイミングは2
「・・・・・」
(ヤバいっ・・・)
またスマホを下に落としそうになって慌ててぎゅっと握った。
連絡先を交換してから距離が近くなった気はしたけど、会話の頻度が上がったからだろうかこうたくんは普通に中々言えないことをサラッと言ってくる。
(メッセージも会話にカウントしていいんだよね?)
「・・・・っ」
生唾を飲み込み、震えそうになりながら書いた文書を読み返しておかしなところがないか確認した。
隣りにいるのにこういう時は距離感を感じる。
というか自分で距離感を作ってるだけだけど。
(みんな告白する時ってどうしてるんだろ・・・)
目が泳いで動揺するなか、送信ボタンをえいやっとタップしてスマホをすぐに机の中に投げ入れた。
【実はその人達のことも含めて話したい事があります。でも自分の中でうまく咀嚼できてないのでもう少しだけ待ってもらえませんか】
後で見てくれますようにと、今見ないでくださいと願って黒板に目をやった僕はこうたくんの行動が視界のすみに入って来るのを防ぐため、黒板の右の方ばかり向いていた。
(いつ言おう・・・っていうかなんて言えばいいんだろ)
恭平先輩のことはもう仕方ない。
少なくとも何も話さない僕にも原因があることはこうたくんのメッセージで読み取れた。
ちゃんと整理して、2人だけの時に言えるようにしないといけない。
(・・・誕生日・・の約束の前じゃないと、だめだよね。2ヶ月近くも待ってもらうとか)
ノートを広げて書いているのは黒板の字と、あとは誕生日までの日数と話すこと。
(もし話したら・・・多分約束は無くなる。でも話さないと騙してるみたいでこうたくんに失礼だ)
授業が終わってスマホを見るとこうたくんからの返事はなし。中を見ると既読もついてないから少しほっとした。
まだ読んでないということだ。
次の授業の準備をしていると、こうたくんがスマホの画面に目を落としているのが見えてしまった僕は内心ドキドキ。
次の授業が始まるまでの短い休憩時間は何も言葉を交わさなかった。
そのかわりに交わしたのはメッセージ。
机から取り出してポケットに入れていたスマホは案の定ブブっーと震えて僕の太ももに振動を伝える。
【分かった】
メッセージの画面に表示されたその文字を見て少し落ち着いた僕は、そこでスマホの画面を暗くした。
◇◇◇
「かずき、下まで一緒に行こう」
「・・・あ、はい」
授業が終わって、帰る準備をしているとこうたくんが荷物を背負いながら当たり前のように言ってきた。
「けいた、先行くわ」
「ん?お~!また明日~」
「明日~」
僕はけいた君にお辞儀だけしてこうたくんと教室を出た。腹からあんな声出せないし、遠くにいる人に向かって大きな声を出したことがないから僕はお辞儀だけ。
そのお返しに手を振ってくれたけいた君は、僕のことをどう思ってるんだろうか。
(・・・・また人にどう思われてるか考えてる)
こうたくんの友達だから、悪い人ではないと感じてはいるけど裏で何を考えてるかなんて誰にも分からない。向こうは気にしてないのに、こっちは無駄な予防線を自分の中に張って立入禁止エリアに入ってきたらきっと全力で拒絶するんだろう。
つまるところ、自分から歩み寄ろうとしてる人か、自分が好きになった相手だけは、一定のラインを踏み込んできても嫌な気分にならない。
そしてそういう人達に限ってそのラインを超えてこないから余計に安心する。
(今だと、こうたくんときりゅうくんと、それからお父さん。・・・お母さんは・・・嫌だ。無神経なとこはなんか恭平先輩に似てる・・・かな。あの2人はストレス溜まる)
自分勝手なのはどっちだ。
「・・・・あの、」
「ん?」
「恭平先輩のことはすいませんでした、なんか変な態度取ってしまって・・・ぼ、僕はお昼ご飯こうたくんと一緒に食べられるなら・・それだけで嬉しいです」
「・・・・」
また廊下で言ってしまった。この前みたいに人が聞いてるかもしれないのに。でももうこれからはこんな言葉を選ばざるをえない。
「そっか」
「・・・・は、はい」
「じゃあ同じだな」
にやりと笑って普通に受け入れてくれたこうたくんは、僕が『好きです』と、こうたくんに対して恋愛感情があることを伝えるとどんな表情をするのだろう。
「・・・お、同じです・・・ね」
(・・・あれ?・・でも告白する時って、いつから好きだったとかも言わなきゃいけないのかな?・・・え、じゃあ初めて会った時のことも言ったほうがいい?)
「かずき、」
「は、はい」
「着いたぞ、靴履き替えて帰れよ」
「・・・・あ、はいっ・・・大丈夫です」
いつの間にか正面玄関まで来ていたらしい、転ばなくて良かった。
「気を付けて帰れよ」
「あ、ありがとう。こうたくんも部活頑張って」
「お~、じゃあな」
「・・・うん」




